シルヴィ・ギエム 「ボレロ」 | 一疋の青猫

シルヴィ・ギエム 「ボレロ」


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ひとつ前の 演目が終り カーテンコールの中

既に オーケストラ・ピットへ 人が現れ始めると 意識は もう そちらへ

そう ギエムの舞う ボレロのみ 生演奏だから

拍手も止み オーケストラの 調音が始まると

いよいよ 緊張感が 高まっていくのを 感じる




暗転したままの舞台 スネアドラムが リズムを刻み始める

絞られた スポットの光が ギエムの 手の動きだけを 追う

ボレロの 麻薬のような 呪術的なリズムに ひとつ ひとつ 楽器が加わって 厚みを増す

ギエムの 円卓を 囲んで踊る 裸身の男達 コール・ドの数が ひとり ひとりと 増していくように

生オーケストラ なればこそ 音の所在まで はっきりと伝わる そこにあることの存在感




ギエムの身体 すべてが 露になり 音も 踊りも 繰り返しながら 限りない増幅を 始める

まさに 欲望の 儀式

音と舞いの 同心円の中心 赤い円卓で 踊る姿は まさに 神への捧げ物

神へと乞い願う 祈りの同心円は クライマックスへ向けて その輪を 拡げてゆく

息をするのさえ 苦しくなる




ギエムの 伸びやかな肢体 その動きも 逆立つ髪も さらに 激しさを増し

コール・ドの 舞手 すべてが そして 会場 すべてが 円卓を 囲む

最後の 二小節

天を突いた ギエムの 指先 一転して その身を 地に平伏す

一瞬の沈黙の後 湧き上がる 歓声




まさに この時こそが

ここに 在ることこそが 唯一 意味あることと思える そんな一瞬

ギエムは やはり ギエムで

ボレロは ボレロであった




「 ベジャールの魂を日本へ連れてきたい 」

そんな ギエムの言葉もあって 叶った 再演

わずか 15分足らずの 祝祭に

彼女を通して ベジャールを 神を 感じた思いだった

すべてに 感謝


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