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公的年金の配偶者格差 ~第3号被保険者制度 早急な議論を~

浦野英樹REPORT VOL.104 2016.05

公的年金の配偶者格差 ~第3号被保険者制度 早急な議論を~

■第3号→第2号の配偶者のみ
国家資格者として公的年金に関わる社会保険労務士に「今の年金制度、早急に改善すべき点は何?」という質問で、もっとも多いだろう答えが「第3号被保険者」に関わる問題です。国民年金には第1号から第3号まで、被保険者の種別がありますが、第3号被保険者は、会社員・公務員である「第2号被保険者」の配偶者で、一定の収入以下の者が該当します。第3号期間であれば、保険料の負担はなく、かつ、基礎年金部分の年金受給額が増えることになります。では、第3号被保険者の何が問題かと言えば、配偶者が「第2号被保険者」でなくなってしまえば、本人も「第3号」でなくなってしまう点です。

■不公平、理不尽な負担感
一般的に第3号被保険者といえば、「専業主婦」が該当すると言われることが多いですが、「配偶者が第2号」でなくなれば、専業主婦であっても「第1号」被保険者となり、毎月16260円の保険料負担が発生します。配偶者が会社員だった時は、保険料ゼロだったのに、配偶者がリストラされてしまうと保険料負担が増えるということになります。同じ専業主婦でも、配偶者が「第2号」であるかによって、保険料に格差が生じる不公平、かつ、配偶者が仕事をやめたら負担が増える理不尽さを感じる人は少なくありません。

■シングルマザーにも厳しい
配偶者の離職以外に「第3号」から「第1号」に変わるもうひとつの大きな要因が「離婚」です。離婚後、就職して「第2号」となるまで、第1号被保険者として保険料負担が発生しますが、第3号被保険者の大半を占める女性は、離婚後の生活は極めて厳しいのが現実。公的なサポートが必要な時期に、公的年金に関しては、逆に負担が増えてしまうのです。

■公的年金の前提が間違っている
配偶者の離職や離婚後に第1号被保険者として保険料負担が増えてしまうという現象は、そもそも「第1号」は定年がなく、資産もあるといったような前提で公的年金の設計がなされている点に原因があります。しかし、現実には第1号被保険者は、無職やパート労働者が大半を占めます。今後の消費税率についての議論の中でも、「税と社会保障の一体改革」として、公的年金制度の矛盾点・不公平性を税の財源を活用しいかに解消してゆくかという視点からの議論も急務ではないでしょうか。