とある湖のほとりで、真っ白な服を着た一人の少女が絵を描いている。
その隣には、彼女の友達でもあり先生でもある、彼女と似ている同じように真っ白な服を着た少年が立っていた。
少年は彼女に、どういう風景を書けばいいかを教える。
彼女は彼の指導に従って、絵を描き続ける。
彼女が描く絵はとても綺麗な風景画で、こんな少女が書いたとは思えないような代物だった。
しかし、少女はそれをおごることもなく、彼の教え方が上手いから、と言う。
彼の教え方は丁寧で、美術学校の一流教師と同じといっても過言ではない教える技術を持っていた。
しかし、彼も決しておごることなく、彼女の吸収が早いから、と言う。
彼らは二人で絵を描いているのだ。
そして、少女はその絵を彼に褒めてもらうことを、毎日の楽しみとし、少年は彼女に絵を教えることを、幸せとしていた。
そのため、彼らは共同作業で絵を描き続けた。
柔らかな日差しが花を照らし、その中の鳥たちが合唱している春も。
彼らを囲む山々が緑に染まり、川のせせらぎが風鈴のような綺麗な音を奏でる夏も。
真っ赤に染まった葉が赤い海を作り、夜には虫たちが鳴き声のの美しさを競う秋も。
積もった雪が山に化粧をし、時折雪の崩れる荒々しくも壮大な音が流れる冬も。
彼らは共に絵を描き続けていた。
……しかし、ある暑い夏の日。
いつも絵を描きに来ていた場所に、彼らは現れなかった。
その次の日も、その次の日も、そのまた次の日も。
……結局、再び彼らがここを訪れたのは約一か月が過ぎ、もう季節も秋に変わり始めたころだった。
彼らは、前来た時と同じように、同じ場所に立って絵を描いていた。
彼が見た景色を、少女が形にしていた。
彼が見た景色を、少女は水をつけすぎた絵具で書いたような、ぼやけた絵にしていた。
少女は、いつものような楽しさを、その作業に見出すことができなかった。
彼女が描いた絵の片隅には、一人分のサインが、寂しく縮こまっていた。
Fin.
あとがき(解説)
昨日、明るい話を書くといいましたが、暗い話になってしまいましたね(汗)
予告詐欺になってしまいました、ごめんなさい……。
では、今日の話は解説が必要なので解説をします。
まず、みなさんは、この二人に違和感を覚えませんでしたか?
……この二人、両方とも白い服を着ているのです。
その白い服というのは、実は、病院の患者さんが着ている服です。
そう、この二人は病人です。
二人の病気は、少年の方が余命僅かな重病(病名は決めていません)で、
少女は目の病気で、視力がありません(見えていません)。
二人は同じ病院にいて、そこで知り合い、近くにお出かけして二人で絵をかいていたのです(イメージ的には外国の森の奥深くにある病院です)
彼女のことを詳しく言うと、視力を失う前、もともとは「絵の天才」といわれていました。
その頃は、一人でも絵をかけていたのですが、視力を失ってからは一人では書けず、少年に手伝ってもらっていたのです。
そのため、小説中の表現も「どういう風景を描けばいいか」と、
どう描くのか、ではなく、どのような景色を描けばいいかを教える感じにしています。
そして、最後のシーン。
彼の方は亡くなりました。
もともとの病気で余命だったのです。
そんな彼の角膜を少女は移植してもらって、再び視力を取り戻しました。
だから、彼女が物語の最後に「彼の見ていた風景」を見ているのです。
彼の目(今は彼女の目)が見ていた景色を描いているのです。
彼ら、という主語にしているのも、彼の目と彼女が一緒にいるから(彼の一部を彼女が引き継いだから)です。
……少女は、彼の目で見た風景を描くことに、楽しみを覚えていません。
彼女は彼に、どのような感情を抱いていたか、私にもわかりませんが、彼女の心は絵の隅っこにある、サインのように、縮こまっていることでしょう。
少女の楽しみは「彼の指示で絵を描くこと」であり、「絵を描くこと」ではないのですから……。
……おわかりいただけましたか?
私の語彙力が薄っぺらいせいで、だいぶ理解がしにくい話(解説も含め)になってしまいました。
反省です……。
もしも、この話の内容が理解してもらえたのなら、それ以上に嬉しいことはありません。
コメント、感想はいつでもお待ちしております。
誤字脱字はご勘弁を……。
では、また次の作品でお会いしましょう! 🐢