4月×日
「センセイ、相談があります」とМさんが来た。
こみいった話だが簡単に書くとこうなる。
両親が施設に入り、
2人のいなくなった実家にいつの間にか兄が住み着いた。
父親は認知が進行し…と、
大変な状態だというのである。
「どうしたらよいでしょう」とМさんは云うが、
こればっかりは弁護士に相談した方がいい、と諭す。
4月×日
芥川龍之介の有名な『歯車』。
右目にはあるはずのない半透明の歯車が現れだした主人公は
「いよいよ自分の最後の時が近づいた」と恐れながら日々を送る、
というものだが、この透明の歯車現象はわたしにもある。
十年以上もさかのぼるある夏の日のことだ。
図書館の帰りに渇ききった道路に突然現れたのが
「歯車現象」だった。
わたしの場合は歯車ではなく
、三角形のキャラピタ上の形で、
その三角形のキャラピタが光りながら回る…というもの。
芥川のように最後の時とは思わなかったが、
しばらく後、眼科で診察を受けると
「これは脳の問題だ。気になるなら紹介状を書いてあげよう」
と若い医師はわたしの目を見ようともしないで言ってのけた。
占い師の職業病か…などとも考えたが、
大間違いだった。
いま読んでいる本で、
この症状は閃輝暗点と呼ぶらしいということが分かった。
本にはこんな説明があった。
《視野の一部にギザギザ状の光の輪が見え始め、次第に広がるものの
数十分ほどで消えるのが典型症状で、頭痛を伴うケースが多い。
「眼性偏頭痛」とも云われる》
何ら特別珍しい症状でもないらしいので、
安心した。
眼科でも日常的に見られ、自然と治るものらしい。
とあったのでさらに安心した。
4月×日
司法書士の先生から電話があった。
個人的なことなのだが、相続でもめていることがあり、
お願いしてある案件に関してだ。
裁判所にお伺いをたてて調停の作業に入るから、
との報告だった。
占いの相談でも恋愛に関するものについで家族間の資産のトラブルが
増えている。
だから自然と法律知識も豊かになってくるのだが、
ま、それが自分の身に降りかかってくるとは思わなかった。
相談者には口を酸っぱくして助言していることだが、
トラブルが起きないように事前の管理をしっかりしておくことが一番だ。
今回のインスタで紹介する本は、
最初は占星術の本の予定だったが、
急遽第一次大戦の入門書に変えた。
「まえがき」を読んで「これは面白い!」と
思ったからだ。
占い師は己の直感に従うべきだ、
というのがわたしの心情。
ちなみに本のタイトルは
『日本人のための第一次世界大戦史』。
4月×日
今日はAさんのレッスンがあるのだが
Aさんが「あれ。センセイ、今日はタロットの日でしょ」と開口一番云った。
いやわたしのスケジュール帳に寄れば、今日はホクロ占いの初日の
はずだ。
基本的にホクロ占いは6回でまとめる。
第1回目は鼻。
Aさんの顔を見ると左の顎あたりに鮮明な黒い点がある。
ホクロだ。
地閣(ちかく)でもなし、承奨(しょうしょう)でもなし、もちろん比隣でもない場所だ。
名称を確定できない場所だが、
ここにホクロのある女優やタレントは多い。
わたしはひそかに「吉ホクロ」と呼んでいる。
4月×日
カルチャーセンターの事務局から連絡がある。
4月から始まる新しい講座の件、
従来の教室は半分ほどメンバーが入れ替わってスタートするが、
新講座もどうやら始まることになりそうだ。