国にモノ申す! 国籍編 | 祐天寺りえのフレンチアルプス日常生活

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「フランスだったら産めると思った」(原書房)「食いしん坊の旅」(パラダイム出版)「フランスの田舎暮らしとおいしい子育て」(小学館)・・・以来、単行本を出せていない祐天寺りえの、フランスの山の中での、ごく普通~の日々ブログ。

今日はちょっと真面目で重い、そしてちょっと暗めのブログになるかも・・・。

でも皆さんにも何かお知恵を頂けたら・・・と。

2年前から長女(かりん)がテレマーク・スキーでワールドカップに参戦し始めた。

フランスのナショナルチーム所属なのでフランス代表選手として・・・だ。

でも当人は「フランコ・ジャポン」のつもりでいたし、開催国によっては選手リストの国籍欄にちゃんと「日仏」と書かれたりもしていたらしい。


テレマークはオリンピック種目ではないから、まだ色々と詰めが甘いところも多く、だから呑気に構えていられる。

でもジャンプやアルペンなどになると、国籍申請についても、かなり厳密。


隣の谷のベルギー人夫婦の娘はアルペンの選手なのだけれど、最初に参戦した国際大会(FIS)の際、当時まだ彼女はフランス国籍を所有していなかったのでベルギー人として申請をした。

すると以降もずっと「イギリス代表選手」としてしか滑られない・・・となったという。


ジャンプも同様。

ジャンプの大会には、ジュニア大会でも必ず身分証明書を持参しなければいけないのだけれど、その際に、イギリス人の子(15歳)がイギリスの身分証明書を提示したところ、以降、やはり国籍欄はずっとイギリスになってしまったという。


前述のベルギー人の子も、このイギリス人の子も、かりんと同じ、生まれも育ちもフランスの子供達だ。

嫌だね、そういうトラブル。ウチはその難は事前に回避しよう・・・と、それで16歳の時に、かりんはフランス国籍を取得した。



20年ほど前までは、フランスでは外国人であろうと、フランスで生まれれば自動的にフランス国籍を取得できたらしい。

その親まで自動的に国籍取得が可能だった時代もあったらしい。

けれど移民法が改められ、今は13歳までは親の国籍を所有。

14歳で当人の意志と親の同意による申請開始が認められ、16歳以降は親の同意も不要。当人の意志のみで申請でき、そして18歳の時点ではフランス国籍の取捨選択を確定しなくてはいけない・・・今はそういう法律が定められている。


そしてフランスは多重国籍を認めている。

18歳までにフランス国籍を取得しても、それまで所有していた親の母国の国籍も持ち続けられる。

つまり、かりんの場合、日本国籍だけだったけれど16歳からは日仏、二重の国籍を所有・・・そうなったのだと思っていた。


日本が二重国籍を認めていないことは知っていた。

でも22歳で日本国籍の取捨選択を決めるまでは、二重国籍を所有していられるのだと解釈していた。

だから

「まだ22歳までには時間がある。その頃までには日本も二重国籍を認めるように変わっているんじゃない?」

そんな風に呑気に構えていた。


ところが違った。


22歳まで所有できるのは、18歳でフランスから自動的にフランス国籍を与えられた者のみ。

つまり、かりんのように16歳で自ら進んでフランス国籍を取得した者は、即ちそれは「自ら進んで日本国籍を捨てた」とみなされる。

だから国籍はフランスのみ。

日本の国籍は「喪失届け」を提出し、捨てなければいけない・・・・・・・のだそう。


え~、そんなぁ~。

国際大会に日仏両方の国名を並べたいからこそ、16歳でフランス国籍を取得したのに・・・・・と、かりんはかなり残念がっている。


親の私は

「へぇ~、そうなんだぁ」

「でも、まぁ、カリンは生まれも育ちもフランスだし、特にスキーに関してはフランスに育ててもらってきたんだからフランス代表として出るのが当たり前。だから構わないけど・・・ただ、なんか勿体無いことしているよね、日本政府って」

