きそ、され、いあ
第7章 価格戦略の基礎
7-1 価格の意義
7-1-1 価格の重要性
a顧客が商品を購入する際に支払う対価
←商品の価値と比較して妥当かどうか判断して購入
b企業にとって商品当たりの収入を規定する
←価格はマーケティング・コストの支出基準をも規定する
c顧客が商品についての情報を充分に持っていない場合、品質判断の基準となることがある
7-1-2 マーケティング・ミックスの中における価格
a出荷価格を下げると他の4Pに支出できるコストが少なくなる
←適切なマーケティング戦略が実施できない
b価格設定の問題は企業全体のマーケティング戦略を大きく左右する
7-2 価格の決め方
7-2-1 価格の決定方法
←大きく3つに分類
a①商品のコストを重視するコスト志向型価格決定法:メーカーの場合製造原価に販売管理費と目標利益を加えた価格、卸売業の場合仕入原価に販売管理費と目標利益を加えた価格の決定法
bある一定数以上売れれば必ず利益を確保できる
c②需要の大きさに配慮する需要志向型価格決定法:その商品をどの程度の価格であれば購入してもよいと思うかを考えた価格の決定法
d③競合企業の価格を重視する競争志向型価格決定法:メーカーの場合類似製品を販売している競合企業、小売業の場合競合する小売業の販売価格を参考にする価格の決定法
7-2-2 損益分岐点(図表7-1)
a損益分岐点売上高:売上高と費用が同一となる点
b損益分岐点より売上高が高いと利益を獲得でき、逆に低いと赤字
c損益分岐点は費用を固定費と変動費で考える
d固定費:生産数量にかかわらず発生する費用
Ex)正社員の給料、賃借料、減価償却費
←生産数量によって、製品一つ当たり固定費は変わる
e変動費:生産数量に応じて発生する費用
Ex)原材料費、水道光熱費、残業代
←製品一つ当たりの変動費は総費用線の傾きに反映
f販売価格は売上高線の傾きに反映
g損益分岐点売上高の公式
7-2-3需要の価格弾力性
a価格弾力性:ある商品の需要が変化する度合いを示す数値
b 1より大きいと弾力性が大きい、1より小さいと弾力性が小さいという
c需要の価格弾力性の公式
7-3 価格戦略
7-3-1 小売業における価格戦略
a正札価格戦略:どの顧客に対しても、その小売業が決めた価格で販売する価格戦略
←顧客からの信頼を得ることができる価格設定
b端数価格戦略:顧客の心理的効果を考えて、端数を付けた価格で販売する戦略
c慣習価格戦略:顧客が購入しやすい価格を設定し、商品の内容量をその価格帯にあわせるようにして販売する戦略
d段階価格戦略:価格の幅が多い商品を高級品、中級品、普及品といった3段階程度のよく売れる価格帯に絞り込んで販売する戦略
e均一価格戦略:仕入れ価格の異なる商品を同一の価格で販売する戦略
f割引価格戦略:メーカー希望小売価格や自店通常価格から一定率を割り引いて販売する戦略
g特別価格(特価)戦略:顧客を集客するために、特定の商品を仕入れ価格より安く販売する戦略
h見切価格戦略:生鮮食品や季節商品を売り切るため、通常価格より大幅に値引きして販売する戦略
i名声価格戦略:その商品が高品質であると顧客に連想させるため、高価格を付けて販売する戦略
jハイ&ロー・プライス戦略(High And Low Price):顧客を集客するために実施する価格戦略
Ex)日替わり特売、週間特売
kエブリデー・ロー・プライス戦略(Everyday Low Price:EDLP):商品や日時を限定することなく、小売業が常時低価格で販売する価格戦略
7-3-2 メーカにおける価格戦略
a建値制(図表7-2):メーカーが設定する各流通段階における製品の価格体系
bオープン価格制:各流通段階における価格設定権をそれぞれの流通業者にゆだねる価格体系
c再販売価格維持契約:メーカーなどが流通業者に指定した価格で販売させる契約
←書籍、雑誌、新聞、レコード盤、音楽用テープ、CDのみ
d上澄吸収価格戦略:市場導入期にある製品の価格を比較的高い価格で販売する戦略
e浸透価格戦略:市場導入期にある製品を早期に市場に浸透させるため低価格で販売する戦略
fジレット・モデル戦略:商品本体を無料もしくは低価格で提供し、消耗する付属品を販売することで、継続した収益を維持しようとする戦略
7-3-3 最近の価格戦略動向
aダイナミップライジング:供給量と需要量に応じて価格を上下させる戦略
bサブスクリプション:一定期間分の料金を先払いしその期間内はどれだけ利用しても追加料金を支払わなくてよい戦略
7-3-4 価格における問題
a二重価格表示:実際の販売価格に、メーカー希望小売価格等を併記して安さを強調する価格表示
b価格カルテル:メーカー間や卸売業者間そして小売業者間で販売価格の協定を結ぶ
c抱き合わせ(バンドル)販売:人気がある商品とあまり人気のない商品をセットで販売し、売上増加を図る戦略
7-4 競合における価格戦略
7-4-1 競合・代替品の価格
