装飾的な作品で、国内外で 高い人気を誇る グスタフ・
クリムト(1862-1918)。昨年、没後100年を迎えた
ことを記念して 東京上野の東京都美術館で『クリムト
展』が開催されています。2019年は、日本とオースト
リア友好 150周年でもあります。
今、東京ではクリムトや、ウィーン世紀末に焦点を当
てた大きな展覧会が相次いで開催されています。中で
も この『クリムト展』は別格 約200点 といわれる
クリムトの油彩絵画のうち、過去最大点数の25作品
を集めました。
グスタフ・クリムト《ユディトⅠ》1901年ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館
この展覧会のメインビジュアルとなっているのが、旧
約聖書外典に登場する女性を描いた《ユディトⅠ》。
クリムトが初めて金箔を貼りこんだ、いわゆる「黄金
様式」の代表作です。
グスタフ・クリムト《ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)》1899年 オーストリア演劇博物館
その 《ユディトⅠ》 の2年前、クリムトがウィーン分離
派を立ち上げた際に、その決意を表すために描いた、とさ
れるのが《ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)》。こちら、
金色の絵の具を使ってはいますが…まだ、金箔使いはみら
れません。
グスタフ・クリムト《ベートーヴェン・フリーズ》(原寸大複製) 1984年
その ウィーン分離派の拠点、分離派会館ホールにある
巨大壁画 《ベートーヴェン・フリーズ》(原寸大複製)
は、圧巻です ベートーヴェン交響曲第9番『合唱付
き』 から着想した作品で、絵画・彫刻・建築・美術工
芸・詩・音楽を総合的に融合しています。
グスタフ・クリムト《ベートーヴェン・フリーズ》(右面)〈歓喜の歌〉
特に第4楽章「歓喜の歌」を描いたパートはその頂
点。歓喜の歌を歌う天使、抱擁する恋人たちは、幸
福の成就を表してます。空間全体には、第九の音楽
が流れていて、まるでウィーンに居るような感覚に
陥ります。
グスタフ・クリムト《赤子(ゆりかご)》1917年 ワシントンナショナルギャラリー
クリムトが55歳で亡くなる直前に描いた《赤子(ゆり
かご)》は、一人の新しい生命を大切に守るように 布
が 何枚も積み重ねられています。最後まで 生命を描
いたクリムトらしい作品です。
グスタフ・クリムト《女の三世代》1905年 ローマ国立近代美術館
《女の三世代》は初来日。赤ん坊、若い女性、老女
と、人生の三段階を描きました。背景は酸化して黒
ずんでいますが、金箔ではなく、銀箔でしょう。“死
とエロスの画家”といわれるクリムトの代表作です。