初めての精神科3 | 書きなぐり。

初めての精神科3

看護婦に名前を呼ばれ、三人で診察室に入る。

中は8畳ぐらいの広い部屋で、木製の大きな机の前にポロシャツを着た若めの優しそうなおじさんが座っていた。

部屋の隅には大きな観葉植物が置いてある。

先生は白衣も着ていないし革靴も履いていない。ラフすぎる先生を前になんかちょっと違和感を感じた。

こういう風にして緊張を溶かそうっていう計算があるんじゃないかって深読みして、そんなもんには影響受けないぞって謎の気合が入った。

私たちは、先生の向かいに、私、母親、父親の順番で座った。

 

後々いろんな精神科に行くようになってわかったが、やっぱりみんな白衣きてる先生ばっかりだったし待ち合い室も白い無機質な病院行が多かったので最初に行ったとこは特別だったっぽい。

とにかく病院内が綺麗だったし新しかったので、今思うとめっちゃ儲けてるところなのかもしれない。

 

先生が話す「どうしました?」

私はもうずっと何も喋ってない。親に電話してわーっと苦しい事を話してから数日ろくに親とも話もしてない。

わたしは疲れていた。もうこれからどうしていいのかわからずやりたいこともなく生きていたいとも思えずもう二度と元気になる事もないだろうと思ってた。

 

「死にたいというんです…」

それまでビシッとしてた母親が弱気に言った。

え?と思って横を見ると、母親のむこうの父親が、眉をしかめ、握った拳を膝の上に置いて難しい顔をしていた。

そんな父親の顔をわたしは見た事がなかった。

なんか、わたしのせいで両親に申し訳ないことをしているんだなぁということだけがわかった。

 

どうして私は生きているだけで人に迷惑をかけるんだろう。ずっと昔から、どこかチームになじめずしゃべると話しが途切れ、変人扱いされる。どうしてだろう。両親のせいにしたことはないけど、いい子になれなかった自分には負い目があった。

出来ることなら両親を喜ばせられる子どもになりたかった。

でも無理だった。もう頑張りたくないし、がんばれないと思う。

もう、本当ごめんなさい。

両親が先生と話す間、私はそんなことをずっと考えてた。

 

最後、父親が「どうか…この子をよろしくお願いします」と言って立ち上がり、深くお辞儀をした。

辛そうな顔をして、もう、助けを求めるのはこの人しかいないと思ったのだろう。先生は、「大丈夫ですよ、ゆっくり治療して生きましょう」と言った。わたしは父親の顔が頭から離れなくなった。

この顔にまた笑顔を取り戻させる事はできるだろうか。自分がなくて、申し訳なくて、ごめんなさいごめんなさいって、ただただ思った。

 

もらった薬を飲めば何か変わるのかなと思いつつ、向精神薬と漢方を一日中三度飲んだ。

 

私の気持ちは上向きになることも何かが変わることも一切なかった。