井岡×八重樫戦に見たもの/M-1ムエタイを取材して/初代タイガーと大仁田 | 舟木昭太郎の日々つれづれ

井岡×八重樫戦に見たもの/M-1ムエタイを取材して/初代タイガーと大仁田

・井岡×八重樫戦に見たもの
 ~左は世界を制す~
 
・M-1ムエタイを取材して
 ~タイのテイスト溢れ~
 ~梅野源治ここにあり~
 ~嬉しい出会い~
 
・初代タイガーと大仁田

  

舟木昭太郎の日々つれづれ

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井岡×八重樫戦に見たもの
  
 井岡一翔(WBA王者)と八重樫東(WBC王者)の世界ミニマム級統一戦は見応えのあるタイトルマッチでした。3-0の判定をものして、統一チャンプになったのは下馬評通り井岡。しかし試合を盛り上げた主役はなんといっても、敗者八重樫その男でした。
 
 八重樫は試合草々に左瞼を負傷しながらも、終始アグレッシブで恰もバネ仕掛の機械のように前進速攻を繰り返した。それにより迎え撃つ井岡のカウンター、特に左ジャブが効果的にヒットした訳です。攻める側と受ける側と際立って好対照の試合と言えるでしょう。
 
 メディアは翌日一斉に歴史に残る名勝負と囃し立てておりましたが、それはややオーバーな表現でしょう。これくらいの試合は’60年から70年代は珍しくありませんでした。最近は最初から勝負の帰趨が分かるようなお粗末な世界戦もあり、ボクシングはファンにそっぽをむかれていました。しかるに、ファンもメディアも久しく目にしなかった好試合を見たので、称賛を惜しまなかったのかも知れませんが。
  
 ただお互いにベルト(WBAとWBC)を賭けて戦うというのは日本では初めてで、この点は勿論意義がありました。まあこれも昔のように井岡がTBSで、八重樫がフジだったり、日テレだったり契約に縛られていればスンナリ実現しなかったでしょう。
  
 一般に鳴り物入りの試合というものは、凡戦になることが多いのですが、それは勝つことよりも、畢竟、負けまいと戦うがためです。だが双方見事に12回を戦い抜きました。井岡は防戦しているようで、実に冷静で、高度なカウンターで迎え撃っていました。
 
 八重樫は身長、リーチで優る相手に接近戦で挑み果敢に前進した。絶えず井岡にプレッシャーをかけていましたが、彼は単なるラッシャーではありませんでした。卓越したスキル(技術)を備えたボクサーでした。
 
 例えばアッパー、ロングアッパーは飛び込んでの強引なもの。デフインスに長けた井岡だからこそ間一髪外せたが、モロに食ったらダウンを免れなかったでしょう。ショートアッパーは文字通り密着しての小さく突き上げる、これも鋭いものでした。アッパーという技は、日本人には不得手な技です。私は目を開かれる思いでした。
 
 兎に角パンチはコンパクトで、インサイドか出て速く手数でも完全に井岡を凌駕していたと思います。早い回から左瞼が腫れハンデの背負った戦いだったにも拘らず、その旺盛なそのファイティングスピリットには恐れ入りました。
 
 私の好きな選手にジャッカル丸山がいました。攻めて攻めて、勝っても負けても完全燃焼する骨太のファイターでした。彼も確か青森出身、八重樫は岩手…二人は東北人に共通する我慢の力、荒ぶる魂を持っています。井岡戦ではその精神が、見事発揮されていました。
 
 
~左は世界を制す~
 
 それでも勝てなかったのは、井岡には、八重樫の攻撃に堪えうるスタミナと、突進を阻む鋭い左ジャブがあったからです。あたかも槍のような。よく左は世界を制すと申しますが、まっこと論より証拠。そのジャブは八重樫の瞼を容赦な射して、ダメージを大きくしました。
 
 勝った井岡は八重樫の強さを褒め称えた。奢れることがなく清々しいものでした。一方敗れた八重樫も「全力を出し切りました」と潔い印象を受けました。こういった大勝負で僅差の判定は、何かとトラブルを生むものですが、クリーンなノーサイドになりました。私の記憶するところ珍しいことです。
 
 井岡は今後クラスを一階級挙げてライトフライに戦場を移すということです。期待するところ大です。敗れた八重樫は休養しして再起を図ってもらいたい。多くのファンが待っているはずです。
 
