私のノーベル賞雑感/他 | 舟木昭太郎の日々つれづれ

私のノーベル賞雑感/他

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■私のノーベル賞雑感
 ~村上春樹作品の評価~
 ~村上文学はミステリーロマン~
 ~中村教授と本田圭祐~
 ~ノーベル平和賞のマララ少女~
■秋色濃し

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私のノーベル賞雑感
村上春樹作品の評価

村上春樹さんのノーベル文学賞は今年も選にもれた。ハルキ崇拝者にとっては残念なことだろうが、思うに私は一読者として、村上作品というものは、そういった賞から既に超越した存在であると理解している。
 
ので特別にがっかりもしない。世界中の特に若い人々が夢中になって彼の作品を愛読している。それが何よりの勲章で、ノーベル賞を貰えないからといって、いささかも価値を下げるものではない。
 
ロックのように弾(はじ)ける文章、文学のロックスターと、村上春樹は、アメリカ辺りでは論評されているが、私も同感で村上作品の楽しさは、服部半蔵のように空間を自由に飛び跳ねる言葉の旋律、奇想天外な物語の展開にこそ味がある。
 
「ノルウェイの森」は特に好きで、直子とミドリの描写はじわ~と心に残る、何とも好もしい人物像だ。「村上ラジオ」も古本屋で見つけて読んだら、洒脱なエッセー集で、村上さんの日常が垣間見られた。特に音楽に造詣が深くその深淵な知識がどの作品にも豊かな色付けがなされて恰好がいい。
 
 
村上文学はミステリーロマン

そういった汲めども尽きぬ知識が捩(ねじ)れあって、楽しくもわくわくする類稀なムラカミエンタメを構築する。「1Q84」の登場人物、ふかえりにしろ青豆しろ珍奇な名前自体、ミスティリアスな世界に誘うファクターとなっている。そう村上作品は「ミステリアス・ロマン・ノベル」だと私は勝手に解釈するのだが。それでいいのだ。
 
青豆にいたっては、まるで必殺仕置人みたいな人物で、これこそ村上マジック。その上に、文体は、水が迸るが迫力と、何よりも流れる水の如しの滑らかさで、読み易さは比類がない。私はただ憧憬する。村上さんのような文章が書けたらと。
 
私は愛して止まない吉村昭さんを失って、次は誰を追っかけるかと迷っていたが、村上春樹を見つけた。読書お遍路の伴侶を得た思いである。同行二人。惚れ込む作者は、私にとっての差し詰め弘法大師である。
 
 
中村教授と本田圭祐

青色発光ダイオードで今年のノーベル物理学賞を受賞した
赤城勇(名城大教授)天野浩(名古屋大教授)中村修二(CAL大サンタバーバラ教授)のお三方の中で、中村教授は異色だった。
 
研究の場をアメリカに求めただけに言うこともフランクで過激、学生たちの「(研究にたいする)モチベーションはなんだったか」の質問に「怒り、とにかく怒りだ」と答えた。(ニュースより)
 
勤めていた会社(日亜化学工業)との訴訟など、日本の会社の古い体質に対しての不満を語ったものだろうが、私はその姿に、あのサッカーの本田圭佑に似ているなあ~とつくづく思った。
 
いつも怒りのマグマを抱えてプレーしているような本田の表情、怒りをバネにノーベル賞に輝いた中村教授。私は二人に共通する上昇志向に、日本的なものを感じた。それは根性、怒り。というわけで、怒れ、怒れ、そして前進せよ!栄冠は怒り輝く。
 
 
ノーベル平和賞のマララ少女

17才にしてノーベル平和賞に輝いたマララさん(パキスタン)は現代のジャンヌダルクだ。タリバーンに銃撃され生死を彷徨った少女が、大悟した高僧のように揺るぎない活動を続ける。
 
今は政治家になることが夢だという。彼女はきっと偉大なる政治家になるに違いない。少女をタリバーンがいつもつけ狙う。だが彼女は、正義のために何ものにも怖れぬ鋼の信念をもつ。世の政治家よ、見習うべきはマララさん。
 
受賞後のスピーチの全文を読んだ。教育を受けられない子供たちを救おうとする熱意、情熱。母国パキスタンや、ナイジェリアには教育を受けられない子供たちが500~900万人いるという。
 
全世界に向けたそれは、慟哭(どうこく)のメッセデージである。16才の誕生日には国連で演説した。「私は誰も憎んではいない。タリバーンの息子や娘たちに教育を受けさせたい。本とペンを手に取ろう。一人の子供、先生、本とペンが世界を変える。」ノーベル平和賞にこれほど相応しい人もいまい。
 
 
秋色濃し
冬の始まりと、その狭間(はざま)にある秋は日本人にとって、多くの歌に詠われる特別な季節かも知れない。
 
此の道や 行人(ゆくひと)なしに 秋の暮
秋風に すすき打ちたる 夕べかな
 
              (芭蕉)
 
奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の
声きく時ぞ 秋はかなしく 
      
        (猿丸太夫)

酔うて こほろぎと 寝ていたよ
         (山頭火)
  
名月や 石の上なる 茶わん酒
          (一茶)
 
見わたせば 花も紅葉もなかりけり 
浦の苫屋の 秋の夕ぐれ
  (新古今和歌集 藤原定家)

 
茶人・武野紹鴎(たけの・じょうおう=侘び茶の元祖)は、侘び茶の心はと問われて、上記の定家の和歌を挙げたという。寂寞と哀愁とを凝縮した秋の山里の風情は、確かに侘び寂びの孤高の世界に通ずる。
 
嗚呼、俗人は熱燗が恋しい。秋の夜長、月を愛で、虫の声に心漫(そぞ)ろなれど、酒は、微酔がよし…だよ、オジサン。
  
 
公園の欅(けやき)の葉も色づいていよいよ秋色濃し。

 


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