その程度の感慨。

それこそ異国で生まれ育った者の気持ちを本当には理解できていないのだろう。


フランス人はよく言う。

「根・・・は大切」

と。

「根」とは、つまり「血」のことなのだろう。

単一民族、島国の私たち日本人は、つい軽んじてしまう部分なのかもしれない。


この「日本国籍を捨てなければいけない」を聞いた時のかりんの落胆ぶりを見て、改めてその違いを感じた。

日本育ちの私と、フランス育ちのかりんの感覚の違いを・・・。


彼女の中には明らかに、親から受け継いだ「日本」という根と、自分が生まれ育った「フランス」という根。

その両方の根が強く太く張っている。

でも、今、その片方、「日本」という根を断ち切らなければいけない。


「へぇ~、そうなんだぁ」

と簡単に断ち切れるほど、細くてどうでもいい張り方をした根ではないのだろう。

18年間かけて、しっかり根づいた根。

それを

「捨ててください」

そう言われて、

「はい、そうですか」

果たして、そんなに容易く捨てられるものなのだろうか?


その辺のこと。政府は考慮した上での法律なのだろうか?

そこがとても疑問なところだ。

国際化を目指す・・・と言いながら、実際にはそういう、今、世界中で暮らし、生きている日本人の心境までは、全く配慮も想像もしていないのではないだろうか?


調べてみると、重国籍に対して異議を唱えたり苦難している日本人はかなり多い。


ウチなどまだいい。

私が

「フランスで生まれ、フランスの教育を受けて育っているのだから、まずはフランス社会できちんと生きられる大人にさせること」

それを主軸に、むしろ日本語教育を怠って育ててきた。

だから

「へぇ~、そうなんだぁ」

程度で済むのだろう。


でも、なかには国際カップルでありながら徹底して日本語教育を施し、完全なる日仏っ子に育て上げた・・・という人達も多い。

そういう人達は

「それなのに我が子をフランス人にしかさせられない。日本人にはならせてあげられない」

と嘆いている。


バイリンガル教育は、日本で思われているほど容易いものではない。

特に日本語もフランス語も難解な言語だ。

その両方を並行して学ぶことは子供にとっても試練。

それを成し遂げたご褒美が貰えるはずが、逆に「日本国籍喪失」?


法務省はそういうことまで想像したことがあるのだろうか?

法律は国民のための法律であるべきで、「面倒なこと」「厄介なこと」・・・つまり自分達の雑務を減らすためのものではないはず。

そして従来の法律に組み敷かれたままでいるのではなく、常に「このままでいいのか?」を検討し改良する姿勢が必要なのではないだろうか。


そして今、中国が世界中で威力を発揮し始めているのは当たり前だ。

どこの国に生まれ育っても、中国人は中国の国籍を失わない。

「国籍を失わない」ということは即ち「国民としての誇りを失わない」ということでもある。

つまり中国人は世界のどこに生きていても、ずっと中国人であり続け、中国人としての誇りを抱き続ける。


それに対して、日本は全く逆の方向に進んでいる。政府が進ませている。

少子化を嘆きながら、世界中で生まれている日本人に対して「日本国籍を捨てなさい」と勧めている。

日本人としての気概や誇りを捨てなさい、と勧めている。


いいのかなぁ~、そんなことで。


ちなみに今、テレマーク・スキーの世界チャンピオン。

カリンと同じチームのフィル・ローという選手(25歳)。

彼は父親がドイツ人。母親がオーストリア人。自分はスペインに生まれ、育ちはメリベル。

だからスペイン&フランス&ドイツ&オーストリア、4つの国籍を持っている。

そして4国を、こよなく深く愛している。



このフィルのような若者が日本にも増えたらいいのに・・・と、いつも思う。

法務省の方々、政府の方々、そうは思いませんか?思えませんか?


私も「へぇ~、そうなんだぁ」だけではいけないのだと想う。

かりんだけではない。二菜と健太もいるのだし。

でも、うーむ。どうしたらいいのだろう?

なにかお知恵あったら、なんでもいいです。お知らせください。



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