「ボクシング・ワールド」の休刊 尊敬する前田衷編集長のこと… | 舟木昭太郎の日々つれづれ

「ボクシング・ワールド」の休刊 尊敬する前田衷編集長のこと…

 ボクシング・ワールド誌が今月を以て休刊することになった。

 06年、日本スポーツ出版社から前田衷氏が買い取って引き継いだもので、雑誌名も「ボクシング・ワールド」に変え再スタートを切っておよそ2年半、残念至極だ。
 同誌は私が日本スポーツ在籍中に創刊、初代編集長も務めた。それだけに、前田編集長から「今月で休刊します」の電話には言葉を失った。出版不況はワールドにも及んだかと…。

 
 今号(6月号)[編集長独白]欄で前田編集長は休刊の理由についてこう書いている。
「早い話が、売上が伸びないからです。いま新聞、雑誌といったも印刷媒体はどこも低迷していなす。インターネットで情報が簡単に手に入れられる便利な時代にあっては、雑誌はどこも厳しい状況におかれているのが現状です。」
 こういう事情だから仕方がない。本当に雑誌は売れない。電車に乗っても、本を読んでる乗客は珍しい。若い男女はほとんどの人が携帯を手にしている。メールを打ったり、ゲームしたりあるいは情報を得たりと。一昔前は雑誌の発売日ともなると一車両には、週刊ゴングやワールド・ボクシングなどを読んでるファン方は珍しくなかったのに…。
  
 前田氏は私が尊敬する編集者であり、ボクシング・ライターである。ベースボール・マガジンで「ボクシング・マガジン」の編集長をしていた頃からの知り合いで、同氏がクォリティーの高い雑誌にしたので、大幅に部数を伸ばした。
 因みに伝説のスポーツライター佐瀬稔さん(故人)が最も信頼したボクシング編集者は前田衷であった。
 ボクシングのことなら何でも知っている。また情熱は人一倍持っている。卓越した知識と能力を有するのに、それをひけらかす事も無い。私はいつかはこの人と一緒に仕事をやってみたいと密かに思っていた。で、フリーになったのを機に、私が手がけていたワールドを手伝ってもらった。ある時から委託編集をお願いして、私が退職後は御自分で経営なされていた。ワールドが曲がりなりにも、継続して来たのは前田氏の尽力に他ならない。
 前田氏が業界に従事して42年になるという。まさに日本のナット・フライシャー(リング誌創刊者)だ。彼がこのまま業界から離れてしまうことは、取りも直さずボクシング界の偉大なる損失である。ボクシング業界も何らかの救いの手を差し伸べるべきであろう。
「そろそろ引き際を考える年齢ですが、この競技の素晴らしさを広く伝え、試合の感動、楽しみをファンと分かちあいたいという思いは依然として強くあります。」と述べている。嬉しいことではないか。
  
 今後は印刷物だけでなく、ウェブサイト、携帯サイトも手掛けるとか。ワールドの復刊については、2~3の出版社から問い合わせがあるという。あるいは、早い内に朗報がもたらされるかも知れない。
 がんばれ、前田!がんばれ、ワールド!