初めてフーゾクの面接に行った話・2 | 書きなぐり。

初めてフーゾクの面接に行った話・2

束縛ストーカー彼氏から逃げるため、そして、心身ともに悪い人になるためにフーゾクで働くことをけついしたわたし。一人での面接は死ぬほど心細かったが友達に断られついに一人で面接へ行く決意をした。


束縛ストーカー彼氏の元から離れるにはまず、家を借りるお金を貯めなければいけない。

安く見積もっても30万。それに家具やなんやかんや揃えたらさらに10万。計40万。


雑誌の求人には「1日35000円保証」とあった。

え? 15日働いただけで引っ越し代たまるじゃん。

どういうこと? なんでみんなフーゾクで働かないの?

いやいや、そんな甘い話があるわけはない。絶対350000円は嘘に決まってる。だって悪い人たちがやってる仕事だもの。だけど求人誌にはそう書いてある。


よ、よ、よ、よし、私が行ってたしかめる!



お金が貯まるまでは実家にそのまま住むことにしよう。バレないように、ホテルのレストランの仕事も続けよう。


私は擦り切れるまで読んだ高額求人誌の中から、実家から一本で行ける高田馬場の店を絞って電話番号をメモった。


これは20年前の話です。だからあまり覚えていません、というわけではなく、その後、どこでどう電話をしたのか、電話で何を話し面接が決まったのか、一切覚えていない。多分、緊張しすぎて真っ白に消えてしまったんだと思う。


面接当日、私は、自分の持っている洋服の中で一番いい服を着て家を出た。一番いい、と言っても、今思うと、元彼のお母さんがおさがりでくれた赤いカシミヤのセーターだったのだが、元彼と別れた時に捨ててなかったんだな、私ヘンな度胸あるなとあとで思った。セーターの中には、当時唯一持っていた上下セットの下着をつけていた。面接で脱がなければいけないかもしれない。お金をもらうんだもの、身体も見られるに違いない。そう思って、上下お揃いの一張羅をつけて行ったのだ。

今の18歳ってどこまでお金を持っているのかわからないけど、当時の私は可愛い上下セットの下着を買うほどアルバイトでお金を稼いでいなかった。それに、アルバイトはどこで働いても続かず、ほぼ自宅警備員と言っていいフリーターだった。


面接に向かう道すがら、ドキドキであたふたしながらも私は何か吹っ切れた気持ちでいた。

「私はこれから怖い世界に行くんです。どうです、すごいでしょう。私は悪い人ですから。そういう世界に行くことができるんです。悪い人だから、人のことは気にしないんです。」

私はいつも歩く駅までの道を堂々を歩いた。少し誇らしかった。普通の人はこうして毎日を送っているのだろうか。私は今まで、出来るだけ人に会わずにどうやって歩くかしか考えられず、いつもビクビク人の目を気にして歩いていたし、同じくそのように生きていた。


高田馬場までの電車の中で色々と考えた。面接ってなにをするんだろう。履歴書もってこいとは言われなかったけど、大丈夫だろうか。服装はこれで良かったのだろうか。スーツ?いや、そんなもの持っていない。やっぱりブスだ帰れと言われるだろうか。おっぱいにも自信がない。こんなの金にならんと言われてしまうだろうか。だったらそれで仕方ない。だけどどうしても面接に受かりたい。合格してお金を貯めて家を出たい。

わたしは期待と不安に押しつぶされそうになりながらようやく高田馬場駅に降り立った。


言われていたように駅からお店に電話をかける。「あー。どうも。そこのね、大きい道あるでしょ? そこをまっすぐ坂上がって来て」


歩きながら頭の中がこんがらがる。もう誇らしい気持ちなんてすでに緊張でかき消されていた。坂を上がりきった頃にはもう緊張マックスで頭が真っ白だった。震える手を握り、言われた通りのボロボロのビルの階段を上がる。


なにこのビル、こんなボロいビル見たことない、風俗の面接って嘘だったのかな、どうしよう、でも来ちゃった。逃げるなら今だよ、でも無理だ、行くって言っちゃったから帰るわけにはいかない、でも、でも。


階段を上った扉を目の前にピンポンを押すとすぐにドアが開き、目の前には、黒いスーツの若いお兄ちゃんが立っていた。


「悪い世界、きた


頭からプシュー!と湯気が出た気がした。