TRRRRR…

風呂でも入ってるのかな。
やっぱ、出なさそうだな…



「…はい。」

電話を切ろうと思った所に、ようやく繋がった。

「良かった。出てくれないと思った。」

「何?なんか用?」 

「特に用ってこともないけど、元気してるかなーって」

「そう…」

「用がなきゃ電話しちゃダメ?」

「え?べつにいいけど…」

そっけない受け答えだけど、
照れ屋な健くんのことだから、
これでも喜んでるんだろうなと予想がつく。



それに、今日は特別な日だから余計に。



「健くん、ご飯食べてる?」

「食べてるよ。」

「何食べたの?」

「りんご食べたよ。」

「りんごはご飯じゃないでしょ(笑)
 ちゃんと食べないと。」

「母親みたいなこと言ってんじゃねえよ(笑)」

・・・・・・ 



そう、今日は、

母親みたいなこと言いたい日。
健くんを思いっきり甘やかす日。
健くんを一人にしない日。

俺の中でそう決めた日。


「岡田…ありがとな。」

健くんに言ったことはないけど、
俺がこの日に電話する理由を健くんは知ってる。

「何が?」

意味ないけどとぼけてみる。

「岡田は、そんな気ぃ遣わなくてもいいんだぞ。」

「違うよ。俺が健くんの声聞きたかっただけだから。」

我ながら物凄く臭いこと言った。
でも、健くんは…

「…ありがと。俺も…岡田の声が聞きたかった。」

雨音が穏やかで優しくなると共に、
不安な健くんの心も凪いで素直にしてくれる。

出来ることなら、
今すぐ健くんのマンションに向かって、健くんを抱きしめたい。
「好きだよ。愛してる。」って言いながらキスの雨を降らせたい。
1つのベッドで2人でくっつきながら眠って朝を迎えたい。

そんな気持ちになってること、健くんは知ってるだろうか。

それくらい、今日の健くんはほっとけない。