なぜ、今、D’Angelo、MORGAN HERITAGEなのか~2016年グラミー賞~ | URBAN CHAMPION❮公式❯

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こんにちはー!
先週は見事に風邪を引いてしまい寝込んでいたよーこです。
行きたいイベントたくさんあったのに(涙)



さてさて、先週ついに2016年グラミー賞が発表された訳ですが。


この名誉ある賞を受賞、またはノミネートされるだけでも、世界の音楽シーンに多大な影響を与え、アーティストとしての地位が確固たるものになるわけですので、毎年世界中の音楽ファンが注目します。


ちなみになんですが、結構コアな音楽ファンの中には『グラミー賞なんて商業的功績だろ!音楽的にはクソ喰らえだぜ!』なんておっしゃる方もおられます。

グラミー賞の選考はアカデミー会員による投票制度であり、
まぁ、言っちゃえば映画業界、音楽業界、メディア関連で力を持った人達の好みの投票なんですね。
『だから白人や権力者に近いやつばっかり選ばれるんだぞ!』なんて言ってる方もUS国内外にたくさんいらっしゃいます。


しかしながら、建前としては
『選考基準は、ヒット・チャート等のコマーシャルな成功とは関わりなく、その作品の芸術性』とのこと。

そんな中でグラミーを獲った非白人の方々やアナーキーな方々も人種問わずたくさんいらっしゃるわけで。
ここは世界規模の視点で音楽シーンを観ていると予想される、アカデミー会員の皆様の『肥えた目』を信頼し、話を進めたいと思います。


では、2016年グラミー賞の、主要な
部門の受賞者をざっと見ていきましょう。
※グラミー賞は毎年年始なので、前年1年を通して活躍したアーティストが対象になりますので、中にはリリースが一昨年末のものもあります。
(例:2016年は2月が授賞式なので、対象は2015年一年間で活躍したアーティストや楽曲。中には2014年末にリリースされ、2015年に入ってから支持されたものも。)


年間最優秀アルバム賞: Taylor Swift – 1989
年間最優秀レコード賞: Mark Ronson featuring Bruno Mars – Uptown Funk
年間最優秀楽曲賞: Ed Sheeran – Thinking Out Loud
最優秀新人賞: Meghan Trainor


最優秀ROCKアルバム賞: Muse – Drones
最優秀ROCK楽曲賞: Alabama Shakes – Don’t Wanna Fight

最優秀DANCE/Electronicaアルバム賞: Skrillex and Diplo – Skrillex And Diplo Present Jack Ü
最優秀DANCEレコーディング賞: Skrillex and Diplo featuring Justin Bieber – Where Are Ü Now

最優秀RAPアルバム賞: Kendrick Lamar – To Pimp A Butterfly
最優秀RAP楽曲賞: Kendrick Lamar – Alright

最優秀R&Bアルバム賞: D'Angelo And The Vanguard – Black Messiah
最優秀R&B楽曲賞: D'Angelo And The Vanguard – Really Love
最優秀R&Bパフォーマンス賞:The Weeknd – Earned It (Fifty Shades Of Grey)

最優秀REGGAEアルバム賞:Morgan Heritage ― Strictly Roots

最優秀Popボーカルアルバム賞: Taylor Swift – 1989
最優秀Popソロパフォーマンス賞: Ed Sheeran – Thinking Out Loud
最優秀Popグループパフォーマンス賞: Mark Ronson featuring Bruno Mars – Uptown Funk


まだまだたくさんあるのですが、んまぁ~ぁ細すぎて書ききれませんのでここまでにしときます(汗)
各種部門合わせて78もあるんですよ。これでも近年部門の整理整頓を行ったらしいですが。
病み上がりの貧弱な身体ですので全部書くのは止めときます←


今回はKendrick LamarTaylor Swiftが強かったですね~。
ちなみにKendrick Lamar今回最多の5部門受賞、ノミネートは11だそうで、これはかのMichael Jacksonの12ノミネートに次ぐ歴代2位、ラッパーとしてはEMINEMの10ノミネートを越えて歴代トップだそうです。
日本だと可愛らしいTaylor Swiftの方が圧倒的に注目度が高いですけどね。


で。ここでTaylor SwiftKendrick Lamarなんかの特集は今日はしません


Taylor SwiftMark Ronson&Bruno Mars
Kendrick LamarSkrillexDiploJustin Bieberなどなど、

このへんは『あーやっぱねー』的な妥当な感じだったかと思います。
個々の専門分野を越えて一般大衆向けにも、といった面で幅広く知名度があり、商業的成功も伴っていることから、まぁ納得というか、大して驚かないです。



