担当:なゆ

 

1 株式会社サンリオ

 

1-1 会社概要

1-1-1設立:1960年8月10日

1-1-2 資本金:100億円(2023年3月31日現在)

1-1-3 売上高:726億2400万円

1-1-4 従業員数:630名

1-1-5 企業理念:みんななかよく

 

1-2 名前の由来

1-2-1 英語でいうと「セイントリバー」、スペイン語で「聖なる河」という意味

a 世界三大文明は川の流域に起こった

b 新しい文化産業を興したいという願い

 

1-3 事業内容

1-3-1 ソーシャル・コミュニケーション・ギフト商品の企画・販売

1-3-2 グリーティングカードの企画・販売

1-3-3 出版物の企画・販売

1-3-4 レストランの運営

1-3-5 映画の製作・配給・販売

1-3-6 ビデオソフトの製作・販売

1-3-7 ライブエンターテインメントの企画・公演

1-3-8 著作権の許諾

1-3-9 テーマパーク事業

1-3-10 教育事業

1-3-11 デジタルコンテンツの企画・販売および配信

1-3-12 広告事業

 

2 キャラクター

 

2-1 キャラクター:独自の性格や特徴を持つ架空の人物や生物を指す

Ex) 物語や作品に登場する登場人物、企業のマスコット

2-1-1 キャラクターの役割

a その外見や性格、背景などの要素によって魅力を持つ

b 視聴者や読者に感情移入や共感を促す

2-1-2 キャラクターの語源

a ギリシャ語の「kharakter」

b 刻印や印象を意味する言葉

c その後、英語の「character」を経て日本でも使用されるようになる

 

2-2 日本におけるキャラクター

2-2-1 1970年代に台頭

a 子ども物品に留まらず、おとなのものとして次第に頭角を現す

2-2-2 1980年代以降

a 多くの企業、機関、大きなイベントでマスコットキャラクターが用意される

b 新たにデザインされることも、すでによく知られているまんがやアニメのキャラクターを使用することもある

Ex) c 銀行が宣伝や手回り品に大々的に使用

←トムとジェリーが横浜銀行で、ハローキティが日本信用金庫で使用されている

d 官公庁が広報用に使用

e 万博に典型される大きなイベントに使用

←2005年の愛知万博における、キッコロとモリゾーという森を擬人化したキャラクター

2-2-3 動物的衝動

a 居心地の良さを維持

b 心理学でいう「転移」:はしたなかったり、厄介だったりする事物から視線や感情をそらせる心理メカニズム

c キャラクターに彩られた世界はとげとげしい感情を巧みに和らげる

d 動物キャラクターがよく使われる

 

2-3 キャラクターの歩み

2-3-1 日常の唯物世界に情緒と人間味を与える

2-3-2 その唯物世界を商品化する

2-3-3 売り買いされるキャラクター

a 「ポケットに入る仲良しさん」

b 持ち運びできる相棒として己の身体の一部分にさえなる

c キャラクターに囲まれることで、自分がよく知っている人間に守ってもらっているかのような居心地の良い空間が生まれる

2-3-4 小型化によって増す便利さ

Ex) ケータイのストラップとして「キャラクター」を垂らす

a 日常の電化製品がキャラクターを顕示する場に

b 私が私であること、アイデンティティの保証

2-3-5 キャラクターグッズを所有するということ

a キャラクターに託されたイメージを買い入れる

b そこから選択的に己の身体の一部とする

 

2-4 森羅万象キャラクター化してしまう

2-4-1 ロゴ化して何にでも使える

a 物品を彩るブランド

b 映像的シンボル

c 無限に増殖できる

→商品の数量、品数がどんなに増えても対応できる

d どんなモノや外見にもキャラクターはロゴとしてなじむ

2-4-2 現実世界の実在人がキャラクターに変貌

a 戯画化、ミニチュア化、商品化

Ex)小泉純一郎首相

b 首相に就任してすぐの2001年、キュートに戯画化

c 自由民主党の発案で「シシロー」というキャラクターが作られた

d 小泉の髪型がライオンのたてがみに似ている

e 実在の人物や風貌や性格をしっかりとキャラクター属性として取り込む

→小泉の「クール」なイメージが「キュート」なシシローに移植

2-4-3 キャラクター化することの効果

a 親しみやすさが生まれ、なじまれる

b キャラクターの延長で本人も知られる

 

3 サンリオにおけるキャラクタービジネス

 

3-1 株式会社サンリオ前社長 辻信太郎の経営戦略

3-1-1 競争しないことが一番望ましい

a 同じ土俵に上がる人数が多くなるほど生き残り競争が激しくなる

b 争って「ナンバーワン」を目指すのではなく、いつも「オンリーワン」になろうと努力する

 

3-2 サンリオの前身 「山梨シルクセンター」

3-2-1 ゴムぞうりが第一号のヒット商品

←今でいうビーチサンダル

a 「オリエンタルサンダル」として外国から人気

b きれいな花柄をつけると国内外で大当たり

c デザインという付加価値をつけるとモノは全く違う売れ方をする

 

