都市部でも顕在化する「買物難民・買物弱者」 | 『売れプロ!』ブログ -「売れる」「稼げる」中小企業診断士に-

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売れプロ10期生の岡本です。今回は、近年、都市部でも顕在化している「買物難民・買物弱者」についてお話したいと思います。

 

「買物難民・買物弱者」とは、「交通や流通機能の弱体化で食料品や日用品を買えない人々」をいい、農林水産省の研究所である農林水産政策研究所の「食料品アクセス困難人口の推計値」によれば、自宅から店舗まで500m以上離れていて、自動車を利用できない65歳以上の高齢者(アクセス困難人口)は、2015年時点で全国約825万人いるということです。実に、高齢者の4人に1人が日々の買い物に苦労していることになります。2005年の約678万人と比較すると、10年間で21.6%増となっており、現在は、この数はもっと増加していると考えられます。

 

「買物難民・買物弱者」というと、これまで、農村や山間部といった過疎地域や人口5万人未満の小都市の問題と考えられてきましたが、最近では、人口5万人以上の中都市、政令指定都市及び東京23区といった大都市圏にも広がっていることが、昨年3月に農林水産省が公表した「食料品アクセス問題に関する全国市町村アンケート調査結果」で分かります。

 

中都市・大都市で買物難民が増加している理由としては、①高齢者の単身世帯の増加、②地元小売業の廃業、③中心市街地、既存商店街の衰退があります。また、小都市部においては、バス等の公共交通機関の廃止等のアクセス条件の低下、大都市部においては、助け合い等の地域の支援機能の低下があります。単身高齢者は買物を依頼できる人がいない等の理由により、買物難民・買物弱者になる可能性が高いと言われています。

 

こうした事態に対して、73.2%の市町村が何らかの対策を実施していると回答しています。対策の内容は、中都市・小都市では、「コミュニティバス・乗合タクシーの運行等に対する支援」が最も多く、大都市では、「宅配・御用聞き・買物代行サービス等に対する支援」が最も多くなっています。「空き店舗対策等の常設店舗の出店、運営に対する支援」が減少傾向にある一方で、「移動販売車の導入・運営に対する支援」が増加傾向にあります。このように、対策が進む一方で、対策を必要とする住民がどこにどの程度いるのか、その実態を行政自身が正確に把握しきれていないなどの課題も指摘されています。

次に、新型コロナウイルスによる影響ですが、外出自粛等により「買物弱者が増加、顕在化した」と回答した市町村の割合は、全体で29.7%、中都市で35.0%、大都市で41.2%となっており、特に大都市で問題が顕在化していることが分かります。都心部には多くの単身高齢者が居住していることが理由と考えられます。

 

こうした問題への対策の必要性を20年以上前にいち早く訴えていたのが、2019年に逝去された小説家の堺屋太一氏でした。堺屋氏は、小渕内閣で経済企画庁長官を務めましたが、少子・高齢社会にふさわしい安全・安心でゆとりのある暮らしを実現するためには、①高齢者でも自宅から歩いて往復できる範囲の中に、通常の生活者が暮らしに必要な用を足せる施設が混在する街、②子供から高齢者まで安心して移動できるよう、自宅から街中まで連続したバリアフリー空間が確保された夜間も明るく安全な歩行者、自転車中心の街、③幅広い世代の住民からなるコミュニティーの再生につながる街、④住民との協働作業による永続性のある街づくりが重要であるとする「歩いて暮らせるまちづくり」構想を提案しました。この構想は政府の方針として経済対策に盛り込まれ、同構想を実現するためのモデルプロジェクト地区として、山形県鶴岡市、新潟県上越市、富山県富山市等全国20か所が選定されました。同構想は残念ながら、途中で中止となりましたが、その後、「コンパクトシティ」と名前を変えて引き継がれています。今こそ、「歩いて暮らせるまちづくり」の実現が求められています。