<写真はイメージですが、私の撮影した老人ホームです>
雨の夜、夜勤をしていると
普段の夜とは少し違う雰囲気が漂います。
私は、そんな雰囲気が大好きです。
さて、以前、
私が担当したご相談者様からこんなお話をお聞きしました。
お母さんに先立たれ、一人になったお父さんが自ら
「子供の面倒にはなりたくない」ということで
老人ホームに入居になりました。
ご相談者のお嬢さんには
「家庭のことにまったく協力的でない」
「社交性があるとは思えない」
「とにかく無口である」
というお父さんが、老人ホームで、
「本当にみんなと共同生活が出来るのだろうか」
という心配があったそうです。
そんなことを考えながらも、初盆が終わった9月に、
老人ホームにご入居になりました。
秋口になり、冬物の衣類を持って訪問しても
父は、「ああ」としか言わずに、
「『ありがとう』くらい言えばいいのに」と思われたとか。
翌年の元旦はお嬢様の家族と過ごされたそうですが、
すぐにホームに戻られました。
ホームの方とは、
月に一度面談があります。
「迷惑をかけていないですか」と尋ねても
「そんなことはありませんよ」と返事がきます。
そして迎えたバレンタイン。
「誰にもチョコをもらえないのは寂しいだろうから」と
お孫さんと一緒にプレゼントを持って行ったそうです。
すると、
ベッドの横のサイドテーブルに、
たくさんのチョコレートが。
「あれ、これもらったの?」
すると
「ああ、でもこんなに食えないから、あいつに供えてやれ」
「あいつ」とはお母さんのこと。
仏壇はお嬢さんの家にありました。
「なんだ、せっかく持ってきたけどいらないか」
とチョコを見せると、
「それは置いて帰れ」と相変わらずのぶっきら棒。
自宅に戻り、その日の夕食後、
お仏壇に供えたチョコをリビングに持ってきて
家族で食べようとしたところ、
包みの中からメッセージが…。
「いつも、気をつかってもらってありがとうございます」
どうやら、チョコの一つ一つに入っている様子。
「車いすのご入居様を優先して下さり、感謝しています」
「〇〇さんが出来ることが増えてきたことを伝えてもらい、本人も喜んでいました」
「『あと10秒』という言葉、ずっと忘れません」
どうやら、父は、スタッフさんに感謝されているようだ。
あの父が。
後日、ホームに行った際、スタッフの方に聞いてみると
「そうですよ。何事も全部最後ですよ」
ベテランのヘルパーさんが、これ見よがしに父に言う。
「『俺は最後が良いんだ』とおっしゃるけど、
介護が大変な方を優先して下さっているんです。そうですよね」
何も言わない父。
ヘルパーステーションで、「10秒」と書かれたメッセージのことを話すと
一人の若い女の子がやってきた。まだ10代ではないのか。
「私が、お水をご入居者様にかけてしまったことがあったんです。
その時、『すみません』て頭を下げたんですよ」
女の子が続ける。
「顔を上げようとした私にだけ聞こえる声で『あと10秒』て言って下さったんです」
顔を上げないままでいたら
「そのご入居者様に『もういいわ』て言ってもらえたんです」
シフトの関係か、そのヘルパーさんには会ったことがなかった。
「あの子、それからすごい頑張るようになったんですよ」
去って行った女の子のことをベテランのヘルパーさんが称えた。
そんな話を私にして下さいました。
私も、とっても嬉しくなりました。
老人ホームは、(ご入居する立場の)人と(スタッフとして働く立場の)人の集まる場所。
人は
人に傷つけられるけれど
その傷を癒してくれるのも
やっぱり
人。
関係性が近いからこそ
喜びを掛け算に出来る
悲しみを割り算に出来る
素敵な場所。
改めて、そんなことを思い出した、雨の夜でした。
本日もお越しいただきありがとうございます。
もちろん、良いことばかりがあるわけではないけれど
それは、どこでも同じこと。
自分を認め、相手を認め、その場を認める。
これからも、
今度はあなたに、
こんな物語が生まれるように
楽しんでいきたいです。
