同調圧力の限界を探る | 『売れプロ!』ブログ -「売れる」「稼げる」中小企業診断士に-

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売れプロ10期生の榎本 雅也です。あけましておめでとうございます。

第6回の今回は組織の一体感についてお話させていただければと思います。

 

1.コロナ禍での所感

コロナ禍によるニューノーマル(新たな日常)も3年目を迎えました。ファクターXの存否はさておき、日本でのマスク装着率の高さ(ほぼ100%に近い実感)や緊急事態宣言下での外出自粛の浸透などは特筆に値するものと考えます。

この背景を日本に居住する方々のまじめさなどに由来するものとするのも一理ありますが、一方で暗黙のルール(=世間体=空気)が強制力(=同調圧力)となって実効性をもたらしているのではないか、という仮説も提示されています。

 

2.一体感と同調圧力との違い

そもそも日本では、欧米と比較して組織の共同体的特性が強いとされてきました。その背景には、①閉鎖性、②均質性、③個人の組織からの未分化がある、という整理が提唱されています(注1)。現象面では、終身雇用・年功序列・企業別労組の慣行や外国人人口比率の低さ、会社における個人の役割のあいまいさ等となって現れています。これはこれで組織の一体性という日本の強みとして、過去機能してきた実績がありました。

ただし、上記に加え信念としての共同体主義が伴うと、同調「圧力」となって一致団結を追い求めて異質を排除するという、合理性を超えた行動につながるとされています。

コロナ禍での身近なケースでいえば、一時期、マスク警察や自粛警察などという言葉がメディアに登場しました。実際のところ、警察が発動する機会は多くなく、“世間体”という圧力を感じて求められる行動(マスクや自粛)を個々人が“自主的”に従っていたという状況のようです。

また日本では、諸外国と比べて、特に「自分が損してでも他人を貶めたいという嫌がらせ行動」(=スパイト行動)を選択する傾向が強いようです(注2)。これがスキャンダルを集団で徹底的にたたく傾向や、出る杭は打たれる風潮につながっているかもしれません。

 

3.功罪

ネガティブに聞こえてしまう同調圧力ですが、これまで戦後復興~ジャパン・アズ・ナンバーワンをいう名声を確立してきた日本の強みとして働いてきたシステム・イデオロギーであったことは事実でしょう。すわなち、画一的な知識を記憶する力・模倣する力を重視して教育しつつ、かつ与えられた課題を正確・迅速に処理する能力が評価され、高度成長を実現してきました。

ところが平成期を迎え、世の中はグローバル化・ボーダレス化・IT化の大きな変化に直面しました。

とりわけインターネット技術の発達により時間・空間感覚が超・短縮化/同期化することになってしまいました。

すると、これまでの強みであった同調圧力を伴う一体感が逆に弱みに転化してしまう、そんな現象が「イノベーション」の世界ですでに顕在化してきているというのです。イノベーションには突出した意欲や個性の発揮が求められ、異質を排除し、出る杭を打つ土壌では育ちにくいものです。

さらには同調圧力によって生まれる「やらされ感」が自発的モチベーションを生みづらくしているとされます。現にワーク・エンゲイジメント・スコア(※)の国際比較を見てみますと、日本は諸外国に比較して相対的に低い状況です。

 

【出所】令和元年版 労働経済白書より

 

(※)ワーク・エンゲイジメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態として、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態として定義される。つまり、ワーク・エンゲイジメントが高い人は、仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て、いきいきとしている状態にあるといえる。

 

4.今後にむけて

あたらしい日常・ビジネス環境でも価値を社会に届け続けるためには、変化に適応することが必須と考えます。ただし、上記課題は文化的な背景を有しているため、閉鎖性・均質性・個人の未分化をいきなり解消することは難しいでしょう。でも減圧することは考えられるかもしれません。以下、すでに実現されているものも含まれているかと思いますが、企業経営の面から推進できる具体論の一部として考えられるのではないでしょうか。

 

1)人材の多様化:

女性・外国人・通年採用・人材オープンドアポリシーの導入など。人数の問題ではないですが、排除の流れをとどめられる規模である必要があります。

 

2)副業の勧奨:

イノベーションの源泉となる異質なものの組合せの発掘や、属性の異なる共同体に複数所属することによる人間関係の複線化が期待される。

 

3)仕事付与の仕方の工夫による、ワーク・エンゲイジメントの向上:

モチベーション理論の動機付け要因にある「職務充実と職務拡大」がベースとなります。仕事の裁量の拡大により、自己効力感(自分はできる!)が高まることで、“やらされ感”は減圧できることでしょう。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。

 

(注1) 「同調圧力の正体」太田肇 著

(注2) 「生贄探し 暴走する脳」中野信子・ヤマザキマリ 著

 

榎本 雅也