 井岡はこの試合を振り返る度に、改めて肝を冷やすに違いありません。危ない試合でした。九死に一生得た戦いとは、まさにこの一戦でありましょう。
 
 危ない橋を渡った井岡はまた一段と成長するはずです。試練の数だけ人は強くなる。井岡VS八重樫はボクシング界の今後の指針として、業界は真摯に受け止めねばならないと感じますが。
 
 兎に角日本ボクシングは救いようがないような危機に瀕しています。何故かって?そりゃそうでしょう、階級の細分化、暫定王者などという金儲けのためだけの馬鹿げた制度や、更にです、WBA、WBCの世界戦の二団体しか認めなかった日本コミッションが、新たにWBO,IBFなる世界団体も承認しました。
 
 これによって、狭い日本に今後世界戦が乱発されるでしょう。これでは益々世界王者の価値が下がってしまいます。いやはや、お先真っ暗で元ワールド・ボクシング編集長としては、黙っていられません。現在日本の世界王者は7人ですが、盛況ですなんていっている場合ゃないんですよ、本当に。
 
 
M-1ムエタイを取材して
 
 24日、M-1(MはムエタイのM)をディファ有明に見に行った。過日藤原敏男会長にM-1MC山本智社長を紹介頂き入谷で一夜飲食を共にした。その折一度大会を見に行きますと約束していました。
 
 藤原会長と私の共通の友人、春日部市在住の稲田保雄さんにM-1の情報を前もって尋ねたら「あそこは面白いですよ。梅野源治がメインで出るので、是非見てください。日本人の完全なムエタイ選手で、この男は見る価値があります」とキッパリ語った。
 
 稲田さんは、1カ月に1度はタイに飛び、ムエタイの観戦とジム回りでムエタイに最も精通する日本人と言われる。当地のスポーツ紙にも載ったこともある。(タイは試合に賭けが認めらていて、稲田さんはタイ人賭屋も驚く勝率で紹介された)が、認めるのだから間違いないと、興味をそそられたのである。
  
 
~タイのテイスト溢れ~
 
  で、先ずM-1をナビしてみましょう。 M-1のテイストは本場のそのもの。会場前には無数のタイ国旗がロープにはためき、会場内に一歩足を踏み入れば、もうバンコク。音楽が炸裂して、ここにナンプラーの鼻をつく匂いが充満していれば最高なんだけど。
 
 ラウンドガールもタイの衣装で登場する。タイトルマッチともなるとワイクルー(戦いの舞い)の音楽に乗って日本人選手も踊る。これがなんともディファ有明の会場とマッチするから不思議です。
 
 興行を主催する人物は元ムエタイボクサーのウィラサレックさん。それに山本智の日タイコンビ。ウイラサレック・プロモーターは上下赤いターターンチェックで身を包み、終始役員席中央で寡黙試合を注視する。いいなあ、とてもクールです。
   
 
~梅野源治ここにあり~
 
 さて試合、想像以上にレベルが高く私は満足しました。やはり梅野源治は一度は見る価値がある。スーパーフェザー級の体は研ぎ澄まされた鋼のように精悍なルックスと相まって、スタアの雰囲気がただよう。
 
 ファイトは切れ味よく、ロー、ハイの蹴り技もスピード豊か。タイのランカー、アンカーレックを2R右ストレートを顔面に決めてKO。噂通りの逸材と睨んだ。久し振りにリングサイド記者席で取材する側で試合を追って現役時代に戻ったような気分になった。
 
 女子のティチャー(タイ)×リトルタイガー(日本)の試合も白熱した内容の濃いものだった。日本の女性が勝った、藤原会長の愛弟子で会長の指導で成長しての勝利は、やはりキックの鉄人の教えは違うなあと実感した。大石×田中は、田中が逆転の肘打ちTKO,闘魔×野呂は余裕たっぷりの闘魔が、野呂のハイキック一発3Rに沈み、しげる×山口は、しげるが激戦を制した…いずれも見応えある戦いにキック+ムエタイの醍醐味を満喫した。
 
 
~嬉しい出会い~
 
 魔裟斗君も観戦に来ていて挨拶を交わした。彼は新たなK-1のプロデューサーに就任したとか、御活躍を祈りたい。もう一人、レフェリーの中にかつて私が取材した少白竜君がいた。「舟木さん、ゴングに載せてもらったことがあります。」と声を掛けてもらった。
 
 昔日の彼の試合も、そういわれて直ぐ思い出した。嬉しい出会いだった。彼のレェフリングは安心して見ていられた。何でもいま「レフェリーユニオン」を組織するべく奔走しているという。ここにも志のある人がいる。私でお役に立てるなら強力を惜しまないよ。
  
 帰宅したのは22時頃、快い疲れで遅い夕食を摂った。
 そうだ、7月29日のIT'S SHOWTIME JAPAN興行、ディファ有明にまた取材に行こう!
 