a競合・代替品の価格に応じて自社の価格を設定せざるを得ない
b顧客がどちらにしようかと考える場合に競合・代替品が発生
7-4-2 競合からの価格競争への対応(図表7-3)
a競合メーカーが自社より劣位の場合
←価格引き下げ戦略に必要なコストとその戦略を実施しない場合の売上減少分で判断
b競合メーカーが同等もしくは優位の場合
←上回っている場合は適切な対応、少ない場合は防御戦略
7-5 インターネットの普及が及ぼす価格戦略への影響
a 顧客は店舗に訪れることなく、多数の小売業の価格を比較することが可能
b 顧客が価格提示して、それに応じてくれる企業を探すことが可能
c 無料化
Ex)LINE
dアマゾンなどによるリコメンデーション
←まだ購入していない商品を奨める
e ネットオークション
←価格を交渉したり、販売することが可能
第8章 プロモーション戦略の基礎
8-1 プロモーションとは
←商品やサービスを販売したい相手にメッセージを発信するあらゆるコミュニケーションおよびコミュニケーションツール
8-1-1 広告
a 2022年度の日本の総広告費(7兆1021億円)のうち3割(2兆3985円)がマスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)(図表8-1)
b 現在、広告費において最も大きな媒体はインターネット
c 日本と同じく世界でも構成比が最も大きいのはデジタル媒体(図表8-2)
d 繰り返し同じメッセージを発信することが可能
e 必ずしも伝わってほしい人にメッセージが伝わるとは限らない
←一方的な情報伝達であるため
f 目的に応じた適切な媒体の選択が重要
←伝えたい消費者層や、媒体利用にかかる費用を考慮すべき
8-1-2 セールス・プロモーション
a 顧客あるいは消費者に企業が直接的に情報提供し、購入欲求を高める手段
←割引、クーポン券の配布、ポイント付与など
b プロモーション終了後のことも考慮すべき
c 流通チャネル(卸売業者や小売業者)や社内の営業担当者に向けても提供
←販売数量に応じた報奨金や社内販売コンテストの実施など
8-1-3 パブリック・リレーションズ
a 組織が関係者に自社の情報を提供し、適切な関係を保つための活動
←広報活動(PR活動)
b 報道機関に情報を提供し、記事やニュースとして企業活動や自社商品・サービスの情報を報道してもらうことも含む
←パブリシティ
c 広告より中立性があり、信頼度が高い情報を提供
←報道機関という第三者による情報だから
d 広告に比べ低コストだが、確実性に乏しい
←報道機関が記事やニュースにしたいと思うような情報でなければ報道されないから
8-1-4 人的販売
a 顧客や消費者に直接的に製品情報を提供し、購入意欲を増すように働きかけ、説得する行動
b 消費者が購入するところまでをサポート
←広告と異なる点
c 直接顧客対応することによる即時効果
d 販売員個人の資質能力によって成果が左右される
→販売員は販売員教育訓練を受ける
8-1-5 ダイレクト・マーケティング
a 慎重にターゲットを絞った消費者と直接コミュニケーション
←ダイレクトメールやテレ・マーケティング(消費者に電話)など
b 個々の趣向に合わせたプロモーションが可能
c 顧客情報管理にコストがかかる
d 顧客情報管理に細心の注意を払う必要あり
8-2 プロモーション戦略
8-2-1 戦略立案
a 目的・目標の設定
←ターゲット、知名度目標(全国規模なのか地域限定なのか)、売上高目標の設定など
b 予算
←売上比率法(一定の比率を乗じて設定)、競合企業対抗法(競合相手に合わせて設定)、目標課題法(最初に決めた目的、目標に基づいて設定)、支出予算額可能法(支出可能な予算を設定)など
c プロモーション・ツールの選択
←プッシュ型(消費者の手の届くところまで流通させる)とプル型(広告などで呼びかける)のバランスが大事
8-2-2 総合型マーケティング・コミュニケーション
a 複数のツールを有機的に相互作用
b それぞれのツールをいつどこでどの程度行うのかを総合的に配置
→相乗効果が期待できるような戦略を立案
8-2-3 評価測定
a 活動のコスト、売上高などの数値的把握
→評価
b 得意先からのレビューや消費者へのアンケート調査が例
c 評価を今後に活かしていく
←プロモーション戦略や実施計画の練り直し
8-3 国際プロモーション戦略
a 商品やサービスが国境を越えることによるプロモーション活動の国際化
b オリンピックやサッカーワールドカップの公式スポンサーが例
c 文化習慣の相違の考慮が必要
←やり方を間違えると問題が発生
d 本国と当該市場との連携が必要
第9章 チャネル戦略の基礎
9-1 チャネル組織化の意義
9-1-1 直接流通か間接流通か
a流通チャネル:製品が消費者によって使用・消費されるまでの製品の流れを示した経路
b直接流通
←メーカー自身で販売する
