わりとね、ボロいパンツはいてるんです俺。
本当にダメにならないと物を買い換えないタイプなので、
ちょっとした小さな穴くらいじゃ、防御力に支障はないと、
ある種のたくましさみたいなものを心に秘めています。
ワインでいう、ヴィンテージ的な?
歴史的なパンツもいまだにヘビロテだったりして、
思い出してみると10年物なんかも平気であったりして、
空き巣に入られたときに1番最初に狙われるのは
俺のヴィンテージパンツ群である恐れが出てきたところ。
でもさすがにさ、今後素敵な方とどうにかこうにかなるときに、
ロマネコンティ出すわけにはいかないかなって。
もっとフレッシュな、今期解禁したばかりのボジョレーもさ、
用意しておくに越したことはないなって。
そんなわけで、仕事中ちょこちょこパンツをネットで探してたのね。
買うときは実際に触ってみたいところではあるけれど、
今はどんなパンツがあるのかしらんってコソコソとパンツ探ししてたのね。
そしたらさ、今に始まったんじゃないだろうけど、
けっこうえげつないパンツあるのね。
そんなんであなたを守れるの?
あなたの大事なムスコさん守りきれるの?
ってくらいの布切れだけみたいなやつとか、
パンツの概念ってご存知でしょうか?
そんな疑問を呈したくなるほどの、
紐のみで構成されてるやつとか、
ハラリしたらポロリ。
チラリしたらクラリ。
もうそんなパンツがわんさか出てきて、
その上、パンツのモデルの方のいいカラダとか見て
フッフーみたいになっておりましてね。
鼻血鼻血!ってくらい食い入るように画面見てたら、
同じフロアで働く役員の方が俺の元へ。
あっぶねー!なんだよ急にー!って、
こちら側に回りこんで来る前に慌てて画面を消して
表情を仕事モードにして、
「なんでしょう?」なんつってスマートに切り替えたよね。
『ちょっと確認したいことがあって』と、
俺のパソコンを見ながら仕事の話をね。
WEBとデータを見ながらここどうしようかって。
さっきまでパンツを見てムフフしてたとは思えないほど
オンに切り替えてパソコンを見てましたらね、
今さ、WEB広告あるじゃん?
1回見たことのあるサイトのバナーが出たり、
検索したことのある商品の写真が出たりするじゃん?
そこにさ、なぜかさ、純白のブリーフがさ、登場したの。
あ、パンツの閲覧履歴が…!って焦ったけど、
あれ?なんで?と。
ボクサーパンツを探していたはずなのに、
あれ?おじいちゃんのやつ?
おじいちゃんが昔はいてたやつ?
ってくらいの超オーソドックス白ブリーフが
画面から消えない。
銭湯のお客さんたちよくはいてね?
テルマエ・ロマエで登場してたんじゃね?
ってヘソまで隠す勢いのデカめ白ブリーフが
画面から消えない。
隣に座って同じ画面を見ている役員を横目でうかがってみると、
どう考えてもテルマエブリーフに釘付け。
どう見ても凝視しテル。
なんか目の奥笑っテル。
超テルマっテル。
ねえ、ちょっと、お願い。
俺の話を聞いて?仕事の話、進めさせて?
あなたが今見るべきは、ブリーフじゃなくてカーソルだから。
休みボケからようやく抜け出した俺が、
すばらしい手つきで操るマウスのその先だから。
別のページに飛んでも、ブリーフ。
そのまた先に飛んでも、ブリーフ。
もうずっとブリーフのターン。
WEB広告の貪欲さがスゴイ。
ブリーフが止まらない。
ロマンティック以上に止まらない。
なんでこんな広告出てるんだろーって、
あえて自分からシラを切りにいってみるべきか。
え?ブリーフ?そんなん出てました?って、
そもそも気づかなかったーくらいの体を貫くべきか。
もういっそ、このブリーフ超すげーんですよって、
もはや俺が広告塔だくらいの勢いでぶつかるべきか。
悩むよね。悩んだよね。
でもその役員って、50歳オーバーなわけ。
社員全員がだいぶ距離を置いてしまうほど、
お堅くて有名な役員なわけ。
例に漏れず俺もすげー苦手な人なわけ。
広告塔ばりにテルマエブリーフを前面に押し出したら、
ややもすると、お前俺を老人扱いしてる?
くらいな雰囲気になる可能性高め。
どうせおっさんはこういうのはいてんだべ?
ってからかいを含んでいると取られかねない。
仕事中にパンツ検索をしていたなんてバレたら、
肩をたたかれてしまうかもしれないのに、
あえてパンツネタで攻めるなんて、
何もしないからと言う男を家に上げておいて、
そんなはずじゃなかったと嘆く女ほど愚かな行為である。
したらさ、
やっぱここは黙っておこうってなるじゃん。
大人だから空気読むじゃん。
触らぬ神になんとやらじゃん。
ブリーフからターンを奪い取るためには、
全力で仕事してます感出して喋り倒すじゃん。
ブリーフにもヒヤヒヤしたけど、
それ以上にヤバいパンツが広告に挙がってくることがさらに危険。
あの紐や布切れだけのパンツはどうか出ないでくれー!
ムキムキモデルの股間どアップのパンツ画像も出ないでくれー!
って思ってたらなんか変に意識しちゃってもう緊張。
ただでさえ苦手な役員とのコミュニケーションに、
妙なオマケの心配事が相まって脇汗がすごい。
俺の脇事情がすごい。まるで滝。
脇の下で滝行始めちゃうぞって。
俺の煩悩も今こそ払うときだー!って。
もうさ、服の中は大洪水だけど、めちゃめちゃ平静を保って
このやり取りを1秒でも早く終わらせるために、
入社して以来1、2位を争うくらいに完璧な説明したよね。
ものっすごい簡潔に、質問が出ないように全てを先回りして説明したよね。
1年分のパワーを5月で使いきった可能性すらあるよね。
早く席に帰ってくれー!って願いをこめて、全力で。
なんとか説明も終わり、役員が立ち上がってさ。
ふー、どうにかセーフだったなと。
ブリーフは出続けたけど、他は無事だったなと。
まあさ、冷静になってみると、1度検索した商品の履歴や類似品が
広告として出てくるなんてこと知らないかもしれないじゃんね。
50歳過ぎてるおじさまだし、そこまでWEBに詳しくないかもしれないじゃんね。
たまたま見てたサイトが、パンツ会社と提携してただけ、ってこともあるじゃんね。
無駄な焦りだったかもしれないな。
取り越し苦労をしちまったな。
『じゃああとよろしく』
「わかりました」
みたいなやり取りをして、またパソコンに向き合ったらさ、
役員が去り際に少しニヤってして、
俺の肩をたたきながら一言。
『まだ早いんじゃないかな。若い人にそのタイプのパンツは』
(バレてるううぅぅぅぅ!!)
まさかの一言に
「え?あ?ははh…」
ってうろたえ度100%のリアクションで終幕。
俺まさかのブリーフキャラに。
30年くらい先取りでブリーフキャラゲットしました。
10歳のときに卒業したブリーフキャラに、
30代で晴れて再就任させていただくことになるとは、
誰が想像したことでしょう。
おかえり、俺。
しかしまぁ、あの堅物がそんな冗談言ってくることも、
想像だにしなかったことでございますよ。
案外、みんなと冗談言い合ったり仕事以外の会話もしたり、
そういうことをしたいと思っている人だったりして。
パンツのせい(自業自得)で、寿命縮んだけど、
パンツのおかげで、ちょっと心の距離が近づいたかな。
パンツって偉大。