2019年 3月、山辺の道に点在する古社を訪ねました。

 

 檜原神社 (ひばら)

 

《聖なる三ツ鳥居》

 当社の特徴は、鳥居です。大神神社で見ることができなかった三ツ鳥居。こちらは、拝観できます。総檜の三ツ鳥居。なぜに、かくも美しい聖性を醸し出すのでしょう。

◇鎮座地:奈良県桜井市大神神社境内 字檜原

◇最寄駅:JR万葉まほろば線・巻向駅~2.2km

◇御祭神:天照大神若御魂神

(あまてらすおおかみ わかみたま)

◇配祀神:伊弉諾尊、伊弉冉尊

◇御朱印:あり

 

 

【参考リンク】筆者の過去記事

聖なる”三ツ鳥居”「牛嶋神社」(東京都 墨田区)

 

 

 

【檜原神社へ】

 狭井神社を出発し、まずは展望台から大和平野を眺望します。その後、「山辺の道」に入って、檜原神社を目指します。

 

◆美和の杜展望台

 小雨模様のため視界が悪く、耳成山と大鳥居は見えましたが、二上山はダメでした。大鳥居は、昭和60年完成。高さ=32.2m、耐久性=1300年、材質=剛板。

 

 

◆山辺の道

 山道は、雨が降ったり、止んだり、霧が出たり。あるいは、日が差したり曇ったり。刻一刻と天候が変わります。こちらを歩いているときは、軽い霧でした。

 

 

◆狭井川付近

~だらだらとした石畳の坂道を下りきったあたりに、狭井川(さいがわ)が流れています。写真は、その支流と思しきせせらぎが路傍を流れていたので写してみました。

 

 

◆出雲屋敷

狭井川を渡ると、左手に民家風Cafeがあります。付近に 「山ノ神遺跡(出雲屋敷跡)」 があることを予習していました。三輪山側のヌカルミを分け入って樹叢の中を探しましたが、場所が分からず引き返してきました。

 

 この旧跡は、神武天皇の皇后・媛謟鞴五十鈴姫命(ひめたたらいすずひめ)が幼少期を過ごしたと伝えられる屋敷の跡地です。

 

 

 

◆三輪山の斜面に末社

 Cafeを過ぎると、山辺の道は人家が途絶えます。ほどなく、三輪山に食い込んでいくような形で、天然石を重ねた石段が見えます。石段の奥には鳥居や祠も遠望できます。

 

 

◆貴船神社(きふね神社)

御祭神:淤加美神(おかみのかみ)

 石段の中ほどに由緒が記された高札。大神神社・末社の「貴船神社」です。

 

 

◆龍神

 淤加美神は、生命の根源である雨水を司る龍神です。縁結びの神としても信仰されています。「おかみのかみ」は、日本書紀で「龗神」と表記されています。

 

 

◆山辺の道

 貴船神社から先は、樹木に覆われたプチ山道が続きます。雨水をたっぷりと吸い込んだ樹木の香り&フィトンチッドを肺に送り込むべく、深呼吸しながら歩きました。

 

 

 

◆小さな滝

 玄濱という僧侶が隠遁生活を送った庵、「玄濱庵」。ここを過ぎたあたり、山から流れる水を滝のようにしつらえた場所がありました。清冽な水がほとばしっていました。

滝を過ぎると、登り道になります。頂き付近に光が差しているということは、周囲が開けているということ。檜原神社が鎮座する台地が近いようです。

 

 

 

【檜原神社】

 大神神社の摂社ながら、天照大神を主祭神とする神社です。

つまり、天津神の最高神を祀る神社であるにもかかわらず、国津神の最高神を祀る神社の摂社です。

 

◆南鳥居

 狭井神社から、山辺の道を北上してきました。檜原神社の入口=南鳥居は、華奢(きゃしゃ)な注連柱です。せっかくですので、表参道から入ることにします。

 

 

◆表参道

 表参道も注連柱でした。「檜原の岡」は、数々の歌に詠まれていて、当地から巻向にかけての一帯を指します。

 

 

◆聖蹟『倭笠縫邑』

(やまとのかさぬいむら)

 倭笠縫邑は、天照大神が伊勢に鎮まる前に鎮座した地です。大和には伝承地が8か所あります。神宮司庁の学者が、30年以上に及ぶ調査の結果、「三輪・檜原説」を確立しました。

 

 

◆浄めの水

 手水舎はありません。水盤の底から浄水が噴き上がっていました。きれいな水です。

 

 

