診断士がおさえておくべき景気動向(3)~ざっくり過ぎる米中経済戦争の見通し~ | 『売れプロ!』ブログ -「売れる」「稼げる」中小企業診断士に-

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みなさんこんにちは。売れプロ8期生の酒井浩 58歳、独立準備中の企業内診断士です。

 

「診断士がおさえておくべき景気動向」の第3回、今回は、世界経済の最大の懸念となっている「米中経済戦争」について、ざっくり考えてみたいと思います。

 

米中間の問題は、今や新聞に載らない日がないくらい、ビジネスマンにとって最大の関心事になっているといっていいと思います。

 

短期的には、貿易問題が解決の方向に向かうのかどうかで世界の株価が乱高下する、ということになっていますが、では貿易問題が解決すれば株価も安定して成長軌道に戻るのか、というと、決してそうではないような雲行きになってきました。

 

新聞や雑誌を見ても、米中間のあつれきを単なる「貿易摩擦」ととらえるような、短期的、楽観的な論調は薄れ、これは「経済戦争」、もっと言うと、何十年も続く「覇権戦争」である、との論調が強まっているように思います。

 

詳しい議論はすっとばして、「じゃあどっちが勝つんだ」という結論をざっくり見ていくと、これは今のところ「米国が本気になれば、みすみす中国に覇権を渡すことはない」という論調が多い。その理由は、

 

1. 中国経済はボロボロ。(かつての日本のように)不動産バブルは崩壊し、過剰設備によって長いデフレ状態に陥る。

2. 一党独裁のひずみで内部崩壊する。香港をはじめ、広州など、地方の反乱をおさえられない。

3. 非民主国家であり、国際的な協力が得られない。「一帯一路」は、経済が停滞すると「金の切れ目が縁の切れ目」になる。

 

という感じです。ただ、尖閣以降、中国に脅威を感じている我々日本人にとっては、こうした論調の方が受けがよいので、そのあたりは割り引いて考えた方がいいかもしれませんね。

 

一方で、「中国はあなどれない」とする論調も、少数ですが、ないことはない。理由は、

 

1. 5Gをはじめ、中国の技術力、軍事力の躍進はめざましい。いずれ米国を凌駕する。

2. 強権国家であり、中国の方が持久戦に耐えられる

3. 中露関係の強化など、中国陣営の方がまとまっている。トランプ政権になってからは、欧米間の足並みの乱れの方がひどい。

 

少し前の本ですが、「米中もし戦わば」(ピーター・ナヴァロ)のように、米中の軍事力を冷徹に分析して、米国側に警鐘を鳴らすような分析もあります。

 

ということで、これだけでは何とも言えませんが、どちらの主張にも共通なのは、「これは東西冷戦と同じか、それ以上の覇権争いであり、30~40年、場合によっては100年争いが続くとしていることです。

 

この20年、リーマンショックのような景気後退はあったものの、世界経済は、総じて中国の飛躍的な成長に引っ張られて成長してきた、と言ってよいと思います。しかし、米国が「中国に覇権は渡さない」という意思を固めた結果、中国がかつてのように急成長を続けることはあり得ない。

 

となると、次の成長のエンジン(インドという説が多いですが、個人的にはあの国が中国のように急成長を遂げることは難しいのではないかと考えています)が軌道に乗るまで、世界経済は長い停滞に入る、という可能性も考えておかなければならないと思います。

 

株価が上がり続けていることもあって、新聞を読んでいても、あまり危機感が感じられないような気がしますが、相場は下がるまでは上がり続けるものです。(株の売買の大半がコンピュータープログラムによるものになってしまった今、物理的にも、下がるまでは上がり続けざるを得ない仕組みになっています。)

 

ここ数年、日本経済はアベノミクスによって比較的安定していましたが、その間に、世界は全く新たな時代に突入してしまった、ということを、改めて認識する必要があるのではないか、と思います。

 

次回以降、米国、中国それぞれについてもう少し詳しく見ていきたいと思います。