今回注目すべきはやはりR&B部門REGGAE部門じゃないでしょうか。



『どーせR&B部門はThe Weekndの一人勝ちでしょ(´σ¨_` )ホジホジ』
と半ば投げやりに観ていたのですが。



蓋を開けてみたら


『え!?D’Angelo!?まじで!?まぁアルバム出してはいたけどさ!?今なの!?』


と驚愕したブラックミュージックファンは私だけではないでしょう。

誤解がないように書いておきますが、私はThe WeekndD’Angelo好きです。
ただ、2015年の顔とも言うべき売れっぷりで大本命と言われていたThe Weekndを押しのけてのD’Angeloの受賞はかなり意外でした。



またREGGAE部門では、未だBob Marley人気の強いアメリカで、近年Ziggy MarleyStephen MarleyDamian"JuniorGong"MarleyといったBob Marleyの子息達が続けて受賞していることから、



『今年は何・マーリーだろうな?(´σ¨_` )ホジホジ』
くらいにしか思ってなかったんですが


→最優秀REGGAEアルバム賞:Morgan Heritage ― Strictly Roots←


『あれ!?まじで!?Morgan Heritageなの!?
マーリー一族ノミネートすらされてなかったし。』



D’AngeloMorgan Heritage
まじでノーマークでした。

今回はこの2組を少し掘り下げてお話させて頂きます。前置き長いな。



まずD’Angelo
今回のグラミーで最優秀R&B楽曲賞を受賞した曲はこちらになります。


"D'Angelo and The Vanguard - Really Love"


今回、一昨年末にリリースした『Black Messiah』で最優秀R&Bアルバム賞も受賞したD’Angeloですが、なんと14年ぶりのアルバム!!
※前回のアルバム『VooDoo』もグラミーとってます。


代表曲はこちら。

"D'Angelo - Cruisin'"


"D'Angelo - Untitled (How Does It Feel)"


"D'Angelo - Brown Sugar"



抜群にオシャレですよね~!!!

実は彼、デビューから21年の間に出した、正式なオリジナルアルバムは、『Brown Sugar(1995)』『VooDoo(2000)』、そして今回の『Black Messiah(2014)』のたった3枚だけなのです。

Brown Sugar』リリース当時は私小学生でしたので、もちろんリアルタイムではありませんし、『VooDoo』の時は高校生で、悲しいかな、田舎の女子高生は、イケイケのHIPHOPは聴いても大人の落ち着いたオサレなR&Bには縁がありませんでしたので、しばらく馴染みはなかったのですが、

後に『D’Angeloいいよ~』とR&B好きな方にオススメされて掘ったことがあります。

一昨年末まで14年もアルバムを出していないのに、コアなファンに絶えず支持され、
その良さが世代を超えて伝承され続けているというのは、凄いことではないでしょうか。

D’Angeloってどちらかというと、若い方よりも、私より上の世代のDJがかけてる印象があります。
大人の音楽といった感じ。

Lauryn HillErykah BaduEric Benetなどと同じく、ネオ・ソウルといった、新しいR&Bの時代を切り開いたアーティストであります。

14年も待ち続けた大人のR&Bファンの皆様は、今回のリリース&グラミー賞受賞はさぞ嬉かったのではないでしょうか。

しかーし。
こんなオサレな曲やってるんだから、本人もさぞ落ち着いた大人の方なんだろうと思ってたら、結構ブッ飛んでますw

長くにわたりヤク中だったようで、ボロッボロになるまで酒とコカインに翻弄されます。
LIVE中に目の前のお客さんにキレて暴れたり、
2005年にはパッキパキの状態で運転していたら、車の窓から投げ出され左の肋骨を全て折る重症を。

これじゃやばいと思ったのか、エリック・クラプトンに自ら電話し、『ちょっとお宅のリハビリ施設入れてくんない?』とエリックのお世話になり、しばらくの引きこもり生活を経て、シラフに。
(エリック・クラプトンはリハビリ施設の代表などもやってます。)

その後もシモ(w)の方で逮捕されたりと色々あって、
今回のアルバムリリースに至るまでの14年間、紆余曲折あったわけですね。


俺は自分をR&Bシンガーなんて思っちゃいねえ!R&Bなんていけすかねぇってずっと思ってんだぜ。俺が最初に作った曲はHIPHOPだ!