3-3 キャラクター大作戦

3-3-1 キャラクターとしていちごの絵をつけた商品

a 銀座・三愛や百貨店の店頭は「かわいいいちごの小物たち」を目当ての若い女の子でいっぱいに

b 次にさくらんぼを使って商品を製造

←全く売れなかった

3-3-2 著名人に描いてもらった絵をキャラクター化

Ex) 水森亜土、やなせたかし、トシコ・ムトウ

 

3-4 知的所有権の世界

3-4-1 特許を取った商品は15年間類似商品を市場から排除することが可能

3-4-2 死後50年間は権利が保障される

3-4-3 社内にデザイン部門を設け、デザイナーの採用を開始

 

3-5 自前のキャラクターを作る

3-5-1 どんな動物が好まれるかのアンケート調査

a イヌ、ネコ、クマの順で人気だった

b りす、ひよこ、アヒル、うさぎなども高ポイント

←しかしこれらを支持したほとんどは幼児

c ゾウ、ライオン、キリンなどのワイルドアニマルはキャラクターとしての人気はない

d 鳥類はふくろう、ペンギンをのぞいて全滅

←神経質なイメージを与える

3-5-2 色

a 茶色、グリーンなどのアースカラーはフォーマルで堅い感じを与える

b ブルーはユーモラス、スポーティー、多少男性的なイメージ

←スポーツ感覚には適している

c 赤は、白や黄色との組み合わせが好まれる

d 赤系統の色は、温かさ、少女、小動物、愛を象徴

←ハローキティはこの結果を組み合わせて誕生

 

3-6 キャラクターマネジメント

3-6-1 情報の波及

a テレビや出版物で露出しすぎると飽きも早い

b 口コミを中心にステップバイステップで広げる

3-6-2 ネガティブアプローチに気をつける

a 人を傷つけるナイフやピストル

b 灰皿やパイプも含むタバコ

c ワインやビールなどのソフトリカーをのぞくお酒

d ドラック関係

e 大人の玩具

←イメージを損なわないように使用禁止

3-6-3 危機管理

a 自社が脱税などの反社会的行為を行う

b 社員が飲酒運転でひき逃げなど犯罪を犯す

→キャラクターのイメージは台無し、キャラクター使用企業は契約破棄を通告してくる恐れ

 

3-7 商品開発

3-7-1 キャラクター商品群

a スクールサプライ、バッグ類、台所用品、衣料品、アクセサリー、食品のカテゴリーに大別

b 全体のアイテム数はほとんど変わらない

c 毎年9月にカテゴリー編成の見直し

d 毎月カテゴリー内の商品改廃を実施

e 毎月600アイテムの新製品が投入、同じく600アイテムをスクラップ

3-7-2 キャラクターは真似されることはないけれど、商品はいくらでも模倣が可能

a Aという商品の真似をしてA’という商品を作り、そこにキャラクターをつける

→単なる模倣と言われ場合によっては訴えられる

b A,B,Cの商品のいいところを編集・模倣してXという別の商品を作り、そこにキャラクターをつける

→立派な新製品となる

Ex) ハローキティの3Dメガネ

a 見かけは小さくて値段も安いがハローキティの顔がロゴマークとして収納

b どんな光源に照らしてもハローキティの像が浮かび上がる特殊レンズがはめ込まれている

←どんなものを眺めてもハローキティという「キャラクター」が重なりサンリオの存在をアピール

 

3-8 著作権ビジネスの注意点

3-8-1 キャラクター名をつける

a 他の国の多言語でも意味が変わらないようにする

b あらかじめ登録したい国をリストアップして、本用にその名前で登録できるのか事前に調べる

 

3-9 キーワードは「ショウジョ」

3-9-1 1970年代

a 「ショウジョ」を独立した人格、象徴、フェチ的崇拝物、モノ、消費者として眺める視点が始まる

b 少女と女の子文化こそがカワイイの発祥の地

→女性色の強い、若年寄りの、理性より感性を重んじる独特の美意識をそなえ、様々な感性の商品化に精進する今の日本の姿が誕生

3-9-2 ファンシーグッズ

←女の子用に特化された商品の総称でありサンリオが先導する分野

3-9-3 顧客層

a かつては縫物をはじめとする、家事仕事に従事する婦人

b もっと若年の女性、つまりショウジョを顧客として取り込む

←家事や家計の縛りがさしあたってなくて、それなりに自由に使えるお金があってフリルな装飾品を買える層

c 取り扱う商品を実用品から装飾品に切り替え

←実用一点張りではなくキュートさが売りの商品に舵を切って今までにない消費者層の開拓

d その後次第にキュートが若年層ではない人々にも広まるにつれてサンリオの顧客に再び主婦層が重なる

 

4 ハローキティ

 

4-1 プロフィール

4-1-1 デビュー年

a 1974年(デザイン制作された年)

