6⃣
僕は、彼女の背中が小さくなり、見えなくなるまで手を振り続けた。
彼女は、遠い所へ旅立っていったのだ……。
僕の手の届かない、遠い所へ。
「ねえ、ソウジ。私、東京にある専門学校に行こうと思うんだ」
突然、彼女、リツがそう切り出してきたのは、半年前の事。
僕は思わず、飲んでいたコーヒーを噴き出しそうになってしまった。
「え? 東京? 専門学校? 行く? リツ?」
驚きのあまり、単語しか並べられない僕。
それを見て笑う彼女。
「落ち着いてよ。しっかりと話を聞いて」
そんなこと言われたって、落ち着けるわけがないじゃないか……。
いきなり、あと少しで、大切な人が遠くに行ってしまうと宣告されたのだから。
彼女は何とか慌てる僕をなだめて、東京に行きたい理由を話し始めた。
彼女は昔、美容師になるという夢を持っていた。
しかし、家庭の金銭的な問題で、専門学校に行くことを断念。
結局は、高卒で会計士の職に就いていた。
だが、彼女はまだ夢を諦めてはいなかったのだ。
自分で貯金をため続けて、資金を集めていた。
そしてついに、学費分なら賄える額が集まったらしい。
しかし、あくまでも学費だけで、それだけでは生活は捻出できなかった。
そのため、彼女は東京にいる叔母の家に住まわせてもらうことにしたそうだ。
つまり、専門学校を卒業するまで、遠距離恋愛となるのである。
僕もついていけばいい。
そう思うかもしれないが、そう簡単にはいかない。
僕だって、会社に勤めている。
それも小さな土木会社で、東京に支店などは出していない。
今の仕事を辞めて、東京で職を見つけるにしても、そう簡単にはいかないだろう。
ただでさえ三流高校卒業で体力だけしか自慢のなかった僕が、この不景気の中で東京の企業に勤めることは難しいのだ。
彼女から理由を聞いた後、しばらくの間、僕の心の中で、二つの想いがせめぎあっていた。
彼女の夢を応援したい、そんな純粋な想いと、
彼女と遠く離れて、寂しい思いをしたくない、という傲慢な想いだ。
もちろん、寂しい思いをすることを心配するような弱い僕は、すぐに打ちのめしてやった。
僕は、彼女の夢を応援することにしたのだ。
そして、現在に至る。
この半年は、時間を大切に過ごしていたつもりだったのだが、あっという間に過ぎていってしまった。
彼女が旅立つのを、マンションの玄関から見送って、部屋に戻った僕は、コーヒーが出す白い煙とにらめっこしていた。
そうでもしないと、寂しさが込み上げてきてしまいそうだったから。
……ふと、コーヒーのカップの隣を見る。
そこには、小さな紙きれが置いてあった。
それを手に取り開くと、短いが文章が書かれていた。
ソウジへ。
私の夢を応援してくれてありがとう。
しばらく離れ離れになっちゃうけど、東京で私頑張るね。
だから、ソウジも、自分の夢に向かって頑張って。
今度会った時、二人とも、互いに夢が叶ったという報告ができることを楽しみにしています。
リツより。
読み終わった瞬間、僕はもう外へ飛び出していた。
僕の夢を叶えるために……。
僕の夢は、リツに会わないことには叶わないのだ。
そう、僕の夢は、彼女と結婚すること。
彼女と一生を共に過ごすこと。
彼女の笑顔をそばで見続けることなのだ。
彼女が遠くへ行ってしまわない前に、僕のこの想いを伝えなければ。
今のこの勢いで言えなければ、勇気のない僕は、きっといつまで経ってもそれを言えないから。
彼女がこの家を出てから、もう11分半が経っている。
けど、まだ間に合うはずだ。
僕は愛用しているマウンテンバイクにまたがり、彼女の向かった駅へと走り出した。
(1)ソウジはこの勢いで、リツに想いを伝えることができるか。
なお、リツは分速80メートルで歩いており、ソウジは自転車に乗り、分速200メートルでリツを追っている。
また、駅までの距離は1.6キロメートルである。
(2)次の表の中にある、X=3となる式の数を求めなさい。
また、ソウジの夢が叶ったかどうかは、その式の数からわかる。
式の数が奇数なら叶った、偶数なら叶わなかったである。
それも共に答えなさい。
【18=6X -6×2=X 7X=2(3+10÷2)−(-5) X=30×3÷5−(5×3) X=21÷2−3.5 】
回答欄
6⃣(1)伝えることができる。
(2)X=3となる式の数:3個 夢の行く末:叶った
……先生へ。
問題がドラマチック過ぎますよ!
ハッピーエンドでしたし、許してください(*^-^*)
あと二問とも正解でした。
大変よくできましたね!
これからもファイト!
先生より。
Fin.
今回は、中学生の数学でありがちな問題をストーリーにしました。
もしかしたら、こんなストーリーが問題のもとになっていたりするかも、なんて思いながら書きました。
勉強も楽しむことは大事ですね(笑)
コメント、感想はいつでもお待ちしています。
誤字脱字はご勘弁を……。
では、また次の作品でお会いしましょう! 🐢