デジタル化が進み、インターネットを利用することが普通となり、オンラインサービスは百花繚乱。政府もマイナンバーの普及に躍起です。
高齢者にとってもインターネットやデジタルは避けては通れません。
インターネット利用機器状況をチェックすると、個人全体の平均がスマートフォン68.3%、パソコンが50.4%に対して、60歳~69歳のスマートフォンは64.4%パソコンが50.0%と全体平均に近い。流石に70~79歳になるとそれぞれ35.6%、31.8%と低くなる。今やスマートフォンの利用率がパソコンを上回っているのも1つの特徴です。(総務省 令和3年公表「通信利用動向調査」)。
デジタル庁も「デジタル化の実現に向けて『誰一人取り残さない』」と宣言しています。
が、現実にはスマートフォンなどの操作に不慣れや利用上の不安を感じて、十分機能を使いこなせていない人が少なくありません。その傾向は高齢者ほど顕著と思えます。
筆者が50代後半の会社員だった頃と思いますが、それまで共有であったパソコンが各人に1台ずつ配布されました。それまでは、間違った操作で他人の保管したデータを消去、或は機器を破損させるのではないかとおっかなびっくりでしたが、その気分からは解放されました。誤っても自己管理責任で済みますから。
パソコンのインストラクターから指導を受けることになりましたが、教えてくれたことは操作手順ばかり。「なぜ、どうして」を説明してくれませんからトラブル時に応用が利きません。
他方、新入社員の頃,業務命令でIBMにプログラミングの講習に行かされた時との違いを思い出しました。
IBMでは、「コンピュータの仕組み」「データは全て0と1でできている」「プログラムが動作する仕組み」「データ・情報・知識の違い」等を教わったような気がします。その後のコンピュータを理解する基礎となりました。
シニア社会学会でも「ICTによる高齢者生活支援」を掲げています。かってのインストラクターのように「スマートフォンの操作手順を教えるだけ」に陥ってしまわないかと気になります。
先の総務省のデータでは、流石に筆者がパソコンを初めて手にした時のような不安は無いにしても、「個人情報やインターネット利用履歴の漏洩」「コンピュータウィルスの感染」「架空請求やインターネットを利用した詐欺」等利用上の不安が一杯のようです。
操作手順ばかりでなく「コンピュータやインターネットの仕組み」「オンライン配信や検索システム」「オンラインサービスと利用の仕組み」等々に加え「ITで何ができるのか」「情報とは何か」といった基本的なことも教えて、不安感を一掃すべきではないでしょうか。
また、昔話になりますが、コンピュータの黎明期に花王のコンピュータ情報管理(?)責任者にインタビューした際、「コンピュータシステム利用を社内に普及させようと思えば、最低レベルの人に合わせ、その人たちのレベルアップ教育をしなければなりません」と教えられました。
その言葉は今も大事な教訓として記憶に残っています。
「ICTによる高齢者生活支援」でも心しなければいけない事柄ではないでしょうか。