担当:すな


0.はじめに
ⅰ前回はコメダ珈琲店とコンビニコーヒーの研究
ⅱ.コンビニコーヒーの市場規模
ⅲ.カフェや他の飲料に顧客を奪われ、近年伸び悩む缶コーヒー市場

1.コンビニコーヒー市場規模
a.消費者はコーヒーを飲む機会が増えている
a-1.1週間で消費するコーヒー:10.93杯(2010年)
a-2.2002年と比較してほぼ1杯分多い

b.市場規模見込み
b-1.セブンイレブンの販売目標は1店1日60杯
b-2.各社の目標を合算した市場規模450億円超(2013年度)
b-3.マクドナルドなどを合わせると800億円
b-4.1兆円のコーヒー市場からみると小さい規模
b-5.大手5社の提供店舗は全店舗の約7割、3万7000店に膨らむ見通し(2013年度末)
→身近な場所に次々コーヒーを楽しむ機会が増える

c.100円~200円の価格帯がコーヒー市場激戦区

2.マックカフェ バイ バリスタ
a.2012年7月に「原宿表参道店」内にオープン

b.本格派カフェコーヒー
b-1.専任バリスタがいる
b-2.陶器のカップとグラスに淹れる
b-3.店舗内に専用のブースを設ける
b-4.ドリンク全19種類、フード全15種類
b-5.カフェラテS230円、M270円

c.マクドナルドならではのカフェ
c-1.エキストラショットやクリーム追加などが可能
c-2.紅茶や子供用メニューも用意→家族で楽しめる
c-3.スタバなどにはない大衆的空感

d.Best Value for money
d-1.選りすぐられた高品質の豆
d-2.専用エスプレッソマシンの導入
d-3.コーヒー類の中心価格は200円台←マクドナルドならではのお得な価格設定

お客様の期待を超える価値を提供する

e.店舗展開
e-1.最初に都市部に開き認知度を高める:1号店は原宿表参道、2号店は六本木
e-2.郊外や地方を攻める←都市部は家賃や人件費が高く儲けが出にくい
e-3.幹線道路と生活者道路の交差点角の物件を確保←少しでも有利な情報を集めるため
e-4.5年かけて1,000店(総店舗数の3割)でのカフェ併設を目指す

f.過去の失敗
f-1.2007年にカフェ展開を開始
f-2.15店舗に留まり、撤退
f-3.安定した客を見込める店内に併設

g.課題とターゲット層
g-1.広い店内で飲食する客を増やすこと
g-2.ターゲット層:子供連れの若い母親、高齢者のお茶飲み場

3.缶コーヒー市場
3-1.横ばいの市場


図1 缶コーヒー市場
(2012.9.25 日経産業新聞16ページより引用)

ⅰ.飲料で最大の市場ながら、ここ数年4億ケース弱で横ばいが続く
ⅱ.カフェや他の飲料に需要を奪われている→2013年1月~3月、缶コーヒーの売り上げは前年比4%減
ⅲ.消費者の.健康・ダイエット志向→砂糖やカフェインが多いイメージの缶コーヒーを敬遠

a.缶コーヒーを飲む頻度


図2 缶コーヒー飲用頻度
(マイボイスコムHPより筆者作成)

マイボイスコムが10代~50代の男女12,735人にインターネット調査したもの。期間は2013年3月1日~5日。

a-1.缶コーヒーを飲む人は全体の74.7%
a-2.過去の調査と比べると減少傾向にある

表1 男女の缶コーヒーを飲む頻度の違い
男性 女性
毎日飲む 25% 8%
2~3日に1回 22% 10%
(2012.2.26 日経流通新聞 2ページより筆者作成)

マクロミルが全国の20~60代男女1000人にインターネット調査したもの。期間は2012年11月9日~11日。

a-3.表1より男性の支持が高く、女性からは人気がない

b.缶コーヒーの強み
b-1.自動販売機で気軽に手に入れることが可能
(23人の意見のうち8人に挙げられる)
b-2.缶によって冷たさ、温かさが維持される

図3 缶コーヒー上位5ブランドのシェア
(食品マーケティング研究所調べ 2012)

