選手はプレーするためにピッチに来ている | 坪井健太郎のブログ from スペインバルセロナ

坪井健太郎のブログ from スペインバルセロナ

2008年からバルセロナでサッカー指導者。プレサッカーチーム代表: サッカー指導者の育成アカデミーを運営。
オンラインコミュニティ「サッカーの新しい研究所」運営

前回は日本滞在記その1をお届けしましたが、今回はその続編を。

 

12月に入り8日から12日までは福岡に滞在していました。目的は、レアッシ福岡の視察と新しくプレサッカーチームジャパン福岡のイベントのためです。レアッシ福岡とは2015年から提携をしていて共同プロジェクトを進めていますが、とにかく山あり谷ありでいろいろとありますがクラブ自体は日々進化している様子が見れていてとても安心しました。

 

滞在中にはU15のリーグの入れ替え戦(負けたら降格)と、U11のリーグの開幕戦を見させてもらいましたが両方とも勝利と選手たちの良いパフォーマンスを見ることができました。U11は開幕戦勝利、U15は残留が決定と良い結果を残してくれました。

 

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(残留を決めたU15)
 
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(開幕戦白星を飾ったU11)
 

 

クラブのさらなるアップにはまだまだ時間がかかりますし、新たなリソースが必要とされていてその確保までには何個もハードルがあります。しかし、その過程を楽しめるのがレアッシ福岡との共同プロジェクトの醍醐味だと私は考えているので、長い時間楽しめるプロジェクトだと割り切っています。

 

良質なコーチの確保、自前のピッチの獲得、会員数の増員、優秀な選手の獲得と育成とまだまだやることが多いプロジェクトですが、福岡に行くたびに少しずつ前進している様子が見れるのは関わるみんなが一生懸命になって、ビジョンに共感してくれる人がいるお陰だとひしひしと感じています。

 

私たちはビッククラブでもなく、大金を持ってこれるだけの知名度がある人がオーナーであるわけでもない小さな町クラブですから、下からのイノベーションをフットボールの世界に仕掛けてサッカー界を変えて行く志を持って取り組んでいます。まさにスタートアップのベンチャー企業のような思いです。他がやらないことを積極的に行い、共感してくれる人を巻き込んで行く。これを繰り返すのみなのですが、最近はレアッシ福岡というクラブに興味を持ってくれる人が増えてきているようで一緒に働きたいという方も少しずつ現れてくれています。少しずつですが形になってきてくれて嬉しいですね。

 

 

 

 

■未だにサッカーをプレイする適正な環境は浸透していない 

 

さて、そんな福岡滞在の中で少し日本サッカーの現実を目の当たりにさせられました。

それはU11の試合に行った時の試合前の風景です。

 

 

おそらくこの映像は日本の少年サッカーに関わる方々からすると「日常の当たり前」の風景だと思われます。しかし、私にとっては残念な光景に見えてしまったのです。

 

プレーする選手がゴールを自ら運び、試合を指揮する指導者がボコボコの土のグラウンドに朝早くから石灰でラインを引く

 

これはスペインではありえない光景です。選手はプレーするためにピッチに立ち、指導者はチームを率いて戦うために会場に来るのに。。。少なくともプレーへの集中力は削がれます。

 

バルセロナのサッカーコートは全てが人工芝でラインはもともと引かれていますから大人がピッチを作る必要はありません。選手はゴールを運ぶために早く来る必要はなく、プレーするために試合時間に合わせて到着すれば良いのです。

 

 

「スペインはサッカー大国だからそうなのだ」と思う人もいるでしょうが、実は逆です。このような環境を作る努力をしているからサッカー大国なのです。この光景を見たときに私は「いち早く人工芝のサッカーコートを作らなければならない!」と心底思いました。それが選手が適正な環境でサッカーを楽しみ、指導者がサッカーを教えることに集中できるための方法なのですから。

 

ちなみに私が10年前に日本で指導していたときも少年サッカーで見ていた光景はこれと同じものでした。少なくとも10年経っても状況が改善されていないというものいかがなものかなという思いもあります。関東や関西のような首都圏では少しずつ人工芝のピッチが増えてきていますが、福岡には人工芝のピッチはまだまだ少なくもっともっと増えなければなりません。「グラウンドなんて作れるわけない」で終わらせることなく、サッカーに関わる人たちのために動きたい人間が集まって何とか人工芝のグラウンドを一つでも作りたいものです。

 

東京ではアーセナル市川さんが自前のグラウンドを所有して成功しています。関東でできることが地方で出来ないとは完全に言い切れないはずです。日本のサッカー環境が世界基準に追いつくにはピッチの問題は早急に解決しなければならないものだと感じたのでした。