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認知症の利用者さんが多くいる中で、
一緒に月日を過ごしていけば、
ある時、ふと気づくのです。
この方は、かなり進んでしまったのだな・・と。
現在、最もそれが顕著にわかる利用者さんがおります。
その方は、うちの施設を初めて訪れた際は、
利用者様というかたちではありませんでした。
自ら一人でタクシーを使って来所されました。
その理由が、施設を利用されているという
昔の知人に会うためという理由でした。
ひとしきり、お話を楽しまれていたようですが、
その後、久しぶりの再会を果たされたその方も、
友人と会えるからということで、施設を利用することとなりました。
ですが、本当は、家族側でも、勝手にどこかに行ってしまったり、
頑固な性格のため、外に気晴らしに出したいという希望があったようでした。
一度、他の施設を体験されたらしいですが、見事に失敗したそうです。
「しっかりしている私があんな呆けた人達と一緒にされたくない」
との理由からだそうです。
ですが、今回、友人の方がいるということで、そこをきっかけとして、
その方は、うちの施設を利用するようになりました。
初めは、週に1度、そこから2度と、少しずつ増やしていきました。
今では、ついに毎日となっています。
最初に、何曜日は行く日ね、と理解されていましたが、
やがて、日にち感覚がなくなり、
家族側は、気づかないなら、もっと行かせられると思い、
少しずつ、日数を増やしていったのでした。
当初は、仲の良い友人の方に合う目的でしたが、
しだいに彼女の中から、友人の重要さは薄くなってきたようでした。
そして、今では、友人の方の名前を口にされたり、
姿を探すことはなくなりました。
施設を利用し始めた頃は、連絡帳に記載されている自分に関する記述を
何度も食い入るように見られていたということでした。
そこに、自分が失禁等の失敗したことが記載されていた場合は、
かなり気落ちしてしまったらしく、家族の方にも、
何かあった際は、口頭で連絡してくださいと、
話を受けたことがありました。
あれほど、何度も読み返していた連絡帳も、
今は関心もうすれ、ほとんど開くことはなくなったようです。
身に着けていた眼鏡もいつの間にかなくなりました。
ただ、最初の頃から手元においていたバッグだけは、
離さずに側に置かれています。
同じことを何度も話したり、過去に運動の選手をしていたという
栄光の日々を、何度も職員や周囲の方に話しきかせていました。
この方には、こだわりがあります。
自分の座る席には、執着が強いのです。
毎日、来られていつも同じ場所に座られています。
うちの施設では、特定の座る場所は決められていませんが、
いつしか、あの席は彼女の席となってしまっていたようでした。
誰かが、その場所に座っていると、席を空けるようにと、
問いつめている姿もありました。
本人が執着するものが、いつの間にか変化していました。
そうした様子を、快く思わない利用者さんもおります。
頭はしっかりしている方で、彼女の行動や言動がすべて
気に食わないといった様子で、常に彼女の悪口を周囲に漏らしています。
職員が気づくと、話の流れを変えたり、本人にわかってもらおうとしましたが、
生理的に嫌、というものも中にはあるのかもしれません。
なら、近づかなければいいのではと思いますが、
仲間を作り、一緒に彼女をからかうことを楽しみにしてしまっている節があります。
あぁ・・・これが、いじめってやつなんだな。
職員も時にたしなめますが、その方も利口で、
職員に取り入ろうとする様子があり、わかってもらうのはそう簡単ではないようです。
送迎で、どうしても2人が一緒になる時があり、
そうした時は、大方車内で言い争いがはじまり、
悪口の言いたい放題になることがあるそうです。
職員もげんなりしていますが、周囲の利用者さんもまた
げんなりしてしまっているところもあるらしく、
この頑固な利用者さんに、認知症の方に対するいじめをやめるようには
どうしたらいいのかが、今後の大きな課題の一つとなっています。