《香取神宮の歩き方~神事・祭典》

 香取神宮『大祓』  

 

◆神事としての大祓

 「夏越大祓」と言えば、茅の輪くぐりが連想されます。しかし、神事としては、これだけではありません。

大祓詞の奏上から、 「解き縄」、「裂布」そして「切麻撒米」などの儀 が斎行されます。

 

 

 

【神事を待つ斎庭】

 神事のスタートは15時。

筆者の当社到着から数時間ほど待つことになります。

 

 

◆紙垂と人形(ひとかた)

 榊が付けられた青竹の枠組に茅の輪が設置されています。

茅の輪(=茅草の太綱)には、紙垂が6枚&人形5枚が交互に結わかれています。

 

 

◆辛櫃(からひつ)

 回廊の片隅で出番を待っていました。本日は、この中に形代などが納められます。

辛櫃=神饌など祭に必要な品々を入れて運ぶ、檜で作られた箱の名称です。

 

 

◆形代

 境内に設営された「大祓受付」で形代と茅の輪守りを受け取ります。初穂料500円。

人の形をした形代に氏名などを記入し、息を吹きかけ体をぬぐいます。この所作で、日頃自然と身についた罪・ケガレが形代に移ります

 

 

上記作業を終えたら

形代を手に持ち「茅の輪くぐり」します。

 

 

◆形代納め箱

「 茅の輪くぐり」を終えたら拝殿に向かい、こちらの箱に形代を納めます。

形代は、「大祓神事」を経たうえで、お焚き上げ。そののち、川~海へ流します。

 

 

 

【神事直前】

◆社務所前

 整列して待機する神職。時間になったら、楼門前に向かいます。

 

 

◆茅の輪(午前中)

 筆者が当社に到着した際は、まだこのような状態でした。

 

 

◆神事直前

 形代を入れた辛櫃が運ばれ、茅の輪の下には、三宝を載せた案。そして、神職らが腰かける床几(しょうぎ)も並べられています。輪を跨ぐ傾斜版も外されています。

 

 

◆三宝に乗せられたもの

 清浄な「麻縄・切麻・晒し木綿」が乗せられています。そして、もう1つの案には大麻。

 

 

 

【夏越の大祓】

◆神事開始

 午後3時、香取宮司はじめ16名の神職が斎庭に登場。厳かな空気が漂います。

神職は浄衣を着用し、烏帽子を被ります。

 

 

◆辛櫃を護る

 担当神職は一点を見つめ、微動だにしません。

 

 

◆修祓

 祭典の場合、楼門左手にしつらえられた祓戸にて修祓です。しかし、今回はこちらで斎行。

神道では、神事や祭典において、神さまをお招きする前に心身の罪・穢を祓います。このお祓いを「修祓」といいます。

 

 

◆大祓詞

 奏上が終るまで、頭を垂れたままの姿勢を保ちます。

奏上者の言葉に応えて、神職らは「おお~っ」と警蹕(けいひつ)のような声で返唱します。2回唱和しました。

 

 

◆「切麻撒米(きりぬさ さんまい)」の儀

 切麻を左→右→左と、自身にふりかけ、身に付いた穢れを祓い落します。

切麻は祓の道具のひとつで、《祓のパワー》には強大なものがある、と言われています。

 

 

◆「解き縄」の儀

 右綯い・左綯いの縄の縒(ヨリ)を解き放つことによって、人間が犯した罪穢れを解き放つ意味が込められていると伝わっています。

 

 

◆「烈布(れっぷ)」の儀

右側の神職が布を引き裂いています。

 この儀式は、大祓詞にちなんでおり、清浄な布を引き裂いて罪を贖い、穢れを祓います。

「衣ずれの音」は魔物が嫌う、とも言われます。

 

 

◆大祓詞より

「八針(やはり)に取り裂き」

【現代語訳】

 清い菅麻を木の枝と同じように元と末を切り捨て、中ほどの良い部分を取り、八針(=多くの針)で細く引き裂いて、高天原伝来の神聖な祝詞【天つ祝詞の太祝詞事】を奏上しなさい。

 

 

 

【茅の輪くぐり】

 一連の儀式が終わり、案が片付けられました。神職が茅の輪をくぐり始めます。

 

 

◆神職の隊列

 神職による「茅の輪くぐり」は、こんなにも大廻りするのです!