 
初代タイガーと大仁田
 
 リアル・ジャパン(初代タイガーマスク=佐山聡主催)のプロレス(6/20 後楽園ホール)はいつもながら一級のエンターテインメントである。
 
 往年のスター選手、藤波辰爾、長州力、藤原善明、初代タイガーマスク等が一堂に揃う。現役華やかし頃のリプレイを見ているようで、私は普段は夜出ないのに、当大会だけは楽しみにしている。
 
 この日も会場は満員に近いお客の入りに感心した。メインは初代タイガーと大仁田厚のランバージャックデッスマッチ(セコンドは両陣営各3名で、敵方リングサイドに落ちた選手には反則など何をやってもよい)は、限りなく満足した。
 
 試合を盛り上げ、組み立てるプロデューサー役はもっぱら悪役の大仁田邪道軍団である。あの御大ジャイアント馬場のような慎重居士なDNAから大仁田という異端児がよくも生まれたなあと不思議でしょうがない。
  
 
~大仁田の役者ぶり~
 
 大仁田がジーパンに皮ジャンというお決まりの恰好で、幟が靡く花道をテーマ音楽に乗って登場する。その瞬間から客席はざわめき、ドラマは既に始まっている。観客は少なくともそう感じ取っている。
 
 無限の存在感が大仁田には潜んでいる。お客の鼓動を全て掴んで、おもむろににリングに上がる。千両役者とは彼のような人物をいうのだろう。リングアナのコールも無視、ふてぶてしく振る舞う。
 
 試合が始まると毒霧殺法(口から緑色の霧を吐いてタイガーに噴きつける)あり、イス攻撃と悪の限りを尽くして観客のブーイングを浴びる。大仁田が敵陣リング下に落ちれば、殴る蹴るの洗礼を浴び興奮は最高潮に達する。観客は「遣れ!遣れ!」と喚く。可笑しいことだが、これが楽しい。
 
 プロレス観戦のコツは、先入観もたず目の前に起こる現象だけをストレートに楽しむことである。佐山プロレス(リアルジャパン)は、古いアルバムを捲るように失われた日々を甦させてくれる、深淵なるエンターテインメントなのです。
 
 あ、そうだ。試合終了そこそこにエレベーターに急いだら売店に藤原善明さんがいた。お互いに顔見合わせて、おお!と期せずして声を出した。本当に久し振りで、懐かしく「先生(黒崎健時師範)に会っている?」と親指を藤原さんは立てた。
 
 5年前胃癌の大手術をしたというのに藤原さんは不死鳥のように甦り、今夜もヒロ斉藤とパートナーを組み、長州力&藤波辰爾とタックマッチで戦った。老いたがトレードマークの頭突きは健在、酒は相変わらず飲んでいるようだ。「だって俺から酒取ったら何も残らねえよ。」
 
 黒崎会長、藤原敏男さん、それに善明さんの4人集まり、また宴会でもしたいものだ。黒崎会長と善明さんが競う村田英雄「男の一生」は絶品、それはもう叶わないか。老いることはその点寂しい。善明さん、お互い元気でいよう。
  
 
【ボクシング写真】※いずれもMACC出版提供

 

試合終了お互いが肩車で勝者をアピールする八重樫(左)と井岡(右)舟木昭太郎の日々つれづれ
 

両瞼が塞がりながら応戦する八重樫(左)

舟木昭太郎の日々つれづれ
 

井岡のクレーバーな攻撃(右)

舟木昭太郎の日々つれづれ  

 

 

【ムエタイ:M-1】

 
タイの衣装をまとったラウンドガール
舟木昭太郎の日々つれづれ

 

KO勝ちした梅野源治

舟木昭太郎の日々つれづれ
 
  

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