〈9107〉川崎汽船の株価に見る今後の景気動向と株価予想 | ウツと株とプログラミング

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うつ病で引退して、株トレーダーに。銘柄選定プログラムから始めて、現在は自動売買(アルゴリズム取引)システムを開発中(*'▽')/

独自プログラムのシステム改修をしながら、少し今後の景気に関するファンダメンタルズ分析をしてみました。

 

 

少し表が見づらいねー。東京(大阪・名古屋・札幌を含む)証券取引所に上場している全個別銘柄について、各種最新情報を毎日更新して横断的に検索・閲覧・比較できるように一覧にしています。

 

今回気になったのは<9107>川崎汽船です。前日比がなんと+214円(+8.56%)です。時価総額が1兆9千393億円もある大型株でこの上昇率は目を見張るものがありますね。前日に25万円で100株(終値2,500円)を買っていれば、今日の夕方は27万1千400円になりました。

 

 

でね、日本の三大海運業者の値動きを比較すると、川崎汽船がダントツに上昇したんですよ。なんでだろう(´・ω・`)?

 

バルチック海運指数が上昇し、さらにコンテナ船運賃市況が足元で急上昇しているのが理由らしい。

海運系の指標は発表タイミングがちょっとスローです。


2020年頃からバルチック海運指数が急上昇したのは、コロナ禍により船便が停滞したのが原因。


そのまま2022年にはロシアによるウクライナ侵攻が原因で、荷下ろしができずに、港のそとで荷物満載のタンカーが滞留したのが原因ですね。

 

その後コロナが一服してバルチック海運指数が下落しました。ところがイスラエルによるガザ侵攻が始まり、これに合わせてイエメンが紅海の入り口を海上封鎖してしまいました。アジアと欧州・北米(東海岸)をつなぐ航路は紅海~スエズ運河~地中海経由が中心だったのですが、紅海が事実上海上封鎖されたために、船便は喜望峰周りの「かなり遠回りな」航路をとっています。


これにより船の燃料費も上昇し、運送日数も増えるのですが、船会社はこの分を運賃に価格転嫁するので、むしろ売上&利益に貢献するんですよね。基本的にコンテナ船荷は喜望峰周りになると地中海航路の80%しか積めないと言われていて、その分だけコンテナ運賃も上昇します。

 

直近のコンテナ運賃指数(CCFI)を見てみると、4月ころから急上昇していますね。機関投資家はここに注目して海運銘柄の利益上昇(好決算)を見込んでいる訳です。

 

ところで、そもそもコンテナ輸送というのは運賃のボラティリティが大きいので、各海運会社が独自に運用すると大きなリスクを抱えます。ということで、〈9101〉日本郵船(38%)、〈9104〉商船三井(31%)、〈9107〉川崎汽船(31%)の日本三大海運業者が共同出資してオーシャンネットワークエクスプレスホールディングス(ONE)という合弁会社を立ち上げ、コンテナ業務はこのONEで運用しています。このONEが2021-2022年に空前の利益を叩き出したわけですね。


2022年秋以降は欧米の強烈な金利引き上げで消費が低迷し、コンテナ貨物輸送は急減すると見られていたのですが、世界経済(特に米国経済)は思ったよりもしっかりしているし、イエメンのせいで喜望峰周り航路をとっていることから、コンテナ船需要がひっ迫して再びCCFIが上昇しているわけです。

 

なお、ONEの利益は日本三大海運業者が出資比率に応じて分配金を受け取ることになっています。

でね、一番出資比率が高いのが〈9101〉日本郵船なのですよ。ところがさっきも見た通り〈9107〉川崎汽船の株価がダントツに上昇しました。

 

 

これをみるとね、〈9107〉川崎汽船よりも〈9101〉日本郵船の方が株価が上がると思うんですよ。というか、当期純利益ベースならば〈9104〉商船三井の方が有望ね。

 

株探(みんかぶ)がいうように低PBRという切り口で攻めるならば、やっぱり商船三井や日本郵船の方が先に株価が上がりそうな気がします。利回りを見ても、さらにPERを見ても、そう。川崎汽船のアドバンテージがあるとすれば業績予想が「安定」になっていることだけですな。あるいは信用倍率が低いところに目を付けたのかな?

 

〈9107〉川崎汽船の株価が上昇したことに対しては納得です。でもね、〈9101〉日本郵船や〈9104〉商船三井がもっと上昇してもおかしくないと思うのですよ、ファンダメンタル的にはね。

 

なお、バルチック海運指数は世界の物流の根っこですから、この指数は世界景気の先行指標としても注目されています。バルチック海運指数が上昇するということは世界景気が良くなるのかなぁ? そうなれば、他の株価も上昇するかもしれませんね。

 

ちなみに、東京証券取引所に流入している資金の6~7割は海外機関投資家と言われており、主に欧州の機関投資家だと言われています。欧州機関投資家は世界に分散して投資をしているのですが、「中国の株価がヤバい」となると、その代替アジアとして東京市場に資金を回します。ただし、今後インド市場(現在資金が急増中)に流れ込むと東京市場の資金が引き上げられる危険性もあります。

※ただしインドのボンベイ証券取引所の規模は東京証券取引所の10分1程度しかありません。だから逆にインドSENSEXはまだまだ上昇する余地がある訳です。

 

東京株式市場が活況を呈するための最善のシナリオ(希望)は、

  1. まずアメリカの政策金利が下がる
  2. 次に日本の政策金利が上がる
  3. そして欧州の政策金利が下がる
という流れです。米国政策金利が下がれば、米国株式市場が活況化し、この刺激を受けて日本の株式市場が活性化されます。現在の日経平均株価は米ドル建てで見ると(円安ドル高のために)ジリ貧です。でも米国政策金利が下がれば、日米金利差の縮小を通じて自動的に円安は是正され、ドル建てで日経平均株価は急上昇します。

また、欧州の政策金利が下がれば、円高ユーロ安に向かうので、欧州機関投資家の資金がどかーんと東京市場に流れ込んでくることになります。ちなみに過去5週間の海外から東京への資金は支出超過が続いています。これが5月下旬~6月末の日経平均ヨコヨコの主要因です。
 
もし日米あるいは日欧の金利差が縮みそうだと海外の機関投資家が考えた場合は、一気に日経平均(TOPIX)が上昇するかもしれません。いわゆる「夏枯れ」は「7月か8月に起きる」というアナリストもいて、「7月に株価が上昇すると、8月は落ちる」「7月に下がると、8月は持ちこたえる」というセットなのだそうです。まだ7月が始まったばかりなので予断は禁物ですが、ひょっとすると今年は「7月に上がって、8月に落ちる」パターンかもしれません。

※ちなみに、貿易(輸出/輸入)が絡む企業は今年度のドル円為替で141-144円を前提に決算予想を出しています。既に1Qが終わったのですが、この期間中は150-160円で推移しました。しかもこの期間のコンテナ運賃指数は想定外の高値です。海運や輸出系企業の1Q決算はかなり好成績が見込まれます。7月中に株価がジリジリと上昇して、8月の決算発表と同時に「織り込み済み」という理由でドカンと下落する予感もします。