隊列は、ザクザクと音をたてることで、邪気を祓いつつ進みます。

 

 

◆形代を担う

 筆者が手に持って「茅の輪くぐり」したのち、納め箱に納めた形代。

たくさんの形代が納め箱から大櫃に遷され、神職によって再び「茅の輪くぐり」されます。

 

 

◆唱えことば

 茅の輪をくぐる際、唱える言葉は神社によって異なるようです。

当社の場合


 「水無月の 夏越の祓する人は 千歳の命 延ぶというなり」

 

と唱えます。

どうやら、これが最もオーソドックスな「唱えことば」のようです。

 

 

◆拝殿へ

 茅の輪くぐりを終えたら、隊列はそのまま拝殿に向かいます。そして、拝殿内であらためて大祓が行われます。辛櫃も拝殿に入っていき、無病息災が祈念されます。

 

 

 

◆大祓とは by神社本庁HP

 大祓は、我々日本人の伝統的な考え方に基づくもので、常に清らかな気持ちで日々の生活にいそしむよう、自らの心身の穢れ、そのほか、災厄の原因となる諸々の罪・過ちを祓い清めることを目的としています。

 

 この行事は、記紀神話に見られる伊弉諾の禊祓を起源とし、宮中においても、古くから大祓がおこなわれてきました。中世以降、各神社で年中行事の一つとして普及し、現在では多くの神社の恒例式となっています。年に2回、6月30日と12月31日に行われます。

 

 

◆切麻の検証

 神事終了直後、玉砂利の上に落ちていた「切麻」を撮影しました。

切麻は、麻または紙を細かく切って、米と混ぜたものが正式なそれだそうです。しかし、当社のものには、米が入ってなかったような・・・。

 

 

 

【大祓の受付について】

 2021.07.04追記

 香取神宮HPは、5月11日付で茅の輪設置を告知しました。設置期間は6月30日まで。

つまり、この期間は形代に氏名などを記入し、納めることができます。(初穂料500円)

 

 記事アップ後、最終日(6/30)は 何時まで受付てくれるの?

との問い合わせを頂戴しました。

 

◆受付所の撤収

 当社HPには、受付終了時刻が告知されておりませんでした。

しかし・・・

 筆者は、「大祓受付所」の撤収作業を撮影しておりました。撮影時刻=12:57

ここから推測すれば、《受付は午前中いっぱい》なんだろうと思います。

 

 

 

【御朱印】

 この日、御朱印はお受けしませんでした。

当社には御朱印が4つあります。

なので、《夏詣》などの限定押印が新登場しているかもしれない。そう思って、夏詣御朱印があるか否かをお尋ねしてみました。

しかし、本日は通常ヴァージョンの御朱印、とのことでした。

◇参考リンク(筆者記事)

香取神宮 4種の御朱印

 

 

 

【参拝ルート】2021年 6月30日

START=JR成田線・佐原駅10:10着~コミュニティ・バス停留所→大戸循環ルート→香取神宮バス停~130m~香取神宮 斎田~350m~赤鳥居~270m(表参道)~総門&楼門~①香取神宮 拝殿~「茅の輪くぐり」&匝瑳神社~表参道~赤鳥居~220m(王子の坂)~②王子神社~850m~③高房神社~900m~氷室井の石碑~110m(氷室坂)~④姥山神社~180m~⑤佐山神社~150m~勅使門~100m(切通し道)~⑥璽社~推定250m(御神井道)~⑦狐坐山神社&御手洗池~推定300m(御神井道)~ 香取神宮 斎庭~⑧神事「夏越の大祓」 ~表参道~香取神宮バス停→コミュニティ・バス→佐原駅16:20着GOAL

 

 

 

【編集後記】

◆神事「夏越の祓」

 これまで、個人的な茅の輪くぐりは何度も行ってきました。

今回は、神事としての大祓を香取神宮で拝観できました。

 

 下総国・一之宮の大祓は、個人的な茅の輪くぐりとは、かなり異なりました。いろいろな所作や儀式の写真を撮り、後刻それらについて調べ、おおいに勉強になりました。

 

 

◆令和八年(2026年)式年神幸祭記念事業

 『式年神幸祭』は、12年に1度斎行されます。次回は、2026年。その記念事業として、本殿を囲む透塀の改修工事が本年(2021年)5月から始まりました。

工事は、年内完了の予定です。

 4月に当社を訪れた際、透かし塀(=本殿瑞垣)は、ほとんど傷んでない感じでした。というか、美しさを保っていました。にもかかわらず、改修する。どのような仕上がりになるのか。完成が楽しみです。(了)