5月×日
ブックオフで『靴磨きの本』を買った。
帰り道にマックに入って、すぐに読み上げた。
100ページ程度の薄い本だったし、
靴の磨き方は結構知っているから、
斜め読みというか飛ばし読みをした。
マックの大きなテーブルの角の椅子で本を読んでいたら、
対角線上の席に女性が座った。
途端にコホンコホンと咳く。
喉をムッ、ムッと鳴らす。
コホンコホン、ムッムッ。
ハンバーガを齧る。
ハンバーガーを下に降ろす。
コホンコホン、ムッムッ。
ハンバーガーを齧る。
コホンコホンコホン。
ムッムッ。
ひっきりなしである。
これはいけない。
わたしは慌ててマスクをする。
とっとと本を読みを追えてお店を出たのだが、
夕方、喉がイガイガしてきて、
コホンと咳が出た。
続いてムッムッと喉から声を出していた。
あれれ。
コホンコホン、ムッムッ。
あのマックの風邪ひき女性と同じだ…。
あわてて洗面所に行ってうがいをした。
対処が早かったせいか、
それだけで済んだ…。
5月×日
昨日、マックで読んだ『靴磨きの本』を
インスタで紹介しようと思ったが、一晩立ったら気が変わった。
急遽『ハーディ・エイミスのイギリスの紳士服』に代えることにした。
著書は「女王陛下のデザイナー」といわれるように、
エリザベス女王付きのデザイナーでもある有名なデザイナーだが、
この本には男性スーツの歴史がさらりと描いてあり、
紳士服のことがすっきり理解できたような気がした。
が、このときМCのゆうきさんが『靴磨きの本』を見つけた。
「わたし、最近、靴磨きや鞄のメンテナンスを始めようと思って…」
というので、
インスタのライブではこのことを話題にした。
来週もゆうきさんが出てくれるので、インスタの後、
靴磨きレッスンをする約束をした。
靴を磨く男は紳士だ、という俗語がある。
ホテルマンは宿泊客の足元を見て、
綺麗に磨き上げられている靴なら安心した、というエピソードもある。
卜者とてホテルマンと同じようなもの。
相談者の足元をしっかりとチェックすることも大事かもしれない。
5月×日
なんだか今週は本の話題ばかりになった。
インスタで紹介した『ハーディ・エイミスのイギリスの紳士服』を
読んでいたら面白い文章にあたった。
著者のハーディ・エイミスは1909年の生まれだから、
わたしと40年近くの年齢差がある。
当然服装の趣味にも時代性が影響しているはずだ。
「わたしはセーターが好きだ」というミスター・エイミスは、
自分の好きな服装を本の中で開陳している。
《スーツを着なくてもいいときは、クリーム色のボタンダウンの天然シルクの
シャツに(当然ネクタイなしで)、一つ縒りのケーブル・ステッチがついたクルー・
ネック(襟のない丸首)のナチュラル・カラーのセーター、ダークカラーの軽めの
フランネルのズボン、カシミヤのソックス(もちろん、靴から上の部分はセーターと
同色か、またはズボンと同じグレーのウール・ソックス)、茶の子牛革の二十年物の
紐結びモカシン・シューズ、といった恰好が好きだ。…》
クルーネックとはボートをこぐ選手たちが着たことからネーミングされたらしい。
細かいことを云うなら、カシミヤのソックスはいただけない。
価格もそうだが脆弱な感じがするからだ。
わたしは自慢ではないが20年近く愛用している靴は何足も持っているが、
モカシンのようなやわらかな皮のものはない。
茶色の紐結びのシューズは1足あるが、モカシンではなくベロアかバックスキンだ。
ただ、ミスター・エイミスの好みのこのスタイルでは、
占い師としての身だしなみとしては失格かも知れない。
お洒落なおじさんと「卜者」とは哀しいことに一致しないからだ。