4-1-2 キャラ紹介

a 誕生日:11月1日

b 身長:りんご5個分

c 体重:りんご3個分

d 明るくてやさしい女のコ

e クッキーを作ったり、ピアノを弾くのが大好き

f 夢はピアニストか詩人になること

g 音楽と英語が得意

h 好きな食べ物はママが作ったアップルパイ

i 双子の妹、ミミィとは大のなかよし

→詳細にキャラクター設定がされている

4-1-3 キャラクターにストーリーがあることで消費者は関心を持つ

4-1-4 新しいファミリーも徐々に増やした

a 家族:ミミィ、パパ、ママ、おじいちゃん、おばあちゃん

b ボーイフレンド:ダニエル スター

c お友だち:タイニーチャム、モーリー、ジュディ、ジョーイ、ロッティ、ローリー、ティム&タミー、フィーフィー、ティッピー、トレーシー、ジョディ、トーマス

 

4-2 ハローキティはどう生み出されたか

4-2-1 デザイナー

a 1974-1976 清水郁子

b 1976-1980 米窪節子

c 1980- 山口裕子

4-2-2 山口裕子

a マスコミによく登場し、サンリオ好き、キティ好きの人々をそのまま自分のファンとして獲得

b キティの最新商品の開発を司る特別なシンボル的存在として彼女を喧伝

←積極的に世間に押し出す

c 日本のキティファンは、山口とハローキティの結びつきを強く意識

d ハローキティは「一人の女性が半生かけて個人的感性から育まれているのだ」というイメージの共有

←男ばかりの重役がひしめく密室で商売の道具としていじられているのではない

e 世の流行に沿ってデザインが決定

←その判断は組織ではなく一人のデザイナーの手でなされている、と印象付け

 

4-3 ハローキティと「カワイイ」

4-3-1 素晴らしい夢がいっぱい、憧れ、ポーカーフェイス、母性を刺激されて守ってやりたくなるオーラ、弱さ、従順さ、庇護心、子ども心がある

4-3-2 ブームの主役でもある

 

4-4 はやりものでは終わらない

4-4-1 サンリオが目指すもの

a 世に広く知られ、至る所で人々の目に触れ、永続的に底力を見せる商品

4-4-2 キティの単純画像化を強める

a リボンはより大きくする

b キティとしての存在感はより繊細でさりげなく

→あらゆる部位に抽象化を施していくことで、図像としての存在感を増す

 

4-5 日本はキティでいっぱい

4-5-1 日本中のデパート、ギフトショップ、地下鉄のキオスク、おもちゃグッズ店、土産物店で並ぶ

←お財布にお金がたっぷりあればあったでその財力にふさわしいキティ商品が用意されているし、それなりの値で買える商品もしっかり用意されている

a ダイヤモンドで飾られた宝飾品、特別仕様車、特別仕様スクーター、特別仕様パソコンなどの高級品

b 消しゴム、ケータイ電話、箸、ティッシュといったお手頃商品

 

4-6 「子ども向き」のレッテルを超えていく

4-6-1 ハローキティが生まれた当初は、原色で構成された、顔はまっすぐこっち向きの口無し子猫

4-6-2 弁当箱や小銭入れや鉛筆などの子供向け商品のお飾りで印刷されるのも隅の方

4-6-3 絵柄もフラットで抽象的で徹底してシンプルな線のみで構成されている

a 見る側が創造力で補完する

b お子様の雰囲気以外何の工夫も仕掛けもない

4-6-4 ショウジョになりたがる女性向けに市場開拓

a ハローキティ商品の「カワイイ」属性を土台として色々な女性を振り向かせるような工夫

b 使う色数、着せる衣装、着飾る服飾、ポーズを増やす

c タイアップ商品の点数も増えた

 

4-7 「カワイイ」の後ろにあるのは「アソビ」の精神

4-7-1 「カワイイ」が商品を通じて広まり、その特徴である「子ども心」を強みにしている

←ほんの表面でしかない

a 無垢さが複雑に入り組み多層をなすイメージの形成のもと

b ショウジョにはいろいろな顔があり時と文脈によって見える顔と見えない顔が移り変わる

c 「カワイイ」にも、「キュート」という顔とともに、いろいろなイメージや解釈、論評やニュアンスが折り重なるなかに、「キュート」とは違う顔が芽生える

4-7-2 『Kitty Goods Collection』

a 1998年発行の表紙

b 色彩もポーズも衣装も1974年の誕生時のものとかけ離れた大胆なもの

c いちいちこれに目くじらを立てるものはいない

d サンリオは、ハローキティをとことん羽ばたかせることで常に新しい魅力を開拓し続ける

→子どもと大人の両方を惹きつける

 

4-8 ハローキティと相互依存する

4-8-1 マスコット・キャラクターがいつでも一緒にいてくれることで、人は孤独ではなく絆を噛み締めながら生きていくことが可能

a 口のない顔

b 見る側は、自分のその時の気分をそのままそこに投影する

c 何にでもなじむ鏡のようなもので、どんなときでも相手にぴったり寄り添う

d ファンにとって生きていくうえでなくてはならない心の支え

e どんなときも変わらぬキュートな感性

f なんとかしてやらないといけないという気持ちをファンのひとりひとりにかきたてる

4-8-2 ハローキティはファンの力によって商品のいとしての命を支えられている

a ファンに購入し続けてもらえなければ命尽きる

4-8-3 か弱さが強みとなって人々を惹きつける