極真の歴史・表の大山倍達、裏の黒崎健時/名王者金子繁治さん死去す/他 | 舟木昭太郎の日々つれづれ

極真の歴史・表の大山倍達、裏の黒崎健時/名王者金子繁治さん死去す/他

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[随感]大雪、交通事故、廃棄処分食品、SMAP
 ~何処か可笑しい日本!~
 ~安さに釣られるな~
 ~SMAPの独立問題~
[哀悼] 名王者金子繁治さん死去す
 ~昭和30年代伝説の東洋チャンプ~
 ~故人との忘れ得ぬ出来事~
[歴史] “表の大山倍達、裏の黒崎健時”の謂われ
 ~極真会館は意外な金で建てられた~
 ~報奨金3000万が原資~
 ~泥水を啜った先達の恩を忘れまい~
[今週の俳句もどき]
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[随感] 大雪、交通事故、廃棄処分食品、SMAP 
   
何処か可笑しい日本! 
 
暖冬が一転し18日は雪になった。その後は雨に変わり道路はぐちゃぐちゃになり、流石の私も早朝のウォーキングを見合わせた。何時かは、どかんとくると予想していたので、驚きはしないが、都心ではたちまちパニックに落ち入った。文明に慣らされた民が脆弱になった証といえるかも知れない。雪国の人を御覧なさい。
 
長野県軽井沢で15日未明起きた、スキーツアーの大型バスが道路脇から転落し乗客乗員14人が死亡した事故は、唾棄すべき人為によるもので、中でも将来性ある大学生12人がその犠牲になったのは、なんとも痛ましい。
 
点呼なし、無届ルート変更あり、シートベルトせず、のイーエスピーは違法経営のデパート、こんなツアーバス会社が有ったとは、我々もよくよく用心しなければならない。激安などと謳う商品は、何処かに怪しさが潜んでいると、疑ってかかる必要がある。それにしても、運転手も助士席の交代運転手も一緒に居眠りしていたんだろうか。 
 
     
安さに釣られるな 

激安といえば、COCO壱番屋が破棄を依頼したトンカツなどの食品が、廃棄業者の手で大量に横流しされて、食堂や弁当等に回っていたという事も、この度たまたま発覚したが、過去に大手を振ってまかり通っていたのではと訝しむ。
 
当然一度や二度、私もその類をどこぞの安食堂で食しているだろう。まあ、食べても即体調が悪くならないものだから、事件に到らないのが横流し業者の付け目だ。廃棄処分の食品だから安いの当り前なのだ。さように激安食品は先ず疑い!安さに釣られて衝動買いしてはダメだ。 
 
 
SMAPの独立問題 

SMAPの解散は日本の一大事の如く報道されている。そうかな~とオジサンは、納得しないが。だってメンバーは総じて40才半ばの、謂わばアイドルにはほど遠いし、畢竟、いつまでも彼等5人で踊って歌うグループなんておかしなものだ。
 
メンバーそれぞれが独立して、活躍するのが自然の理というもので、中世のギルド制じゃあるまいし一プロダクションが一生彼等を縛ること事体可笑しなものである。要は今度の問題は、会社内部の権力闘争みたいなもので、オジサンには、ピントこない騒動だ。 
 
  
[哀悼] 名王者金子繁治さん死去す 
 
昭和30年代伝説の東洋チャンプ 

金子ジム名誉会長・金子繁治さんが1月2日、進行性核状性まひのため都内の病院で逝去した。享年84才。お通夜、告別式は既に目黒区の教会で執り行われている。金子さんは、現役時代から敬虔なクリスチャンだった。亡くなったことを私が知ったのは、つい最近のことである。
 
日本人初の東洋フェザー級王者として活躍して、戦績65戦54勝(33KO)10敗1分け。その強打は”魅惑のパンチャー”と賞讃され、昭和30年代の日本ボクシング界を牽引し、スター的存在であった。
 
伝説の逸話がある。中西清明とのハードパンチャー同士の対決は、試合場となったメモリアルホール(旧国技館)の入場を待つ列が両国橋まで続いたという。因みにこの両雄対決は、金子の4戦全勝だった。
 
また後に世界チャンピオンとなるフラッシュ・エロルデ(比)とも4戦4勝と東洋では敵なしの強さを発揮したものの、当時は世界挑戦のチャンスがなく、ついに世界のベルトには届かなかったのは惜しまれる。
 
ノンタイトルで対戦した当時の世界王者サンディ・サドラー(米)には6回TKOで敗れ、その後網膜剥離を患い引退した。金子ジムを開設してからは、村田英次郎(世界バンタム級1位=王者ピントールに引分け)らを育てた。(日本名ボクサー100人=日本スポーツ出版社参照) 
 
  
故人との忘れ得ぬ出来事 

私の忘れえぬ出来事は弊社が「日本ボクシング不滅の激闘史」(DVD3巻セット収録時間11時間=TBS)の制作をテレビ局から依頼され、金子会長に現役当時の映像の提供をお願いしたら、快く出してくれたこと。「舟木さんだから出すんだよ」と言われたときは、ホロリときた。
 
白井義男VS.ダド・マリノ(比)の大事に仕舞いこんでいた記念すべきタイトルマッチのポスターも、出してくれて現会長健太郎(長男)さんに「我々子供にも見せたことがないのに」と驚かれた。
 
