大阪に先立って所沢で開かれた演奏会に於ける、同じプログラム。そのマイミクB氏の重厚なコンサート評にここで付け加える事は何一つないんやけど、でも、なんか毎年恒例になりつつあり徐々に有り難味が薄まってきてるんちゃうかという不遜な思い上がりを打ち払うとともに、70歳を迎えんというゲルバーにとっての円熟という意味を耳で味わった記録として、オレの日記にも残しておきたい。
一曲終わるたび、椅子の位置をゴリゴリ言わせながら調節して、どうしても最後までしっくりこないなあ、との呟きが聞こえてくるような、そんな風にまた次の曲が始まる。そんなゲルバーの仕草を見ながら思った。
ベートーヴェンとゲルバー、この二つ、この二人があれば、もしも他の全てが消え去っても、オレの耳は幸せなんちゃうかと。
この、ベートーヴェンのピアノ曲とはこれであるという、誰もが知っている名曲を4曲続けて、それでお腹いっぱいになるどころか、その滋味が、すべての角を面取りして漆を塗った緻密な細工の工芸品のような、しかもそれがすべて手描きであるために、微かな疵があり、その疵、あるいはその歪みが、むしろ全体の緻密さからくる冷たさを和らげているような、そんなゲルバーの名曲選。これを聴かずして音楽の醍醐味を語るなかれ、とドヤ顔で言ってみたくなるような、そんなベートーヴェン。その漆塗りの音楽に、今、触れてきたんやという満足感。今、オレ達に本当に必要な音楽とは、まさにこのゲルバーのベートーヴェンではないか。
南無阿彌陀佛
9/1(土)
ブルーノ=レオナルド・ゲルバー
ピアノ・リサイタル2011
@ザ・シンフォニーホール
【曲目】Aプロ
ピアノソナタ#14嬰ハ短調Op.27-2「月光」
ピアノソナタ#21ハ長調Op.53「ワルトシュタイン」
(休憩)
ピアノソナタ#8ハ短調Op.13「悲愴」
ピアノソナタ#23へ短調Op.57「熱情」