ほのぐらい
陽が落ちて
古びた 建物の窓に 色が浮かぶ
光もなく ただ 匂いに誘われて
花屋の店先を のぞく
一瞥を呉れて
店員は 仕事にもどり
おもての花々を 仕舞い込んでいる
仄暗い ひかりの中で
意外に 花びらは あかるかった
まるで みずから 輝いているようで
ふわりと 浮かんでいるようで
・・・・・・
ほんとうに
そこに いるの
と
闇の中に手を伸ばす
指先の 触れた
花びらの 一片が
揺れて 落ちる
・・・・・・
「 もう おしまいですよ 」
と
背中で聞く
唐突な声に
手を引き込める
ひと呼吸おいて
同じ声が
「 もう つぼみも無いですから 」
と
こちらの 慌てた素振りに
やさしく 声を 掛けてくれた
・・・・・・
宙ぶらりの 手の上で
おしまい
と
告げられた その 花は
濃さを増した 宵闇に
とても
淋しげに みえた