と過去に発言しているとおり、彼のキャリアスタートはHIPHOPだそうです。

とんがってるなぁw大好きですこういうアーティスト。

また、Marvin GayePrinceに影響を受けたんだとか。このへんはWikipediaをご参照ください。

→ディアンジェロ Wikipedea




続いてREGGAE部門受賞のMORGAN HERITAGE
これも驚きました。
何故なら、今回に関して言えば、マーリー一族でないとしたら、アメリカでもアルバム『The Cure』がロングヒットしていたJah Cureが本命なんじゃないかと思われていたからです。
未だ獄中にも関わらず90年代よりずっと本場ジャマイカで支持されてきたJah Cure
かくいう私もJah Cureの大ファンで、親友の結婚式2次会でJah Cureばっかりかけてたくらいです。

そのJah Cureを破り、見事に2016年のグラミー賞REGGAE部門を制したMORGAN HERITAGEは、キャリアが長く、ジャマイカを超えて世界中の多くの人々に愛されているREGGAEバンドです。


日本語版のWikipediaがなかったので少しご説明を。

メンバーは
Peter "Peetah" Morgan、
Una Morgan、
Roy "Gramps" Morgan、
Nakamyah "Lukes" Morgan、
Memmalatel "Mr. Mojo" Morgan

の5人組。

あれ、みんなラストネーム一緒ですね。
それもそのはず。
MORGAN HERITAGEは全員、血のつながったご姉弟であります。

なんと!!!
MORGAN HERITAGEのお父様、Denroy Morganさんは29人のお子さんがいらっしゃるそうで(驚愕)

ちなみにPeetahLukesは同じ77年生まれです。
顔はあまり似てないので考えられることは.....どういうこと?

.....そーゆーことなんでしょう(邪推)。
凄いな父ちゃんのあっちの能力。

そんなモーガン家の父ちゃんはジャマイカ生まれジャマイカ育ちの生粋のジャマイカ人。
19歳の時に海を越えてアメリカはニューヨークに渡り、ミュージシャンとして成功を収めます。
そんでこの時からたくさん子供を作るわけですな←


このお父ちゃん、プロデューサーとしても優秀でして、ニューヨークを拠点に、自分の子供達を相手に、バンドのなんたるか、ボーカルのなんたるかをじっくり叩き込み、なんとREGGAEの国際イベントにデビューさせてしまいます。
まだこの頃みんなティーンエイジャーですよ。

そう。これがMORGAN HERITAGEの前身。
皆様ニューヨーク出身なのであります。

その後、お父ちゃんの故郷、ジャマイカに移住し、世界的老舗レーベル、VP Recordsと契約し、現在までにたくさんの楽曲を発表されています。

では代表曲をいくつかご覧いただきましょう。

今回グラミーにて最優秀REGGAEアルバム賞を受賞されたアルバムのタイトルにもなっているこちらの楽曲。

"Morgan Heritage - Strictly Roots"



その他の代表曲はこちら。

"Morgan Heritage - Don't Haffi Dread"


"Morgan Heritage - Gotta Be"


"Morgan Heritage - Tell Me How Come"


"Morgan Heritage - Perfect Love Song"



曲数が多いのはもちろんなのですが、ゴリゴリとラスタラスタしている曲から、甘いラブソングまで、その幅が広いです。

しかしどんな曲にも一貫した爽やかさがあります。
彼ら自身が、世界の音楽の中心地アメリカと、REGGAEの本場ジャマイカ、この両方をルーツに持っていることが、彼らの音楽が世界的に認められることになった要因なんじゃないかと言われております。

根っからのレゲエファンから、普段レゲエを聴かない方々にまで、広く受け入れられるバンドかなと。


生意気に考察してしまうと、
ただ、大衆向けにいじくられた、いわゆる、REGGAEっぽいバンドってだけだったらここまで支持されてないと思います。

ジャマイカにルーツのある、ラスタ一家が全身全霊で伝えるジャマイカの伝統音楽「REGGAE」。
アメリカ生まれであり、ニューヨークの空気の中で育った彼らが、若くしてジャマイカに移住し、自分達の音楽をジャマイカ本国だけでなく、いかに世界レベルで伝えられるか試行錯誤し、20年以上のキャリアの中で培ってきた結果、産み出された「REGGAE」が、MORGAN HERITAGEの音楽なのではないでしょうか。



