映画『世界から猫が消えたなら』を見てきた。
「余命わずかな主人公が一日分の命を与えられるたびに、世界から大切なものが一つ消える」という話。
ファンタジックな設定に対して意外に淡々と話が進み、中盤までは「ふ~ん」という感じだったけど、
現在と回想がぐるぐる混ざり合って、主人公のこれまでの日々を徐々に知っていくうちに、
いつの間にか深く深く感情移入させられてた。
元気ハツラツなときにテレビで流し見たら、
「うん、各人物がじんわり愛しくて温かみのある映画だね」ぐらいかも。
「今日もあんま大した作業できなかったなぁ、自分なんてイモムシだ…」みたいにイライラ悶々とした感情がジェンガのように積み上がっているときに一人、映画館でじっくり見ると、
鎖骨に涙が溜まるほど、もはや涙なのか水なのか後半よくわからなくなる、涙垂れ流し状態。
映画を見ながら自問自答して、せわしない心もリセット完了。
何気ない日常には愛が溢れていて、そんな日々の積み重ねが自分を形作っていることに気付かされ、
イモムシなりに明日はもうちょっとだけ頑張れるかも、と思えるのでした。
映画『世界から猫が消えたなら』公式サイト
****
ちなみに、「回想シーンが突然出てきてわかりにくい」ってな意見もちょいちょい目にしたので補足すると。
確かに回想は断片的に挟み込まれますが、何かを見たときにそれに関連する過去がふと頭をよぎる、そんな感覚が再現されていて、
主人公のその時その時の心情を想像していたら話の流れがすんなり心に入ってきます。
その他、言葉で詳しく説明する紙芝居のような見せ方でなく、映像で匂わす実に映画的で粋な見せ方がされているので、具体的な説明がない部分は観客の想像力に託されています。
主人公の立場になって映像から情報を感じとる必要がある点が、より深い没頭感を生んでるのですが、
その一方、紙芝居の観客みたいに物語の外から説明をただ待っていると置いてきぼりになるはずです。