下総國一之宮
《香取神宮の歩き方~祭典》
『星鎮祭』.
(ほしづめさい)
~この祭事は、星の運行を操る星神=天香々背男(アメノカガセオ)に関係があります。
国家平定にあたって、最後までアマテラス(=太陽神)に服従しなかったカガセオ(=星神)が、最終的に征伐された神話(=日本書記)がベースなとっている祭事です。
今回は、神楽殿から出発します。
【神楽殿】
~所在地は、楼門をくぐったのち、参道を直角に右折した先です。神楽殿とはいえ、元・拝殿でしたので、厳(おごそか)な雰囲気を漂わせています。
◆ご神気
~いつ訪れても清浄を保ち、丁重に祀られています。清々しいご神気を放っています。
◆柱に掲げた名札
~柱には、『祈祷殿』と墨書された名札が掲げられています。神楽殿であり、祈祷殿でもある、ということでしょうか。この石畳を右に進めば、『星鎮祭』の祭祀場となる弓道場です。
◆境内案内図
~神楽殿を出発し、緑色矢印のように進みます。
◆元・拝殿
~当社殿は、元禄13年(1700年)に造営され、拝殿として活躍してきました。「昭和の大修築」の際、新・拝殿を造営しました。旧殿となった当社殿を現在地に移築。神楽殿として再出発し、現在に至っています。筆者は、当社殿の雰囲気をわりと好みます。
◆『星鎮祭』の祭祀場
~祭事は、弓道場で斎行されます。
◆準備中
~土中に竹を刺し、「星的」を結わいつけています。
◆祭場に向かう神職ら
~拝殿にて、祓や祭典を斎行したのち、神職が弓道場へと移動してきました。
続けて、射手も。
◆弓道場
~柵の外側の矢道は、拝観可能な場所です。
◆星神・香香背男のこと
~カガセオは、今でも多くの星神社や星宮神社において、祭神として祀られています。天津神にとって、星神とは《服従させるべき神、まつろわぬ神》として位置づけられました。香取神宮と鹿島神宮にカガセオ「征伐」の伝承が残っています。
日本は、太陽神・アマテラスを最高神とする国です。その弟は月の神・ツクヨミ。
つまり、 日や月が治める国において、星は滅ぼされる運命なのかもしれません。
【星鎮祭】
~笏を持ち、弓道場に居並ぶ神職。神職が被るものによって、祭事の格が分かります。こちらは、烏帽子ですので「並み」の祭事です。ちなみに、昨秋の「神嘗奉祝祭」は冠でした。
①大的の神事
◆一礼
~烏帽子に直垂(ひたたれ)姿の射手が「大星的」めがけて矢を放ちます。
◆気品と美しさ
~古式に則った作法により粛々と進行します。射手の立ち振る舞いには、気品があります。
矢は、それぞれ2本づつ、併せて4本が放たれます。
放たれた矢が大星的を射抜くことで、 邪気を祓います。
◆大星的
~的は紙製です。なので、矢は的を突き抜けて背後の壁に刺さります。
②星鎮祭
~矢を放ち終えた射手は、板の間を下りて「星塚」に向かいます。
◆星塚
~大星的の前に砂山を造り、「星塚」に見立てています。
◆『香取神宮小史』
~当該冊子によれば、星塚は「星神 迦々背男の霊を祭る處なり。境内にあり。」と書かれています。しかし、星塚は、もはや常設されておらず、『星鎮祭』のときだけ仮設されます。
◆鎮魂
~星塚の四方に竹ぐしを刺して、カガセオの霊を鎮めるとともに、「悪神」を矢で射落とした経津主大神の功績を称えます。
星塚の前で神職が祝詞を奉じるなどはありませんでした。射手が竹ぐしを刺して終了です。
◆星塚に屹立する柱
~忌竹(いみたけ)が四方に立てられました。このように、柱を立てる光景は、現代でも地鎮祭で見ることができます。また、諏訪大社の御柱も同様です。つまり、柱=聖なるもの。それは、神さまを数える際の数詞が「柱」であることからも分かります。
◆尊拝
~神職が一斉に深々と90度の尊拝。その先には、神棚的なものがあるんだろうと思います。
【境内点描】
◆おみくじツリー
◆朝陽に輝く玉垣
◆静謐な回廊
◆神徳門
~「星鎮祭」のために大門が開かれています。弓道場への近道となります。
【御朱印】
~この日は、香取神宮への初詣も兼ねました。当日は、まだ正月モード。御朱印は通常の授与所ではありません。拝殿横に設置された、臨時授与所(=テント)でお受けしました。
【参拝ルート】 2020年 1月16日
START=JR成田線「佐原駅」~徒歩~佐原観光協会・レンタル自転車調達~自転車~香取神宮第2駐車場~徒歩~ ①『香取神宮』参拝&「星鎮祭」 ~徒歩~第2駐車場~自転車~②側高神社~自転車~道の駅「水の郷さわら」~自転車~佐原観光協会・自転車返却~徒歩~JR「佐原駅」=GOAL
【香取神宮の歩き方~祭典】
本シリーズは、ほかの記事もあります。よろしければご覧ください。
【編集後記】
◆日本書記の一説
~経津主神と武甕槌神が曰く、天に悪い神があってその名を天津甕星(アマツミカボシ)、別名をカガセオといいます。まず、この神を平定してから、葦原中国を平らげましょう、と。
この「悪神」は、常陸の大甕(おおみか)、現・茨城県日立市大甕を根拠地としていました。
◆鹿島神宮とカガセオ
~鹿島神宮では、武甕槌神の命令でカガセオと戦った建葉槌命(タケハヅチノミコト)を高房社に祀っています。まず、高房社に参拝してから拝殿に向かうのが慣例となっています。
◆大甕神社(おおみか神社)
~建葉槌命は、日立市「大甕神社」の祭神です。同社の神域を成している宿魂石は、カガセオが化成したもの。あるいは、この岩にカガセオを封じ込めた、などと伝わっています。(了)