◆祓所

 高札には、「ここは、神社の儀式斎行時に御祓いを行う場所です」と記されています。

 

 

◆三ツ鳥居を遠望

 深い緑の中、外玉垣の鈍い赤色が際立ちます。

 

 

◆伊勢神宮から拝領

 鳥居は「第59回御遷宮」の際、内宮・外玉垣御門三ツ鳥居を拝領し、竣工しました。

 

 

◆三ツ鳥居

 本社・大神神社と同様に、三ツ鳥居の後ろは禁足地。瑞垣に囲まれたスペースに樹木が1本あります。これは、神籬(ひもろぎ)です。この神籬に天照大神を奉斎しています。内玉垣に設置された賽銭箱のところから撮影しました。

 

大神神社と同じく、鳥居は瑞垣とつながっています。3つの入り口は全て塞がれています。

 

 

◆ご神木

 三ツ鳥居の手前、右サイドは、玉垣で護られ注連縄が巻かれた大樹。

 

 

◆豊鍬入姫宮

(とよすきいりひめ宮)

御祭神:豊鍬入姫

 三ツ鳥居の手前、左サイドに美しい社が建てられています。豊鍬入姫宮です。この姫は、倭姫命とともに、皇大神宮の伊勢鎮座に重要な役割を果たしました。

 

 

◆同床共殿

(どうしょうきょうでん)

 天照大神の御霊代(みたましろ)である、八咫鏡(やたのかがみ)は、神武天皇以来、 《天皇の御殿内》 に祀られていました。しかし、崇神天皇のとき、天皇はその神威の強さを畏れ、皇居の外で祀ることにしました。

 

 

◆元伊勢・倭笠縫邑

 崇神天皇は、皇女・豊鍬入姫命に神鏡を託して、お遷しになりました。姫が「磯城神籬(しきひもろぎ)」を立て、お祀りされた場所が 倭笠縫邑 です。姫は33年間、天照大神に奉仕しつつ、より相応しい鎮座地を探しました。

画像:神宮徴古館《国史絵画》より「皇大神宮奉祀」

 

◆豊鍬入姫命から倭姫命へ

 垂仁天皇の代になって、天照大神への奉仕は、皇女・倭姫命にバトン・タッチ。倭姫命が、より相応しい鎮座地を求めます。姫は、天照大神を奉斎しながら諸地方を遍歴し、伊勢・五十鈴の川上に遷幸した、と伝えられます。 by『日本書紀』-内宮鎮座伝承

 

圧倒的な聖性を放つ三ツ鳥居、そして清廉な豊鍬入姫宮でした。以上で、神聖な雰囲気に包まれた「檜原神社」をあとにします。

 

 

◆三輪山を遠望

 檜原神社から西に下り、井寺池付近から”神の山”三輪山を遠望。麗しい稜線です。

次は、石上神宮。距離があるので、巻向(まきむく)駅に出て、電車で天理駅に向かいます。

 

 

 

 

【御朱印】

~左:檜原神社、右:豊鍬入姫宮

 

 

 

【参拝ルート】

2019年 3月19日

◆「山辺の道」の古社を歩く

START:JR万葉まほろば線「三輪」駅~徒歩~①志貴御県坐神社~②成願稲荷神社~③大神神社摂社・神坐日向神社~④摂社・神宝神社~⑤末社・天皇社~大神神社二之鳥居~⑥末社・祓戸神社~⑦末社・御炊社~⑧大神神社~⑨摂社・磐座神社~⑩末社・市杵島姫神社~摂社・狭井神社~ ⑪末社・貴船神社~⑫摂社・檜原神社 ~JR万葉まほろば線「巻向」駅~つづく

 

 

 

【編集後記】

◆不可思議

当社と大神神社との共通点は、以下の3点。

 ①本殿がない

 ②三輪山の山麓に鎮座

 ③三ツ鳥居が三輪山との境界

 あまたある、大神神社の摂社・末社の中で、形式的な部分において、これほど共通点を持つ神社は他にありません。

 

 にもかかわらず、奉斎する神は大神神社・御祭神の大物主大神(=国津神最高神)や関連性のある国津神ではありません。祭神は、天津神。しかも天照大神(=天津神最高神)なのです。

 

◆巻向古墳群

~巻向駅に向かう道すがら、右手に見えました。巻向には大小さまざまな古墳が点在します。

 

◆自然との一体化

  狭井神社から檜原神社への1.5kmは、人と遭遇することがなく、《自然との一体化》を肌で感じることができました。三輪山麓の里山風景を堪能した、感動の散策でした。 (了)