フォレストコーポレーション | 『売れプロ!』ブログ -「売れる」「稼げる」中小企業診断士に-

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売れプロ8期生の柳澤俊夫です。

 

 先日、埼玉県生産性本部の講演会に出席し、第1回日本サービス大賞地方創生大臣賞を受賞した株式会社フォレストコーポレーションの小澤社長のお話を伺いました。70-80人ほどの聴衆でした。

 フォレストコーポレーションは、長野県伊那市に本社を持ち、長野県内に5つの支店を持つ総合建設企業です。社員数は130人、2018年12月期の売上高が55億円強、経常利益が2億5千万円です。木造住宅やRC造賃貸マンションの建築・販売などを行っていますが、現在は住宅の割合が一番大きくなっています。

 この会社の木造住宅のキャッチフレーズは、『家づくりを物語に』です。最大の特徴は、個人用住宅で、お客様参加型の家づくりを行うことです。

 1番目の特徴が、「自分の山の木で家づくり」です。信州の人は、自分の山を持っていることが多く、14%の施主が自分の山の木を使って家を作るとのことです。

 2番目が、「あなたが選ぶ山の木で家づくり」。施主自身およびその家族が、山の中で住宅に使う木を選定し、その目の前で、伐採します。9割近い施主が、この行事に参加するとの事です。

 そして、3番目が「ひとてま工房」。施主とその家族が、家づくりに“ひとてま”かけます。家族総出での壁塗装や装飾品製作で、施主が家づくりに関与する体験や、それによる感動を創出しています。

 これらの様々な独創的サービスで、感動を呼ぶサービス、長く愛されるサービス、地域で輝いているサービスを提供してます。これらのサービスは、顧客の声や、社員の提案から生まれてきたそうです。

 ある日、顧客から、「自分の山の木を使いたい」と言われたのがきっかけで、「自分の山の木で家づくり」を可能にしました。その後、社員のアイデアや顧客の声を大切にし、どうしたら顧客が喜んでくれるかを考えて個人住宅事業を進めていったとの事です。

 このように、顧客満足を「家づくりを物語にする」ことにより実現することは、前例のない取り組みであったため、試行錯誤の連続であったことは、容易に想像できます。

 それでも、顧客の要望に対し、自分たちの考えを押し付けることなく、実現の可能性を検討してみようという、親切心からではないのでしょうか。

 フォレストコーポレーションの話は、第1回の日本サービス大賞で地方創生大臣賞を取ったこともあり、サービスの世界では有名で、専門書などで取り上げられています。サービスの専門家が書かれた本を読むと、受け手の事前期待を見定めて、それを超える経験価値を提供したことが、重要な評価点であると書かれています。

 でも、社長の講演を聞かせていいただいていると、多分、社長はそんな難しいことは考えていなかったのではないかと感じました。

 私は、長野県の上田の郊外の、周りが田んぼだらけの農村にある母親の実家で生まれました。毎年、夏休みになると、母親の実家に行き、2-3週間泊まり、3人のいとこやおじさん、おばさん、おばあちゃんなどと一緒に過ごしました。リンゴの収穫や、ホップ摘みも手伝いました。その時に、近所の同年齢の子供たちとも仲良くなりました。ですから、信州の田舎の人たちの人間付合いの仕方も、子供なりの眼で見ていました。

 田舎では、近所の人は親戚みたいな、あるいは、準家族のようなもので、毎日、顔を合わせ、言葉を交わし、共同作業もしばしば行います。ですから、近所の人に何かがあった時には、家族の様にすぐ駆け付け、いろいろと手伝います。近所の人に困ったことがあれば、親身になって心配し、相談に乗り、一緒に考えます。

 当時から60年ぐらい経ちますが、今でも、信州在住のいとこたちと会うと、ほっとします。いとこたちの考え方の基本は昔のままで、他人の困り事、心配事でも、同じ家族の様に、親身になって心配してくれます。同じいとこでも、東京で育ったいとこと、信州にずっと住んでいるいとことでは、他人に対する接し方が違い、信州在住のいとこは、本当に、親身になって考えてくれると感じています。

伊那も、上田と大きくは変わらないのではないのでしょうか?どちらも、県内の大きな長野市とは異なり田舎の市であり、昔の田舎の良いところを受け継いでいると思います。

 フォレストコーポレーションが、最初に顧客から「自分の山の木で家をつくりたい」と聞いた時、ビジネスとしての困難さや、面倒くささや採算性などよりも先に、自分の親戚か近所の人から相談を受けた時と同じように、相手の気持ちに寄り添って考え、この顧客の希望を叶えるにはどうすればよいのかを、まず考えたことが、新しいビジネスにつながったのではないのでしょうか?

 従業員も、同じように、どの様な事を提案したら顧客が大喜びするのかという視点で、ものを考えているのだと思います。基本的には、日本固有の村社会の考え方が、基本にあったと思います。

 

 伊那には、もう一つ、有名な伊那食品工業という会社があります。寒天の製造会社で、50期連続増収増益を続けている会社です。トヨタ自動車の豊田昭男社長をはじめ、デンソーを始めとするトヨタ関連の多くの社長が訪ねている有名な会社です。この会社の基本は、従業員を大事にすることです。

 フォレストコーポレーションの顧客を大事にする考え方と、伊那食品の社員を大事にする考え方とは、人を大事にする点で共通しています。伊那という地方都市の文化が育んだ、成功した日本的会社の典型ではないでしょうか?

 ちなみに、フォレストコーポレーションの小澤社長のご自宅は、伊那食品会長のご自宅の隣だそうです。また、地域の経営者団体の会議等でも、しばしば意見を交換されるとのことでした。

われわれ、中小企業診断士も、日本の会社数の99.7%を占める中小企業に「寄り添い」、経営を支援するのが使命です。人を大切にして、中小企業を支援することを、胸に刻んでいきたいと思います。