本山 泉涌寺では
今上陛下御在位三十年 を記念して舎利殿に安置されている [いだてん] 像を特別公開しております。
そもそも舎利殿(しゃりでん) は お釈迦様のお骨が祀られている御堂で、泉涌寺にある おシャリさまは お釈迦様のお口元(歯) であることから 大変に貴重とされております。「どうして 歯の部分が大切なの?」と質問すると、「お釈迦様はありがたい説法を沢山されたでしょ? 歯はそれを間近で全部聴いているからです!」との事。
ところが このような大事なお宝を盗もうとした不届き者がいたようで…。
昔 出雲の国(島根県)美保の関の僧が、都を見物しようと京都へ上り 唐の国から渡って来たという十六羅漢や仏舎利を見ようと、東山の泉涌寺にやって来たそうな。寺の僧の案内で、仏舎利を拝んで感激していると 寺の近くに住むという男(里人)がやって来て、一緒に舎利を拝み始めた。そして、仏舎利のありがたいいわれを語っていたが、突然 空がかき曇り、稲妻が光ると、男の顔は鬼と変り、「自分はこの舎利を望んでいた 昔の足疾鬼の執心である!」と言い、仏舎利を奪い、天井を蹴破って虚空に飛び去ってしまった。
僧は、物音に驚いて駆けつけた寺の僧から、釈迦入滅の時、足疾鬼という外道が、釈迦の歯を盗んで飛び去ったが、足の速い韋駄天 が取り返した という話を聞いた。そして 二人が一心に祈ると、韋駄天が現れ 足疾鬼を天上界に追い上げ、下界に追いつめ、とうとう 仏舎利を取り返した。足疾鬼は力も尽き果てて逃げ去ったとさ。
これは お能の演目 「舎利」の物語。
足疾鬼を追い詰めた 韋駄天さまは今も お舎利さまの護衛官として任務に就かれており… そして 舎利殿の裏堂には韋駄天さまの絵が美しく描かれているのだそうで、初公開! 私も 是非ともお参りに伺いたいと思っております。
ところで 雲龍院にも 走った姿の大黒様が居られ、「舎利殿の韋駄天さま と 雲龍院の走り大黒天さま ではどちらのおみ足が速いか?」 という疑問が昔から囁かれているとか いないとか…。 すばしっこさを自負している私としては お二人の駆け比べに割り込みたいところでして…。 まさかの 寺庭婦人 勝利? を目指して研鑽に励みたいと思っております。