「お母さんが人間だって気づいてますか?」
そんな問いかけから始まるこの本、保育園義務教育化は古市憲寿氏の著書です。

ちなみに私は、「もしかして自分の周りにいる人たちも自分と同じように色々考えてるのかもしれない」とはっきり自覚したのは小学校高学年の頃だったと思います。
あまりにも驚いたので、いまでも覚えてるほどです。

この本には、お母さんになったとたん世間の目は厳しくなり、一般の人以上の規律が課され、まるでお母さんには基本的人権が認められていないようなのだと書かれています。
仕事や旅行、公共交通機関での移動なんかの普通の人が当たり前にしていることが、お母さんになると非難される。

出産、育児費用は高額で、保育園は「日本死ね」と言われるくらい見つからず、子育てしにくい労働環境…
「まるで一人っ子政策をしていたのかのよう」だと。

日本は世界でもかなり深刻な少子高齢化国ですが、少子化対策を真剣にしないと「極めて恐ろしいことになる」とフランスの経済学者ピケティも言っているそうです。

その対策の一つとして、保育園義務教育化を提案しています。
義務と言っても、毎日預けてもいいし、週に一回数時間だけでもいいという緩い「義務」だそうで。
保育料はもちろん無料。

幼児教育に投資することは、他の何に投資するよりも社会全体のレベルを上げることにつながるそうです。
そして良質な乳幼児教育を受けた子供は、将来の犯罪率が低く、収入が高くなるという研究結果も出ているそうです。
ただしその教育というのは、勉強という意味ではなく集団生活で学ぶ非認知能力というもの。

子育て支援は経済成長にもつながるし、育児の孤立化も防げるし、「いいことずくめ」だとか。

フランスでは公立の幼稚園は無料なので、子供達は3歳からはほとんど皆幼稚園(朝8時ごろから夕方5時ごろまで)に通っています。
だからと言って社会全体のレベルが高いかと聞かれると、全くそうは思いませんが、育児の孤立化は防げているだろうし、女性が仕事をしやすい環境にはなっていると思います。
出生率も先進国では珍しく高いし。

日本の幼稚園が無料になったからといって、少子化に歯止めがかかるかと言えばそうではないかもしれないけど、試してみる価値はあると思わせてくれた本でした。
文体も堅苦しくなく、サラッと読めて面白かったです。


今日の一首

母親に厳しく刺さる世間の目もう少し優しく見守れないのか