3-2.缶コーヒー原点回帰
3-2-1.ボス(サントリー食品インターナショナル)
a. 「ボス 超」(120円):2012.8発売
a-1. 発売20周年記念商品第1弾
a-2.10日間で100万ケースを突破
a-3.味はスタンダートと呼ばれる砂糖、ミルク入り
a-4.パッケージ:20周年ロゴメダルを中央に配置、商品名を大きく

b.スタンダード人気の低下
b-1.スタンダード:缶コーヒー最大の市場
b-2.焙煎方法を工夫:コクの強いグアテマラ産の豆を超深煎りに仕上げ、独自の焙煎・抽出
b-3.味に苦みや深みを加え、甘さや後味の悪さを抑える

3-2--2.ワンダ(アサヒ飲料)
a. 「ワンダ ワンダフルブレンド」(120円):2012.11発売
a-1.“コーヒーのうまみや雑味のないキレ味を引き出す”
a-2.誕生当時(1997年)の製法やデザインを再現
a-3.最先端の製造手法を復活→ブレンドした豆を5段階の異なる焙煎度でロースト
a-4.ブランドの原点となった商品の復刻→もう一度消費者にワンダの良さを知ってもらう
a-5.パッケージ:発売当時の印象をそのままに

b.「ザ・スタンダード」(120円):2013.1月発売
b-1.ターゲット:40~50歳代の男性
b-2.エスプレッソの力強いコクを引き出す
b-3.本格コーヒーのファン層を新たに取り込む

3-2-3.ダイドーブレンド(ダイドードリンコ)
a.求められる缶コーヒー
a-1.缶コーヒーを飲まない理由:「おいしくない」「味が好みに合わない」
a-2.重視すること:「豊かで複雑な味わい」、「最適にブレンドされた」缶コーヒー
⇒ユーザーは“味覚”を重視していると独自調査によって認識

図4 飲みたい理想の缶コーヒー
(ダイドードリンコHPより筆者作成)

b.味覚の価値の向上
b-1.「ダイドーブレンド」ブランドを一新:こだわり続けた味を一から変更
b-2.パッケージを刷新、ロゴマークを大きくした

3-2-4.缶コーヒーの問題
a.顧客層
ⅰ.キリンビバレッジの「ファイア ネオ」:2011年発売
→携帯しやすく、味がすっきりしている点をアピール.
→小型ペットボトルにし、若者や女性を引き付けようとする
→効果はいまひとつ、現在は販売を縮小

ⅱ.アサヒ飲料の「ワンダ アイムフリー」:2011年発売
→カフェインレスの缶コーヒー
→若い女性に照準を合わせる
→すでに販売終了

ⅲ. 日本コカコーラ社の「LUANA」:2013.5発売
→甘くないペットボトルタイプのミルク入りコーヒー
→交通広告やCMを大量投入してキャンペーン展開
⇒初回投入分の売れ行きは他の新商品よりも良い反応

b.ヘビーユーザー
ⅰ.20代の若年層のサラリーマンは缶コーヒーを飲む習慣がない
ⅱ.ヘビーユーザーの高齢化→市場の減少を引き起こす

新たな需要を掘り起こすことがカギ

c.他社との差異化
ⅰ.健康・ダイエット志向を高める消費者
ⅱ.微糖やブラック、カフェインレスの商品開発
ⅲ.大手ブランドすべてで微糖やブラックなどの商品が出揃う
ⅳ.現状では他社との違いを出すことが難しい
→ブランドの特徴を際立たせ、より本格的な香りや味わいを追求した商品を開発

4.缶コーヒーVSコンビニコーヒー
a.缶コーヒー
a-1.ターゲット:30~50代の働く男性
a-2.価格:120円前後
a-3.強み:自動販売機で気軽にどこでも買うことができる

b.コンビニコーヒー
b-1.ターゲット:缶コーヒーを飲むイメージのない女性
b-2.価格:コンビニの中で一番店舗数の多いセブンイレブンでは100円
b-3.強み:淹れたての本格コーヒーをのむことができる

c.コンビニコーヒーの影響
c-1.缶コーヒーよりも低価格で本格的なコーヒーを飲むことが可能
c-2.缶コーヒーにとってコンビニは、自動販売機に次ぐ販売チャネル
c-3.男性サラリーマンが流れていく可能性は大いにある

5.ボトル缶コーヒー
5-1.ボトル缶コーヒー市場
a.2003年の販売量は2.1万kl、販売額は53.8億円

 2012年の販売量は27.5万kl、販売額は810.1億円
b.販売量は13倍、販売額は15倍と飛躍的に拡大
c.ボトル缶コーヒー市場が伸びている
d.缶コーヒーの需要が「缶」から「ボトル缶」へ

