担当:とみ

 

Q1 4-1-1タンザニアで起きた学校閉鎖事件についてさらに詳しく教えて頂きたいです。

タンザニアで起きた学校閉鎖事件は、同じ教室にいない人にも伝染したのですか?

タンザニアの学校閉鎖事件について、笑いが伝染することは良い事だと思うが、なぜ閉鎖してしまったのか?

A.1 この事件は通称タンガニーカの笑い伝染病と呼ばれます。1962年1月31日、タンガニーカのビクトリア湖西海岸にあるカシャシャという村で発生しました。タンガニーカとはインド洋に面したアフリカ南東部に、かつて存在した国ですが、1964年に同国とザンジバルが連合し、「タンザニア連合共和国」となったため、現在はタンザニア連合共和国となりました。

ミッション系全寮制女子校の三人の女子生徒から発生し、笑いが生徒生徒159人中95人(12歳から18歳)にまで感染しました。症状は数時間で治まる者もいれば、16日間続いた者もいました。生徒たちは笑い病のせいで授業に集中できなくなり、教師たちも異様な光景から職場放棄をしたために学校は閉鎖となりました。この不可解な笑いは近隣の村、さらには隣国ウガンダへと飛び火し、深刻な社会現象化しました。笑いが伝染することは認められていますが、ほとんどの場合は自然発生的な感情表現です。しかし、今回の事件は笑いすぎによる全身の痛み疲労感、失神、呼吸困難、怒りや攻撃性、悲鳴などの実害があったとされます。医者や科学者も暴発の直接原因を見つけられませんでしたが一説によると慢性的なストレスが原因とされています。

今日では、集団心因性疾患(MPI)と呼ばれており、心因性のもので、症状を示した集団には共通するストレス要因が根底にあります。MPIは、地位の低い人たちの最終手段で『何かが間違っている』ということを表現するためのシンプルな方法です。

タンガニーカは1962年当時、独立を勝ち取ったばかりだったため、エリートの子女が学ぶ寄宿学校では、教師や保護者からの期待も高く、生徒たちはストレスを感じていたと報告されています。

また、社会学者のロバート・バーソロミューと精神病学者のサイモン・ウェセリーは、地域文化特有のヒステリー伝染であろうという仮説を提唱しています。当時のタンガニーカの社会は厳格な伝統的長老が差配していました。生徒たちは家庭における伝統的保守主義と、そうした伝統を崩そうとするような学校で学ぶ新しい思想の衝突による不協和音に晒されらた結果、転換反応を引き起こしたと述べています。

 

Q.2 笑い声の中でも誘発されやすいものと違いがあるのか気になりました。

A.2 笑いを誘発するメディアの音響的な特徴を明らかにすることを目的とした研究から引用します。

文脈から発生する笑いと、物理的な音響特徴量から誘発される笑いを分離して調査します。前者の結果、笑いを誘発する上では文脈の影響が極めて強いこと、発生される音声だけでなく、その音声」に対してタイミング良く付加された笑い声などの音声の音響特徴量以外の物理的特性の影響も大きいという結果が得られました。

 また、後者では音声の基本周波数と話速をターゲットに研究を行い、笑いを引き起こす上で必要となる音響特徴量の範囲を分析しました。結果として、聴衆が通常聴いたことの無い予期しない音声を聞いたときに笑いが誘発されることが分かりました。また、結果を詳細に分析したところ、話速が遅く、基本周波数が高い条件においてもっとも面白さが誘起されるという結果になりました。

 

Q.3 3-1で笑顔は伝染して楽しい気分になるとのことでしたが、これはその時の気持ちに関わらずどんな時でも気分が上がるということでしょうか?

A.3 その時に気分の応じて変化するかどうかは完全に個人の心理的な影響のため、確かに一概に全ての人が笑顔が伝染して気分が上がるとは言えません。研究では、笑顔に似た表情を作ることで、脳の、脳の快感物質であるドーパミ ン系の神経活動が活性化され、それが楽しさの感 情喚起につながると言われています。笑顔という表情を作ることが感情変化のきっかけとなるのです。

また、笑顔の伝染が起こる原因に他者の行動をまるで自分が行動しているかのように、同じ活動を促す神経細胞であるミラー・ニューロンが挙げられます。

 

Q.4 ラフトトラックについて教えてください。

A.4 笑いを演出する場面で用いられた音について日本のバラエティ番組においた調査があります。効果音系として「場面や動きを強調するイメージ音」「場面の音を強調した誇張音」と、音楽系として「場面の雰囲気を醸し出す背景音楽(BGM)」と「場面に特定の意味をもたらすシンボリックな音楽」に分離されました。この中でラフトラックは効果音系の後者であり、音がある映像の方が音がない映像に比べて面白く、活気のある印象になることが分かっています。