知らんおじさんの手 | 書きなぐり。

知らんおじさんの手

15〜6のとき、3つ上の姉と飲食店に行ったことがあった。

私たちは二人で食事をとっていた。

姉がトイレかなにかに立ったとき、隣に座っている酔っ払ったおじさん二人組に私は声をかけられた。

「ねぇちゃん二人でご飯か〜」

 

私は知らないおじさんに話しかけられたのがほぼ初めてのことで、緊張しながら「そうです」と答えた。

おじさん達は喜んで、なんやかんやと質問攻めをしてきた。

しばらく私は知らんおじさんとたどたどしくも会話を楽しんだ。

 

姉が席に戻り、おじさんと仲良く話す私を見て眉をひそめた。

「もう帰ろう!」

 

おじさんは

「もう帰っちゃうのか〜」

「じゃぁ記念に」

と、突然私の手を握った。

 

姉が私の腕を掴んで出口へと強引に引っ張った。

「帰るよ!」

私は知らんおじさんに手を握られながら

「え〜、今私楽しかったのに…」

と思いながら姉について帰った。

 

40歳になり、今知らんおじさんに勝手に手を握られたら

笑いながら「お触り禁止っす、一回2000円!」ぐらい言えるんだけど、当時私は、他人に興味を持ってもらえることがほぼなかったし一生ないと思っていたので、知らんおじさんの握手がとても嬉しかった。

知らんおじさんの手はあったかかったし、両手でスリスリしてくれて、私は大事にされている錯覚を得た。

 

知らんおじさん、あの時はありがとう。

でも怖いのでそういうのもうやらない方がいいよ。

 

姉は当時からちゃんと自分の価値を分かっていたんだろう。

しばらくの間、気持ち悪い!ってプリプリ怒ってた。

 

なんでかなぁ〜、、て私は思ってたよ。

 

 

終わり