夏祭りシーズン到来/「鞍馬天狗」が村で上映された日 | 舟木昭太郎の日々つれづれ

夏祭りシーズン到来/「鞍馬天狗」が村で上映された日

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■夏祭りシーズン到来
 ~たこ焼きならずたこ揚げ~
■「鞍馬天狗」が村で上映された日
 ~水牢に入れられた杉作の運命~
 ~公民館が一体となる~

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夏祭りシーズン到来

夏祭りのシーズンになった。19日(土)は地元の西原商店街であった。時折小雨に見舞われたが、無事予定通り終了した。私はボランティアとして例年の如く「たこ揚げ」の売り場を担当した。
 
何故「たこ焼き」にあらず「たこ揚げ」なのかは、手間暇かからず簡単だからである。鉄板で焼く作業は、仕込みに始まり、焼くのも何回もひっくりか返したりと時間もかかり非能率で、御客を長々と待たせてしまう。
 
というわけで「たこ揚げ」に5年前から切り替えたら、中々好評で毎年のリピーターも多く出てきてた。冷凍のモノを天ぷらのように揚げるだけで、後はのりとソースを上から振り掛けるだけ。 
 
 
たこ焼きならずたこ揚げ

これが以外にほくほくして美味しい。メーカーはよくもこんなヒット商品を開発するもんだ、と感心する。簡単で旨い。大したもんだ。
 
当日は決して天候に恵まれなかったのに完売した。商店街には6時頃から人が溢れだして、どこからか大勢の人が集まり、一年に一度の賑わいを見せた。
 
今年も阿波踊りが狭い商店街を鳴り物入りで練り歩いた。子供たちは夏休みに入って、学校から解放されたのが嬉しくてたまらないといった風だ。
 
小学生の女の子は、雨模様からか浴衣姿でも、足元は長靴だったり、スニーカーだったりたまに下駄だったりして、不揃いだった。それが却(かえ)って可愛いらしいものに写った。
 
これから近所の地区でも夏祭りが目白押しだが、いずれも手作りの夏祭りは殊の外好きで、私は家内と駆け巡る。こうした祭りは地元の方とのコミュニケーションの場でもある。ビールを手にご近所さんと世間話ができるのがいい。
 
梅雨明けも今週あたりらしい、笛や太鼓、リズミカルな音楽の盆踊りは、本格的な夏を呼ぶ儀式みたいなものだ。夏は、私にとっては、童心に帰る郷愁の夏でもある。


夏まつり
宵かがり
胸のたかなりにあわせて
八月は夢花火
私の心は夏もよう


(井上陽水 少年時代)
  
 
 
「鞍馬天狗」が村で上映された日

昭和25年~30年代初頭の映画は、とりわけ田舎(福島県S村)に住む僕たちにとっては憧れの娯楽であった。山村僻地には映画館というものがなく、見たければ山を幾つも越えて町に出なくてはならなかった。
 
そういったことで、村役場が「村民に映画を!」と音頭を取ったのか、村の公民館でアラカンこと嵐寛寿郎主演の「鞍馬天狗」(鞍馬天狗シリーズ)の中の一巻を上映する事になって、小学生の僕も姉たちに連れられ見に行った。
 
真昼の上映とあって窓という窓には暗幕が張られて、あれは多分夏だったので、異様に暑かった記憶がある。映画を生まれて初めて見る農家の婆ちゃん、爺ちゃんも居て、会場はうちわを扇ぐ人で、あちこちにパタパタという騒がしい音がした。
 
そうそう、角兵衛獅子(役名・杉作)を演じたのは美空ひばり、当時国民的アイドルで、この配役も人気に拍車を掛けた。上映2時間前には列をなすほどであった。
 
町からフィルムが届かないとの理由で、上映予定時間が大幅に遅れたが、文句言う者は誰一人としていなかった。そして始まった。幕が開くとどっと拍手が湧き起こり、背後から映写機のフィルムが回る音と共に、一条の光が闇を貫いた。あの渋い映写機の唸る音、あれ良かった~。
 
その闇に、映写機のレンズがら放たれた強烈な光線が濛々たる煙草の煙を浮かび上がらせた。当時は喫煙は自由だったので、煙が会場に充満していて、目が痛かった。映画社のマークが出ると、ざわめきはぴたりと止まった。もう半世紀以上前なので、物語の筋はとうに忘れた。 
 
 
水牢に入れられた杉作の運命

ただ、杉作が新選組に捉えられ、水牢(みずろう)で水攻めに遭う場面だけは記憶にある。水嵩(かさ)が増していく、杉作の体は徐々に水に埋まり、もがく杉作。 
鞍馬天狗が白馬を駆って助けに行く場面に変わる。ムチを馬の背に打ち続けるアラカン。トレードマークの頭巾から覗く表情は鬼気迫る形相だ。
「杉作待ってろ、今行くぞ!」期せずして喚声。拍手。会場は映画と一体になる。
 
水牢、馬を駆る鞍馬天狗、映像は切迫した状況を交互に描写。誰かが苛立ち叫んだ。
「もっと速く走らないとだめだっぺ!」
「んだ、んだ、杉作が死んじまうぞ!」
「全くな~、情けないちゃ、あんめ!杉作がアブねえんだぞ!」
 
これ映画なんだけど。と言った所で無駄なのだ。
 
  
公民館が一体となる

杉作は遂に首まで水に浸かっている。絶体絶命だ。「鞍馬天狗、早く早く!」の悲痛な合唱が公民館に響く。既(すで)に映画の世界を離れ、現実の出来事として物語は進行している。危機一髪の所で、杉作を助け出す鞍馬天狗。
 
公民館にはどっと拍手。「よがったな~、杉作が助かって。」「んだ、んだ、よがった。」「鞍馬天狗が、もう少し早く助けに来てくれれば、よかったんだ。」会話は多分にこんな口調だったと思う。
 
映画はハッピーエンドに終わって、爺ちゃん、婆ちゃんは幸せに満ちて三々五々、家路を急ぐ。三里、四里の山深い部落まで歩いて。一生に一度の映画見物は老夫婦にとって、忘れえぬ思い出として残ったであろう。
 
鞍馬天狗は最後にのたまう。「杉作、夜明けは近いぞ。」
映画が娯楽の王様だった時代の、何もかもセピア色の、めくるめく遠い夏の日の、それは出来事であった。
 
 
地元の西原商店街夏祭り風景

 
踊るあほうに、見るあほう…阿波踊り。


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