D’Angeloも、MORGAN HERITAGEも、キャリアが20年以上の大ベテランです。
実績があるのは言わずもがな。


しかしながら、R&BもREGGAEも世界的に人気のある音楽ジャンルでして、その頂点を志すアーティストも未だ絶えずにたくさん出てきているのであります。

今回R&B部門大本命と言われたThe Weekndはじめ、アルバム『Wildheart』が大ヒットしたMiguelたくさんのレコード会社が争奪戦を繰り広げたLeon Bridges、昨年のR&B界で大型新人として話題となったAndra Day


REGGAE部門だと前述のJah Cureだけでなくアルバム『The Living Legend』がアメリカでもヒットしたベテランJunior Reid
ジャマイカ本国で絶大な人気を誇るVybz KertelMr.Vegas、UK出身のプロデューサーJamie xxの楽曲にアトランタのラッパーYoung Thugと共に参加し、ジャマイカを飛び越え世界レベルで話題となったPopcaanなど、本場のジャマイカ国内だけではなく、世界のREGGAEファンの多くに支持されるアーティストもいるわけです。



なぜ今、2016年のグラミー賞は、
R&BはD’Angelo、REGGAEはMORGAN HERITAGEなのでしょうか。


これはあくまでも個人的な見解なのですが。


そのヒントはまずここにあります。

→RUN DMCが【グラミー賞 特別功労賞生涯業績賞】受賞 JAPAN billboard

素晴らしいことですよ。なんてったって、この功労賞、ラッパーが獲るなんて今までありませんでしたから。


ヒントその2。
これは個人的なエピソードなのですが。
うちのオーガナイザー、モタイ(アラフォー代表)一応DJなわけでして、
一昨年D’AngeloBlack Messiahが発表になったときに
「懐かしいなぁ。出すんだなD’Angelo。若い時買ったなぁ。凄いかっこいいんだよなぁ。」とこぼしたのであります。

今回MORGAN HERITAGEの受賞も
「え!?今!?まじで?かなり古くからいるよその人達。俺は今のも好きだけどさ。」と驚きながらも
「あのレコードどこだっけかな。懐かしいな。」とレコードを探し出す始末。


私が思うに、モタイと同じような反応をされたアラフォー世代の音楽リスナーの方々も多いはず。


なんでこれらがヒントなのかと言いますと、これはグラミー賞の選考に関わる人達が『何を聴いてきたか』というところに大きく影響を受けているのではないかなと思ったのであります。


アーティストと同じく、グラミー賞を選考する人々の世代も段々と移り変わっていきます。


HIPHOPや、次世代のR&B、オルタナティブ・ロック、Bob Marleyよりも後の世代のREGGAEを聴いてきた方々が、30代、40代、50代となり、段々と世の中で発言力を持つ立場になってきていて、
その選考もただ単に『売れたから』『そのジャンルを代表する曲に相応しいから』だけではなく、
ジャンルそのものに対する知識が豊富な世代が、着々とグラミー賞の選考基準を変えてきているのではないでしょうか。


知識に自信がある、目の肥えた人達が
『あっちの方が有名でこっちよりも売れたかもしんないけど、こっちのアーティストの方がいい!いいもんはいいんだ!』
と胸を張って言い切っているのではないのかなと。

D’AngeloMORGAN HERITAGEも、その世代が若い時から聴いてきた音楽。
ノミネートされたJah Cureも同じ世代ですね。
一番良さを理解し、支持している世代なのでは。

REGGAE部門に関して言えば、前述した通り、MORGAN HERITAGEはニューヨーク出身という経歴がありますので、Jah Cureよりもさらに、アメリカの人達の肌にあった音楽、親しまれたアーティストだったのではないかなと予想します。


Run D.M.Cの特別功労賞受賞も、グラミー賞を選考する人々の世代交代を物語っているのではないでしょうか。
若いHIPHOPリスナーには馴染みはないかもしれませんが、Run D.M.Cと言ったら、HIPHOPのお手本とも言えるべき先駆者です。
しかし、HIPHOPのラッパー達が特別功労賞を受けるなんて、今まで考えられなかったことなんですよ。

これは、今、グラミー賞の実権を握っている世代が、若き日に「かっこいい」と影響を受けたグループだからなのではないでしょうか。

あくまでも私の個人的な考察でして、違う意見ももちろんあると思います、今回のグラミー賞で感じたことは以上になります。

Jah Cureの方が売れていたのに、受賞しなかったのは服役中だからだ、っていう見方もありますしね。
本当のところは私みたいな一般人にはわかりません←


しかしKendrick Lamarものすごい人気だなぁ。
コンプトン出身だけど逮捕歴ない、ってところが好感度いいのかな?
このまま日本にもHIPHOPブーム再来しないかな。


ということで今回はおしまい♪