ひっそり神に召された金子繁治さん、お世話になりました。安らかにお眠りください。アーメン。 
 
  
[歴史] “表の大山倍達、裏の黒崎健時”の謂われ 
 
極真会館は意外な金で建てられた 

先般お約束した「表の大山倍達、裏の黒崎健時」(真樹日佐夫さんの言)その譯について、少々お話いたしましょう。あくまで談話を元にしたものなので、時間を経て記憶に留めない部分が多少ある事をお許し願いたい。
 
今回は極真会館本部(豊島区西池袋)の建設資金が果たして何処から出たかという話で、これが「表の大山、裏の黒崎」に大いに関係がある。尚、同館は現存するも大山総裁没後、極真会館は分裂して、その機能は失われている。
 
会館新築の原資は、豊島区内のタクシー会社の労働争議のスト破り報奨金(昭和30年代)という途方もない裏金であった、と知ったら極真関係者ならずとも驚くであろう。件のタクシー会社は、労働組合の長期ストライキに困り果て、人を介して「スト破り」を大山道場に依頼してきた。
 
経営者は、力ずくでストライキを蹴散らす他はないと考えた譯だ。そこで白羽の矢が立ったのがケンカ空手で名高い大山道場(後の極真会館)で、当然裏社会の仕掛け人となれば、黒崎健時師範代(当時)を於いて他に人はいない。
 
この話に先ず私が思い描いたのは、幕末の新撰組、道着に身を包んだ屈強な空手家が、ストの真っただ中に殴り込み、バリケードを張る組合員を片っ端から蹴り倒す、そんなシーンだ。
 
差に非ず。黒崎師範は単身敵陣へ乗り込んで労働者側と直接対峙したようだ。同時代に大山道場の内弟子だったM氏も、先生はこけおどしに弟子をぞろぞろ連れて行くような人じゃない、と証言している。
 
確かに昭和30年代のスト破りに、やくざが狩り出されるなどの暴力沙汰は珍しいものではなかった。「やくざに依頼するか」という相談も事実あったと、黒崎先生はいった。民主主義はいまだ途上にあり、無法が幅を利かせたそんな時代だった。 
 
 
報奨金3000万が原資 

黒崎先生は、独特の低音、本来ならいきり立つような場面でもときにユーモアを交え相手の心に訴える、話術のプロだ。容貌(我愚妻は黒崎先生は新選組の近藤勇によく似ているという)で威嚇して、話術で説得する。私はそのような場面を幾度も目撃している。
 
粘り強く交渉して「どうだね、この辺で手を打たんかい、悪いようにはしない。このままストを遣っても一銭にもならないよ。それでも続けるなら私にも考えがある。」硬軟合わせ、解決しなければ、テコでも動かない態度で辛抱強く交渉に当たったと思われる。これはあくまで私の推測だが。
 
黒崎先生は成功談をくどくど自慢するような方ではない、聞いてもしばし緘黙(かんもく)、暈(ぼか)す。いま確かめようにも病床にあり叶わない。兎も角もその成功報酬が今日の金額で何んと3000万相当だったという。
 
このお金が極真会館新築原資になったというわけだ。当然経営者から強引に毟(むし)り取った金だろう。黒崎先生だ、いずれにせよ、最後の詰めは怠るまい。
 
あるとき黒崎先生は、会館建設の金はオレが用立てたんだ、人の苦労も知らないで、と私に漏らしていたから、あるいはスト破りは簡単なものではなかった、かも知れない。
 
それを聞くまで私は、極真会館は「THIS IS KARATE」(大山倍達著=日貿出版)本の売り上げ印税で建てたビルと信じていた。大山総裁も「キミー、このビルは日貿が建てたなんていう奴もいるんだよ」と相好を崩して私に語っていたからだ。 
 
 
泥水を啜った先達の恩を忘れまい 

こうして、それまでは立教大学の裏手にあったバレエスタジオを借りての大山道場は、晴れて自前のビルを池袋に持つことができ、組織の名も「極真会館」と改めいよいよ世界の極真空手として、飛翔して行くのだ。
 
蓮は泥を肥料に美しい花を咲かせる。極真空手も泥水を啜った先達がいたから花と開いた。黒崎先生の恩を決して忘れてはなるまい。この項で私はそれを述べたかった。
 
「偉大なる黒衣(くろこ)に徹した鬼の黒崎」もやがて大山館長(当時)と袂を分かち、キックボクシング目白ジムを創設して、藤原敏男をして”ムエタイ500年の王座”に君臨させ、他にも大沢昇、島三男ら不滅の格闘家を次々生み出した。
 
更に劇画作家梶原一騎先生と組んで猪木×ウィリー戦を実現させるなど、名実ともに「表の黒崎」は”鬼の黒崎”としてスポットライトを浴びることになる。
 
さてその大山総裁と梶原先生は「空手バカ一代」の蜜月を経てある時、金銭の齟齬で仲違いとなるが、ここに再び「裏の黒崎」が大山総裁の使者として登場する。この話はまた後日に。 
 
    
[今週の俳句もどき]
 
大雪や世俗の塵を洗ふ哉
  
昭太郎
 
 
大雪の朝の住宅街の通り 
  
  

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