井岡一翔の敗北・タイ王者の数奇な人生/ムエタイ推薦本/他 | 舟木昭太郎の日々つれづれ

井岡一翔の敗北・タイ王者の数奇な人生/ムエタイ推薦本/他

--------------------------------------------
■井岡一翔の敗北
 ~タイ王者の数奇な人生~
■懐かしの歌謡曲
■ムエタイ本を推薦

--------------------------------------------
 
井岡一翔の敗北

 三階級制覇を目指して挑んだ井岡一翔のIBFフライ級挑戦は、夢破れた。上背、リーチで9㌢優るチャンプ、アムナト(タイ)の牙城を崩せず1-2のスプリット判定負け。私は3ポイント差でチャンプ。どうみても井岡の勝はないよ。体力差も歴然、完全な力負け。
 
 槍のように長く伸びるジャブ、潜り込んでいけばすかさず鋭利なアッパーが突き上げる。変幻自在なアムナト。さしもの井岡も為す術がなかった。フェイントも、左右の揺さぶりもなく単純な攻撃に終始。アムナトにすれば飛んで火に入る夏の虫。ただ迎え撃ち、狙撃すればよかった。
 
 さながら難攻不落、旅順203高地。遮二無二に攻めたてた乃木戦法。結果、井岡は、12ラウンズ、ついぞ攻略は出来なかった。アムナトにすれば省エネ作戦。よって全ラウンド、休憩時にも椅子に座ることもなし。かつてライオン古山を翻弄したセンサク・ムアンスリンを思い起こした。野性に、秀才が敗れた。
 
 
~タイ王者の数奇な人生~

 アムナトは、強盗で15年の刑を宣告され、模範囚だったことで出獄、ボクシングを始めた。35才という遅すぎたチャンプは、さぞ初防衛の夜は異国の地で悦びを噛締めていたことだろう。
 
 「私がボクシングと出会わなかったら今頃まだ刑務所で暮らしていた」(ボクシング・ビートより)。ソニー・リストン(元ヘビー級C=アリにKOされた)の境遇を彷彿させる。スポーツが人間を救う典型的な例である。
 
 才能豊かな井岡には出直しの試練。人生、敗北も強靭な発条(バネ)を造る天の啓示とみれば良し。再起もまた楽しみ。それにしてもあのトランクス、チンドンヤのようにスポンサーの広告をベタベタ張り付けて、何とかならないものか。品がない。井岡よ、ボクシングがスマートなら、身に付けるものも、簡潔であれ。
 
 セミファイナルの高山×小野の試合は、顔を背けたくなるような代物であった。二昔前なら精々日本タイトルの中身。見るべきものは何もない。アナウンサー氏の絶叫が空虚(うつろ)に響いた。ボクシングが色褪せるのも無理はない。嗚呼、1960年代~80年代(前半)代のリングを恋ふ。
 
 
懐かしの歌謡曲

ラジオ体操前に、公園で太極拳の稽古を始めたものだから家を出るのが僅かに早くなった。5時半には出る。まだ体は覚醒していないので、1日の始まりのカセット音楽は軽快な歌謡曲のメロディー「アルプスの牧場」(歌・灰田勝彦)にした。
 
 軽快なメロディーは頭の速効薬である。音楽に合わせてハモルが、灰田の裏声を真似るのは難しい。カビの生えたような古い歌謡曲が、忘れ去られず残るものは、けだし名曲だからである。
 
 数学者で文筆家・藤原正彦氏(「国家の品格」の著者)は、古い歌謡曲のレコードを沢山蒐集していると「親父の威厳」で綴っていた。 家族が留守の時を見計らって心置きなく聴くそうだ。古い流行歌は詞もメロディーも好もしいという。
 
 私も家内が出掛けたあとで、古い歌のDVDを持ち出して聴く。ときに声を張り上げて思いきりくちずさむ。家内がいれば、「うちの人も遂におかしくなった」と心配するだろうから。確かに古い流行歌は、歌詞の情景がたおやかに、波紋の如く心に広がる。
 
 オジサンには、歌謡曲は心癒す童謡唱歌みたいなものである。ああ、そうか「75才以上(私はまだですが)は小児科と同じと医者の世界ではいわれている」
 てなことで、流行歌と童謡は共通するのです。
  
「アルプスの牧場」
 作詞/佐伯孝夫、作曲/佐々木俊一 歌手/灰田勝彦
 
 雲がゆく 雲がゆく
 アルプスの牧場よ 
 鈴蘭の花咲けば
 レイホー…レイホー
 青春の胸が鳴る
 ハイホー…ハイホー
 角笛吹けば
 駆けて来る 駆けて来る
 レイホー…レイホー


 
「湖畔の宿」
 作詞/佐藤惣之助 作曲/服部良一 歌手/高峰三枝子
 
 山の淋しい湖に
 ひとり来たのも悲しい心
 胸の痛みにたえかねて
 昨日の夢と焚き捨てる
 古い手紙のうすけむり
 
  
 「湖畔の宿」は、高峰さんが特攻隊の慰問に行った時に歌った曲だそうだ。「私の歌を聴いて下さって、そのあと飛びだって行きました。二度と帰らなかったんです。私はこの曲を歌う度にあの時のことを思い出してせつなくなります」そんな物語があったことは露ぞ知らなかった。
 
 流行歌は人生模様の縮図。心に宿り、歌い継がれる。
 
 藤原正彦さんの父は著名な山岳小説家・新田次郎。神保町でぶらぶらしていて、古本店で立ち読みしていたら「縦走路」(S37年初版)を見つけた。50円!。読んだら堪らなく面白く忽ち読み切ってしまった。ミステリー染みたラブロマンス。37年に発刊されたのに瑞々しい。
 
 で、藤原先生のような偉いお方が、古い流行歌を愛することは、我が味方を得たようでなんとも嬉しい。週刊新潮のコラム「管見妄語」(かんけんもうご)は、歯切れがよく、ユーモアがあり毎週愛読している。
  
注|今週の歌謡曲は「愛は水平戦」ハン・ジナ(日本クラウン)を紹介。 
 
 
ムエタイ本を推薦

 ムエタイ(タイ式ボクシング)をとことん知りたいと思う人に朗報です。「ムエタイの世界」~ギャンブル化変容の体験的考査~ 著者・菱田慶文を推薦致します。
 
 ただ単に文献を渉猟して本に纏めたという代物ではない。著者はタイの大学留学、ジム入門、タイのリングで試合とまさに学研的、実践的考査で、ムエタイを追求している。
 
 これまで同様な著書は何冊かあったが、これほどムエタイに熱く向き合った本はない。資料としても一級品である。全体の構成は9章から成っており、ムエタイファンの読者が知りたい事柄が、
 
 筆者はこのテーマで早稲田大学大学院で博士号(人間科学)を授かった。益々御活躍されんことを祈ります。仔細に網羅してある。
 菱田慶文著「ムエタイの世界」定価2500円+税
 発行/株式会社めこん 電話/03-3815-1688
 
注|ブログ「舟木昭太郎の日々つれづれ」は毎週火曜更新です。
   http://ameblo.jp/upper/
 
 
露地栽培、ゴールデンウィーク中に苗を植えた。
手前からトマト(2列)、キュウリ(2列)、ナス、ピーマン。

 
代々木公園での「5月のバラ」。 


 
DVD『カンムリワシ具志堅用高』 第1部&第2部
DVD『日本ボクシング不滅の激闘史』いずれも絶賛発売中!!
 
Upper Official Siteへ