c間接流通
←人の手を借りる(卸業者や小売業者が介在する)
9-1-2 チャネル戦略の基本問題
a間接流通を採用する場合
bメーカーは販売を担う流通業者(卸業者や小売業者)の選定が必要
cメーカーは自身の製品をできる限り優先的に販売することを希望
dそれなりの報酬を用意することが必要
9-1-3 チャネル・デザインの意思決定課題
a流通のどの段階まで統合ないし取引を行うかの意思決定が必要
bコスト…オペレーション、取引の2種類
9-1-4オペレーション・コスト
←流通における遂行すべき活動に関わる費用
a企業ごとにコストや成果は異なる
←企業が保有する経営資源の質や量が異なるため
b経営資源:ヒト、モノ、カネ、情報
9-1-5取引コスト
←取引自体に関連して負担しなければならない費用
a取引相手の探索に関する情報収集費用
b取引契約締結に関わる交渉の費用
c取引が契約どおりに行われたのかを監視するための費用
dこれらのコストは環境が不確実な場合に高い
←限定合理性や機会主義的行動が要因
e限定合理性
←人間の将来予測や情報収集・処理能力は限られており、その中で合理的な意思決定
f機会主義的行動
←モラルに制約されることなく自分さえよければ良いという考え方で行動
g関係特殊資産も取引コストに関連
←特定の取引相手との間にある別の取引相手には利用できない、もしくは売却すら難しい資産
9-1-6販路の集中度(図表9-1)
a高集中度販路 Ex)加工食品業界
b低集中度販路 Ex)日本酒業界
9-2 チャネル・デザインと管理
9-2-1 チャネル・デザインの基準
① 長短基準
←チャネルが何段階で設定されているか
aチャネル統制や情報伝達、流通活動への必要投資量や市場リスク負担に関連
bチャネルの段階数が短い場合
→情報伝達が効率的、市場リスクが高い
cチャネルの段階数が長い場合
→情報伝達が非効率、市場リスクは低い
② 広狭基準
←ある特定地域内における流通業者の多寡に関する
a流通業者を特定地域内にどのくらいの密度で設定するかを決定
b広いチャネルの(流通業者を制限しない)場合
←製品露出度は高いが、ブランド内競争が高まる
c狭いチャネルの(流通業者を限定する)場合
←製品露出度は低いがブランド内競争は回避
③ 開閉基準
←流通業者の特定メーカーの販売先として専属度合いに関する
a閉じたチャネル
←特定メーカーに占められる度合いが高い
b開いたチャネル
←特定メーカーに占められる度合いが低い
9-2-2主要なチャネルのデザイン(図表9-2)
① 開放的流通:製品を可能な限り多くの販売業者の店頭に並べてもらうこと
② 選択的流通:ある一定の基準に基づき、一定地域における販売業者を選択すること
③ 排他的流通:一定地域における販売権を特定の販売会社に与えること
a消費者の買物行動における探索性向を重視
b探索性向:消費者が商品を探す努力の程度
←探索価値と探索費用によって求められる
c探索価値:探索によって得られる価値
d探索費用:探索のために生じる物理的・肉体的・心理的な費用
e探索価値が探索費用を上回ると探索性向が増大
f垂直的マーケティング・システム(VMS)
←チャネルの組織化を垂直的な関係の中で捉える
g企業システム:生産段階と流通段階が単一の資本のもとに垂直統合
h契約システム:資本の異なる企業間でチャネルの異なる段階が統合
i管理システム:資本の異なる企業の間でチャネルの異なる段階がゆるやかに統合
9-2-3 パワーと依存度
aパワー:メーカーが流通業者の行為に対して与えることのできる能力
d取引依存度モデル(図表9-3)
c販売依存度と仕入依存度
9-2-4 建値制とリベート
a建値制:メーカーが希望小売価格を設定し、卸売・小売段階の仕入価格を提示
bリベート:取引条件に応じて支給される割戻金
cアローワンス:メーカーが小売業者や卸売業者への販売促進活動に対して支払う手数料
d取引交渉費用の節約、特定製品の販売促進や代金回収
9-3 高集中度販路時代のチャネル戦略
9-3-1 パワー関係の変化に伴うチャネル戦略の見直し
a消費財の分野において大規模小売業者が台頭
→高集中度販路化
bチャネル管理の方法の転換(建値制やリベート)
c卸売構造の広域化、大型化
9-3-2 製販連携①(提案型営業)
a日本の食品業界ではECR(効率的な消費者対応)への取り組みが普及
bカテゴリー・マネジメント
←商品カテゴリーレベル、ジャンルやテーマでの売場に対するトータルでの売上高や最大化を図る手法
Ex)酒類や加工食品ではなくビールやワイン
9-3-3 製販連携②(製品開発による連携)
aプライベート・ブランド
←小売業者や卸売業者が主導となって開発
Ex)セブンプレミアム
9-3-4 オムニチャネルによる協働
aオムニチャネル
←消費者にシームレスな買物経験の提供が目的
bチャネルを様々な情報が交換されるコミュニケーション手段として重視し、顧客接点を拡大