日本映画界現役最高齢の新藤兼人監督が、 “映画人生最後の
作品”との思いを込めて撮り上げた感動の反戦映画。 32歳で招
集され、同じ部隊の兵士100人のうち、終戦を迎えたのはたった
6人のみという監督自身の過酷な戦争体験を基に、戦争の不条
理に翻弄される市井の人々の無念と再生への道のりを、ユーモ
アを交えつつ 力強い筆致で描き出していく。 主演は豊川悦司と
大竹しのぶ、共演に六平直政、大杉漣。
戦争末期に招集された100人の中年兵たち。誰がどの戦地に向
かうかは、上官がクジを引いて決めていた。しかし戦地への赴任
は、そのまま死を意味していた。 そんなクジ引きが行われた夜、
松山啓太は、仲間の兵士・森川定造から妻・友子が送って寄こし
た “一枚のハガキ” を手渡される。 フィリピンへの赴任が決まり、
死を覚悟する定造。 検閲が厳しく返事を出せないことから、宝塚
への赴任が決まった啓太に、もし生き残ったら友子にハガキを読
んだと伝えてくれと依頼する。戦争が終わり、生き残った啓太は
定造から託されたハガキを手に、友子のもとを訪ねるが…。
日本映画の巨匠にして、最高齢監督の新藤兼人さんが5月29日
に100歳で亡くなりました。その新藤監督が 99歳だった昨年8月
に公開され、 遺作となった「一枚のハガキ」を観ました。 正直、こ
れまで「午後の遺言状」「生きたい」など、作品は知っていました
が、新藤監督作を観るのは初めてです。冒頭にも書いた 彼本人
の強烈な戦争体験が故に、 終始一貫として、 反戦映画を撮り続
けた監督だったのですね。
特に、主人公の森川友子の人生は過酷です。 戦争で夫に先立
たれ、その嫁ぎ先の老夫婦を守るため夫の弟と再婚。また、その
弟も戦死して、義父は突然死、義母は自殺する…。 ここまででは
ないにしろ戦争によって悲劇をむかえた家族はたくさんいたので
しょう。それに対し、もう一人の主人公・松山啓太の人生はコミカ
ルに描かれています。 戦争中に、実父に妻を寝取られるのです
から…。
周囲の人物描写もコミカルタッチがお得意な新藤監督。 大杉漣、
津川雅彦、川上麻衣子…などが脇を固めています。 ただ、 この
“新藤節” の醍醐味を理解する前にお亡くなりになったのは、 誠
に残念としか言えません。 心より ご冥福をお祈り申し上げます。
「一枚のハガキ」(2010年)
監督 新藤兼人
製作 新藤次郎、渡辺利三、宮永大輔
原作 新藤兼人
脚本 新藤兼人
脚本 新藤兼人
撮影 林 雅彦
出演 豊川悦司 (松山啓太)
大竹しのぶ (森川友子)
六平直政 (森川定造)
柄本 明 (森川勇吉)
大竹しのぶ (森川友子)
六平直政 (森川定造)
柄本 明 (森川勇吉)
倍賞美津子 (森川チヨ)
津川雅彦 (松山利ヱ門)
大地泰仁 (森川三平)
川上麻衣子 (松山美江)津川雅彦 (松山利ヱ門)
大杉 漣 (泉屋吉五郎)