2019年のG・Wさなか、房総半島の館山を訪れました。

 

安房国一之宮

 洲宮神社 (すのみや)

神明造の美しい社殿。洲宮神社は、式内大社、安房國・二之宮、旧社格=県社です。

◇鎮座地:千葉県館山市洲宮1083番地

◇最寄駅:JR内房線・館山駅→バス

JRバス関東・安房白浜行→洲の宮バス停~270m

◇主祭神:天比理刀咩命

(あめのひりとめのみこと)

◇相殿神:天富命

◇相殿神:天鈿女命

◇御朱印:なし

※天比理刀咩命は、西暦859年に「正三位勲八等」の神階を受けています。

 

 

 

【参道】

◆社号標

~国道410号線に面しています。

 

 

◆大鳥居

~神明系の大鳥居です。

 

 

◆参道

~右手には、幟用の丸太柱の収納庫のような感じですが、丸太はありませんでした。

 

 

石段を上ると、左手にご神木の大銀杏。右手に手水舎。

 

 

◆手水舎

~最近になって奉納されたと思しき水盤。しかし、残念ながら水が出ません。

 

 

 

【社殿】

◆拝殿

~当社は、安房国・二之宮と言われています。しかし、その確実な史料はありません。とは言え、安房国・総社「鶴谷八幡宮」への神輿渡御において、他社との格の違いを見せつけます。

神輿渡御において、洲宮神社は「安房二ノ宮 洲宮神社」の高張りを掲げます。さらに、斎場への入御は、一之宮「安房神社」の次、2番目なのです。

 

御祭神:天比理刀咩命

~忌部氏の祖先神である天太玉命の妻神です。また、洲ノ神(すさきの神)とも呼ばれる、航海安全の神です。

 

※洲ノ神信仰

~東京湾沿岸地域に広がっていたと思われます。例えば、品川神社(品川区)、洲崎大神(横浜市)などで祀られています。

主祭神である、天比理刀咩命は、西暦859年に「正三位勲八等」の神階を受けています。

 

 

 

◎忌部氏(いんべ)について

~洲宮神社の相殿神である天冨命は、阿波忌部の子孫です。祖父・天太玉命は、「天岩戸神話」に登場します。天冨命は、勅命により阿波徳島の忌部一族を率いて肥沃な土地を求めて旅立ちます。黒潮に乗って房総南部の館山に到着。上総・下総に進み、麻や穀(かじ)などの植物を播殖し、当地を開拓。ほかに養蚕や紙づくりの技術も広げました。

とくに、 忌部と麻との関連 では興味深い事実がいくつかあります。

→安房忌部&麻については、筆者記事=安房神社にて考察しております。

 

 

 

◆本殿

~社伝によれば、天富命が天比理乃咩命の鏡を御神体に、御手洗山へ祀ったことが当社の始まり、とのこと。これは、西暦807年のこととされています。

「延喜式」神名帳に記載があるので、遅くとも927年には存在していた、と考えられます。

 

 

◆拝殿・幣殿・本殿

~神名帳の記載から、洲宮神社は、元は「后神天比理乃咩命神社」と言われていたことが分かります。ただ、洲宮神社は、「后神天比理乃咩命神社」の「論社」の1つなのです。同じく館山市にある「洲崎神社(すのさきじんじゃ)」もほぼ同じ由緒です。両社とも同じ縁起・由緒を持っているので、今に至るまで結論が出ていません。

 

 

(補足)

 ◆后神天比理乃咩命神社 

~『「延喜式』の中では、大社に列せられています。房総の式内社22社の中で、大社は4社のみです。①香取神宮、②安房神社、③玉前神社、そして④后神天比理乃咩命神社なのです。

 

 

 

【境内社】

◆不明社①

~拝殿に向かって左です。境内社は、子安神社、神明社、日枝神社が鎮座とのこと。(by『安房郡誌』) しかし、現在は1社のみ。どれに当たるのかは不明です。もしくは、3社の寄せ宮?

 

 

◆不明社②

~拝殿に向かって右サイドです。こちらは、小さな石祠です。3社あるので、こちらが上記3社かもしれません。

 

 

 

【御朱印】

なし。本務社に問い合わせたところ、御朱印はありませんでした。

 

 

 

【参拝ルート】2019年 5月 5日

◆房総・館山の神社を行く

START=JR内房線「館山駅」~徒歩~「館山駅前」バス停→JR関東バス・安房白浜行→「安房神社前」バス停~徒歩~①安房國・一之宮『安房神社』~徒歩~「安房神社前」バス停→JR関東バス・館山駅前行→「洲の宮」バス停~徒歩270m~ ②安房國・二之宮『洲宮神社』 ~ハイキング~「運動公園前」バス停→JR関東バス・館山駅前行→「館山駅前」バス停~徒歩~③安房國・総社『鶴谷八幡宮』~徒歩~JR内房線「館山駅」=GOAL

 

 

 

【編集後記】

◆式内社論争

江戸時代以降、もう1つの論社である洲崎神社と、どちらが式内社であるか争うようになりました。明治5年に、一度は洲宮神社に決まりましたが、翌年、根拠なく洲崎神社へと変更された、とのことです。

 

◆初夏ー房総の山々

~山々の、「緑のグラデーション」が美しかったので、バス停・3駅分を歩いてみました。

 

◆洲宮神社

御朱印がないのは、たいした問題ではありません。問題は、延喜式・式内大社、安房國・二之宮、旧社格=県社、などの格式を持ちながら、無人社になっていること。さらには、手水舎が機能してないこと。すなわち、《参拝者を浄めようとしていない》ことです。(了)