加夜奈留美命神社
(かやなるみのみことじんじゃ)
2019年 3月20日、飛鳥駅前で電動アシスト付自転車をレンタル。早春の奥明日香、そして飛鳥~大和路をサイクリング巡拝しました。
(1)「水神」を訪ねる
→①飛鳥川上坐宇須多伎比賣命神社
②加夜奈留美命神社
(2)「陰陽石」を訪ねる
→飛鳥坐神社
(3)「磐座」を訪ねる
→①天岩戸神社、②御厨子神社
今回は、加夜奈留美命神社です。記事後半では、於美阿志神社も扱います。
◇鎮座地:奈良県高市郡明日香村栢森字堂ノ上358
◇最寄駅:近鉄吉野線「飛鳥」駅~6.5km
◇御祭神:加夜奈留美命
◇御朱印:不明(無人社です)
◇社格等:延喜式:式内社、旧社格:村社
※奥明日香・稲渕集落に鎮座する、『飛鳥川上坐宇須多伎比賣命神社』をあとにして、飛鳥川沿いを吉野方面へ向かいます。
◆棚田&さららの道
~飛鳥から吉野に向かう国道15号線。右手には、棚田や段々畑が広がります。この道は、吉野が好きだった持統天皇=鵜野讃良(うののさらら)に因んで、「さららの道」と呼ばれています。
ちなみに、持統天皇が頻繁に吉野を訪れた理由。「壬申の乱」前年、夫(=天武天皇)が吉野の宮滝に隠棲したおかげでラブラブな1年間を過ごせた(讃良・26歳)。その思い出に浸るための吉野行幸、というロマンチックな説を支持したいと考えます。
【奥明日香】
◆飛鳥川:急流
~高低差がきつい場所を流れる飛鳥川は急流です。
◆福石
~上流目指して進むと、路傍に注連縄が巻かれた「福石」という名の磐座(いわくら)が現れます。この石を過ぎると、あたりが開けてきます。
◆女綱(めづな)
~福石の上空に目をやると、稲渕集落で見た「男綱」と同じようにロープが張られています。「女綱」です。
※「男綱」についての詳細は、筆者記事「飛鳥川上坐宇須伎比売命神社」をご覧ください。
◆女綱とは
~ロープ中央付近に藁で作った女性器が吊り下げられています。この意味は、疫病神や悪霊などを栢森集落に侵入させないための守護神ということです。
◆栢森の綱掛神事
~男綱(稲渕地区)&女綱(栢森地区)とも、正月の11日に「綱掛け神事」が斎行されます。前者は神式、後者は仏式にて行われています。
◆栢森集落(かやのもり)
~ここまで来れば、目的地は間近です。そして、この先、峠を越えれば、そこは吉野です。集落には国道からわき道を左に入ります。写真は神社前から振り返っています。道の右手に家々が並び、左手は稲渕川が流れています。
【加夜奈留美命神社】
~神社は、集落に溶け込むように佇んでいます。この辺りは、石垣が少なくありません。
水は水道栓からです。おろしたてのようなタオルが柱に下がっていました。
◆大鳥居
~神さびた雰囲気を醸し出す鳥居
◆鳥居と土間拝殿
~名称由来1。神社名が「加夜(かや)」、集落名が「栢(かや)森」、これらは朝鮮半島の伽耶国(かや)に由来するものと思われます。奥明日香は元々、渡来人を住まわせた地域でした。
◆御祭神:加夜奈留美命
~『記紀』には名前がありません。『延喜式』の「出雲国造神賀詞」に登場する神で、 皇室を守護する神 とされています。
また、須佐神社・社家の系譜に、大国主神の御子神としても賀夜奈流美命の名が見えます。
御祭神は、地元神としての、水神(=川の女神)とも言われています。
◆瑞垣御門
~土間拝殿は抜けられます。お参りは、こちらで行います。瑞垣に接続する木製鳥居が神々しさを醸し出していました。
◆本殿
~名称由来2。栢森地区は、飛鳥川の川床に岩盤部分が多く、川の瀬音=鳴水(なるみ)が響きます。栢の鳴水=かやのなるみ=加夜奈留美、です。
屋根の質感から、檜皮葺(ひわだぶき)かと思われます。
狭いけれど、美しい神域です。
【境内点描】
◆明治天皇遥拝所
~明治神宮を遥拝できる場所のようです。
◆境内社
~拝殿の左右に1社づつ鎮座しています。「九頭神社」(=葛神社)と八幡神社だそうですが、左右いずれかの特定はできませんでした。
◆小祠
~仏教的な施設のようです。
◆奥明日香から飛鳥へ
~加夜奈留美命神社を出発。来た道を引き返し、飛鳥に向かいます。下り坂道が続きます。かなり、下ったら再び上り。このあたり、明日香らしさにあふれる、春の景色です。
畝傍山が見えてきたら、この先は長い下り坂。飛鳥の丘陵を一気に下っていきます。
②於美阿志神社
(おみあし)
~飛鳥駅の手前、檜前(ひのくま)集落の東南。キトラ古墳に隣接する丘の上に鎮座します。
◇鎮座地:奈良県高市郡明日香村檜前594
◇最寄駅:近鉄吉野線「飛鳥」駅~1.6km
◇御祭神:阿智使主神夫妻
(あちのおみのかみ夫妻)
◇御朱印:不明(無人社です)
◇社格等:延喜式:式内社、旧社格:村社
◆水盤
~水盤と柄杓があります。しかし、手水舎と水の出所がありません。
【社殿】
◆拝殿
~於美阿志神社は、渡来人の東漢氏(やまとのあやうじ)の祖先とされる、阿知使主を祀っている神社です。
◆本殿
~修繕されて間もないような感じでした。
【境内点描】
◆石碑
~宣化天皇檜隈廬入野宮(せんか天皇ひのくまのいおりののみや)跡と刻まれています。第28代宣化天皇は、宣化天皇元年(536年)から、同4年(539年)の約3年を檜隈廬入野宮で過ごし、崩御されています。ただ、この跡地は候補地にすぎず、確定地ではありません。
◆祭神不明社
祠が何社かありますが、どれも祭神は不明です。
立派な瑞垣が設置された社ですが、御祭神は不明です。
こちらは、鳥居つきです。
◆石婆塔
~当社が、檜隈寺跡に建立されたことを物語る、平安時代の石塔婆(十三重石塔)。境内の最奥部に残っています。
【御朱印】
加夜奈留美命神社、於美阿志社ともに無いようです。
【参拝ルート】
2019年 3月20日
《飛鳥の古社を行く》
START=近鉄・飛鳥駅~駅前レンタサイクル店(電動アシスト自転車調達)~1.1km~天武・持統天皇陵~4.6km~①飛鳥川上坐宇須多伎比賣命神社~1.5km~ ②加夜奈留美命神社 ~5.3km~③於美阿志神社~4.2km~④飛鳥坐神社~1.8km~⑤天岩戸神社~1.4km~⑥御厨子神社~1.7km~藤原京址~3.2km 神武天皇陵~750m~⑦橿原神宮~1km~レンタサイクル店(乗り捨て返却)~近鉄・橿原神宮前駅=GOAL
【後記】
①~③を参拝後、飛鳥駅前で自転車を返却予定でした。念のため、観光案内所でアドバイスを求めつつ、話し合ってみました。そうしたところ、自転車が電動アシスト付きなら、④~⑦も自転車のほうが効率が良い、との結論となりました。果たして、それが正解でした。(了)