前作の「全選考委員をうならせた骨太エンターテインメント」でミステリ賞をとり、デビューした葉真中顕の期待の新作、だそうである。
なんとなく切れが悪いのは私がその前作を読んでいないから。会社にあってなんとなく手に取ったという、理想的でない読者だったから。
前作が介護がテーマだったらしいのだが、本作品は、ホームレスにからむ利権?の話なので、その意味でこの人は、新人ながらきちんと狙って、テーマを絞っている人なのだろう。
また、飼い猫に食われた腐乱死体となって発見された「鈴木陽子」の生涯を、「あなたは~をした」と順行するいわばA面と、その彼女がなぜこんな死に方をしなければならなかったのか、バツイチの女刑事の目線で遡るB面で交互に進める、展開も丁寧で盛り上げる。
ただ、どこの時点でどう交差するのか、ハラハラ追いかけさせるのはよいのだが、女刑事自身の踏み込みが微妙で、狙いとしてはネグレクトの側面を引き出したかったんだろうけど、そのかみ合い方がいまひとつ不十分だったような気がした。
謎の女を追いかける社会派的な展開としたら宮部みゆきの火車とか思い浮かぶのだけれど、追う側の執念とかが感じられなったからなのかも。さらっと終わり、読み終わって「骨太」とは思えなかったような。
しかも、かなり早い段階でネタがばれてしまう、というか予測できてしまう。丁寧なA面構成があだとなっているというか、だって、これだけ思考の癖を見せつけられたら、その思考がどこに着地するかはわかってしまうものねえ。
あとは、ファミリーとしての結束力の根拠が希薄とか、罪悪感へのあまりの鈍感さとその画一的すぎるところが薄い気がしたなあ、とか。綻びのなさが不自然すぎてちょっと嘘っぽすぎというか。
テーマはいいし、だけに、そこが真実味を帯びたらすごいんじゃないのかな、って思う。派手なシリアルキラーものでもサイコでもない、だけどしんみりとした狂気を、もすこしねちっこく書いてもらえたら、なんて思いましたとさ。