自分の年齢にハッと驚くことがある。そうか、自分もこんな爺いだったんだと。
周囲にもっと高齢で元気な仲間が多いから、つい、自分の年齢も忘れてしまう。
そんな時、「そうだそうだ!」ともっともらしく応援してくれる本がある。
かなり昔に求めた本で、奥付けを見たら2006年10月25日第一刷り発行とあるから約15年前である。
エルコノン・ゴールドバーグ著 藤井留美訳『老いて賢くなる脳』で日本放送出版協会の刊行。
帯に認知神経科学の第一人者、待望の初邦訳とある。
気になる時、本棚から取り出して読み返している。積読いやつまみ読みの類かも知れない。
居眠りしながらの読書でも「はじめに」はきちんと読む。『遅読家のための読書術』(印南敦史)のなかにも
「『はじめに』とはその本の目的や要約などが書かれた『導入部分』のこと。どんな文体で書かれた本で、
なにを目指して進んでいく本なのか、全体のノリをつかむうえでも、ここは決定的に重要です。」とある。
読む価値があるかどうかは「はじめに」で判断できる。著者が主張したいポイントと全体像がわかる。
そこで漸く「目次」を開きどの章に力点があるか見当をつけて読み始める。
この本の「はじめに」を読むだけで嬉しくなってくる。高齢者でも高度な専門的知識を駆使して、或いは芸術や科学そして政治の世界でも活躍している人は多い。
その根拠を脳の働きを探求することで明らかにしてくれるからだ。
さて、本題に帰る。
老いていく体と共に脳も老化していく。それは確かなことだ。
重量と体積は小さくなる。脳組織が縮んでいく。しかしがっかりすることはない。
「脳は老いてこそますます盛んになる」とゴールドバークは主張している。
「頭がボケてきた」「分別がなくなって来た」は従来老化現象の一つと考えられてきたが、それは過去の話であるという。
彼は脳の左右の違いに仮説を立て研究を進めていく。
「右脳と左脳は、この学習という普遍的なプロセスで果たす役割が違うのではないか」
彼の得た知見は「年齢が高くなるにつれ、右脳は、左脳より速く老化していく。」
「左脳は生涯を通じて、右脳より精神活動の恩恵を多く受ける。」
だから、左脳の働きで年をとっても知的生産性や認知能力は十分発揮できるし、頭の冴えは色あせない。
脳の神経細胞(ニューロン)は使えば使うほど増殖する。脳も鍛錬すればするほど元気になるというわけである。
まだまだ人工知能には負けないぞ! という気になってくるのがこの本のご利益である。