5-2.ボトル缶のメリット
a.キャップが閉められる
a-1.一気に飲み干す必要がない
a-2.倒しても中身がこぼれないという安心感

b.プルタブ方式
b-1.一旦開封したらすぐに飲み干さなければならない
b-2.需要は「のどが渇いているとき」

5-3.無糖のブラックコーヒーが主流
a.缶コーヒーの主流は糖分・ミルク入り
b.缶やペットボトルよりも飲み口が大きい→香りや味わいを深く楽しめる
c.糖分などを気にする女性客も顧客に取り込める
d.また糖分が少ないことで量を飲むことも可能になる
<270ml前後のサイズ→400mlに容量アップ>
e.ブラックコーヒーは味のごまかしが利かない→香りや余韻がポイント

6.伊藤園の缶コーヒー
a.使用する豆の内製化
a-1.焙煎工場を静岡県牧之原市に新設
a-2.コーヒー豆を効率的に生産:委託では少量ずつの焙煎具の変更、焙煎する量の調整が困難

b.タリーズコーヒージャパン
b-1.2012年10月に発売したタリーズ商品が好調
b-2.主に4種類のラインアップ
b-3.伊藤園の缶コーヒーのシェアは2%強(タリーズコーヒーとW)

c.コメダ珈琲店の台頭
c-1.自社焙煎の目的:「製造」と「販促・宣伝」の両面で缶コーヒーとカフェの相乗効果を出すため
c-2.コメダがタリーズの店舗数を追い越す可能性
c-3.自社焙煎によってカフェ戦争にも勝ち抜こうとする

d.自社焙煎
d-1.臨機応変に深煎り、朝煎りと豆の加工具合を変えられる
d-2. 使う豆の品質が向上する
d-3.商品開発が容易になる
d-4.コンビニではスピード感のある商品開発は生命線

7.まとめ
a.マックカフェ バイ バリスタ
a-1.マクドナルドならではのお得な価格
a-2.大衆的な店内で子連れでも気軽に入れる
a-3.郊外や地方中心に出店することで新規顧客を狙う
⇒コーヒーチェーン店には少なからず影響を及ぼすと考えられる
⇒コメダ珈琲店と同様、ファミリーレストランにも影響       を及ぼす可能性がある

b.缶コーヒー
b-1.ヘビーユーザーが中年の男性に限定され顧客層がなかなか拡大しない
b-2.コンビニという缶コーヒーにとって大きな販売チャネルで低価格コーヒーの出現
b-3.大手各社は原点回帰し本格的な“味”で勝負


⇒缶コーヒーはコンビニコーヒーによる影響を受けると考えられる(実際に4%減している)

8.今後の展望
今回は缶コーヒー市場しか研究ができなかった。次回はチルドカップコーヒー市場、インスタントコーヒーについて研究を進めたい。
またファミリーレストランの利用も研究したい。


<参考文献・URL>
斎田久夫 2012 「日経MJトレンド情報源」日本経済新聞出版社
高井直之 2009 「日本カフェ興亡記」日本偉材新聞出版社
『日本経済産業新聞』 2012年9月25日 「缶コーヒーブランド強化」
『日本経済産業新聞』 2012年12月17日 「缶コーヒー原点回帰」
『日本経済産業新聞』 2012年12月26日 「缶コーヒー」
『日本経済産業新聞』 2013年1月4日 「伊藤園、自社で焙煎」
『日本経済流通新聞』 2013年3月4日 「淹れたてコーヒー実力は」
『日本経済産業新聞』 2013年3月18日 「アサヒ飲料が御ラボ戦略」

gooリサーチ 「ボトル缶コーヒー人気の背景を語る」
http://bizex.goo.ne.jp/release/detail/531267/
週刊ダイヤモンド 「コンビに参戦 新ブランド投入 ますます熱いコーヒー戦争 夏の陣」
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/5741
マイボイスコム 「缶コーヒーの利用」
http://www.myvoice.co.jp/biz/surveys/17601/index.html
ダイドーブレンド 「ダイドーブレンド」
http://blend.dydo.co.jp/
誠スタイル 「マクドナルド、バリスタがいる本格的なカフェをスタート」
http://bizmakoto.jp/style/articles/1207/24/news103.html
日本経済新聞 「マックカフェがスタバと激突」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2600Y_W2A720C1000000/
(URL 最終閲覧日2013.6.19)