15年くらい前、日本全国でゴルフ場の倒産が相次ぎました。
僕の大好きなゴルフ場も同様に倒産してしまいました。
そこは、今、太陽光発電所になっています。
倒産するにも色々と理由があります。
基本的な理由は経営悪化ですが、経営悪化にもいろいろなタイプがあります。
売上の減少による経営悪化が多いとは思いますが、ゴルフ場の仕組みで特殊なものがあります。
預託金倒産
「よたくきん」
これはゴルフ場ならではの倒産理由ですが、わかりやすく言うと「手形」の不渡りのようなものです。
闇?も含めて、僕が知っている限りでご説明します。
先日も記事にしましたが、ゴルフ場を作るのに最低でも70億かかります。
もちろん銀行に借り入れをして作ります。
日本のゴルフ場のほとんどはバブル中にできたものがほとんどです。
そして、ゴルフ場を作ったとします。
バブル期なので、お客様がたくさんきます。
すると、お客様が多すぎて予約が取れない、という事態が発生します。
そこで、お客様の中から「特権」を欲しがるお客様が発生します。
特権とは…優先して予約が取れる権利です。
だって、ゴルフの大ブームなので。
そのお客様のニーズに対応するために、ゴルフ場はメンバーシップの仕組みを作ります。
イギリスなどの名門コースを真似して。
そのメンバーになるためには、「会員権」を持っていないといけません。
この「会員権」の仕組みですが、あるゴルフ場の会員権が100万円だったとします。
どういう仕組になっているのかというと、
100万預けて
会員権を
持つことができる
という仕組みです。
なので、正確に言うと、会員権を「購入」するわけではありません。
確かに会員権を手に入れるためには、事務手数料として「◯十万」払わないといけませんが。
会員権自体が100万するわけではありません。
そして、この100万円ですが、「10年後に返却します」とか期限があります。
これが「預託金」という仕組みです。
ここからが問題です。
あるゴルフ場ができました。
会員権がたくさん売れます。
このゴルフ場では、1,000人のメンバーができたとします。
これだけでゴルフ場が持っている預託金は
100万円✕1,000人=10億円
ということになります。
そして、ここからも問題です。
この預託金を使って、ゴルフ場は設備投資などに回しました。
あるゴルフ場は母体企業の設備投資に回したりしました。
この時代はバブルなので、儲かることが確定していたので。
10億くらいすぐに返せる見込みでした。
で、
バブル崩壊
僕が高校生のころ
この預託金ですが、もちろんゴルフ場にはありません。
プレー代もバブルのころの3分の1程度になり、ゴルフ場の売上はガンガン落ち込みます。
その日暮らしが精一杯なような状態になってしまいます。
さらには、借入金の返済もあります。
苦しい状態です(泣)
この苦しい状態が続くことで、母体である親会社から資本金の増資をすることで運転資金を注入したりするゴルフ場も現れました。
速攻で倒産したゴルフ場もありました。
なかには建設途中で止めたゴルフ場もありました。
それでもどうにかどうにか経営を頑張っているゴルフ場が多くありました。
本当にその日暮らしのような状態です。
そんな中、恐怖の日が足音を立てて近付いて来ます。
そうです。
預託金の返還期限
キャー!!!
ゴルフ場はかつかつの状態で経営しているのに、さらに上乗せでやってくる預託金返還。
「もう…、無理…」
ということで、預託金を返還できません…と言って倒産するのが「預託金倒産」です。
こうなると、このゴルフ場のメンバーさんが持っている会員権は紙切れに変わります(泣)
100万円が紙切れですよ?
泣けますよね…
これは誰が悪いのか、というと、ゴルフ場でもなく、どちらかというと僕は時代が悪いと思います。
あのバブルという狂った時代を元にしたビジネスモデルがおかしかったと思います。
その結果、預託金倒産したゴルフ場はアコーディアなどに買収されてしまいます。
だって、預託金さえ払えたら、営業することができた=人気のあるゴルフ場ということなので。
さらにアコーディアなどはこの会員権を持っているメンバーさんをそのまま引き継いだりします。
もちろん預託金は0円ですが。
ちょっと安く回れるなどの特典付きです。
このようにして、ゴルフ場は倒産してしまいます。
さて、ここからが闇というか実情というか…(汗)
先ほども申しましたが、ゴルフ場が倒産するとメンバーさんの会員権は紙切れになります。
そうなると、メンバーも困るといのが事実。
ゴルフ場も倒産したくない。
となるとどうなるのか…
メンバーさんに返却期限を
先延ばしにしてもらう
ということになります。
実際、僕が知ってる範囲で話をすると、ゴルフ場の会員権の営業担当者が、メンバーさんの家に伺います。
そして、話をします。
会員権の購入ありがとうございます。
しかしながら、約束の期限に預託金を返却できる見込みがありません。
このまま預託金返還をメンバーさんにされてしまうと、ゴルフ場は倒産してしまいます。
倒産すると会員権は紙切れになってしまいます。
ゴルフ場としても、それは大変心苦しいです。
そこで、提案ですが、5年、返却期限を先延ばししてもらえませんか?
と。
卑怯と思うかもしれませんが、ゴルフ場もこれが精一杯できることです。
そしてもちろんですが、メンバーさんみんなに「5年待ってほしい」というと、5年後にまた同じことになってしまうので、あるメンバーには「3年後」、他のメンバーには「5年後」などと、返却期限が一斉に来ないようにお願いして回ります。
メンバーからすると、100万円が紙切れになるくらいなら3年待って100万帰ってきてくれたほうが絶対いいので、そうするしかありません。
でも、中にはいらっしゃいます。
知るか!
期限どおり返せ!
という、メンバー。
こういう人が悪いとは僕は全く持って思いません。
だって、約束…というか、契約なので。
ここでゴルフ場は考えます。
このようなことを熾烈に言ってくるお客様だけ預託金を返却したとします。
すると、この方は他のメンバーに言います。
「ごねたら返してもらえるぞ」
と。
すると、他のメンバーも「返せ!」と言い出します。
そのため、ゴルフ場はそう言われても、基本的に対応しません。
でも、そのようなことを言うメンバーがかなりの人数いると…もう倒産一直線です(泣)
実際の話を聞いていると、メンバーさんのところに伺うゴルフ場の従業員の方も半分脅しのような状態になってしまうようです。
「返却してもいいですが、そういう方が多いと
弊社は倒産して、会員権は紙切れになってしまいますよ」
と。
企業の生死を分けた交渉になるので、そこまでになってしまうのもわかりますが…本当にこの預託金制度はゴルフ場の闇ですよね…
もう預託金倒産の波はほとんど終了したと思うので、もう大丈夫かな、と思って記事にしてみました。
一般のゴルファーはこういう事情とか、知らないと思うので。
今日もプレーのお役に立てない記事でした(いつも?)