2012年9月異伝ヤマタノオロチ・再演
脚本・演出:亀尾佳宏さん
-今回は再演。先生が初演との違いを感じたことはありますか?
まず初演はあのメンバーで同じ時間を過ごし、一つの形になったものだと感じました。再演の稽古が始まった時、すぐに「まったく同じ芝居をもう一度作るのは無理なんじゃないか?」と思い、再演ではありますが違うものを作ろうと思いましたね。
真っ先に違いを感じたのはスサの国の民ですね。役としての民というよりは、演じ手として。
出会ったばかり、しかも今回が初めてという人もいる中で一回本番を踏んだことで、今回は自分達から主体的に、能動的に稽古をして舞台に挑むようになりました。そういったものがそのまま民としての生活感とか、舞台の上の生き方に現れていると思います。
それからオロ。前回より、オトに対する想いとか、そういったものを強く出していけると感じています。
-役そのものだけでなく、役者の皆さん自身に変化がある。
前回から半年たって、確実に皆の関係性が密になってきています。そこが凄く面白くて。
以前だったら、誰かが引っ張ってくれるのを待っていたり、指示を貰うのを待っていたりするようなところがありましたが、今は自分達で考えて、場面ごとのチームで意見を出し合いながら自主稽古もしています。
僕は今回あんまり指示を出さず、皆でシーンを作ってもらっています。お芝居を作る楽しさというのも1回目より2回目の方が出てきているのではないかと思います。
-今回が2回目、公演後は奈良公演もあります。
奈良でやるというのは去年から大きな目標です。
奈良というはるか昔都のあった所に、かつて権力を争ったであろう出雲地方の民として参加するというのは非常に感慨深いものがあります。
また、前回ご出演くださった松村さん(※松村武さん。劇団カムカムミニキーナ主宰で、2012初演ではアシナ役を熱演)に、松村さんがいらっしゃった時とはまた違うお芝居がお見せ出来ればと思います。
ただ、今は奈良の前にこの木次の公演をなんとか成功させたいという気持ちのほうが強いです(笑)
-最後に、今回の木次公演を楽しみにしてくださってる方々に何か一言!
おそらくこの芝居をするのは9月2日が最後になると思いますので、是非1人でも多くの人に観に来ていただけたらと思います。それに尽きますね。
前回と変わっている部分もありますし、絶対面白くなっていると思いますので、前回観たよという人も比べてみてもらうのも面白いと思います。もちろん今回初めてだという人にも楽しんでもらえると思っています。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
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<パンフレット寄稿・「縁日」>
小さい頃、祭りの日が待ち遠しかった。
立ち並ぶ露店からはうまそうな匂いを運ぶ煙。
子どもの心を踊らすあてくじやきらびやかな玩具。
川辺から打ち上げられる花火。女たちは色とりどりの浴衣を身にまとい慣れぬ下駄の音を響かせ美しさを惜しげもなくふりまく。町の男は揃いの半被。子どもたちは提灯を手に、大人たちは神輿を担ぎ、熱気と興奮と音を放射する人の固まりが、大きなうねりとなって夜遅くまで町を練り歩く。音が、色が、匂いが、熱が。すべてがいつもと違う、年に一度の非日常。
神との縁にかこつけて、日常では繋がり得ない人と人との縁を結ぶ日。それが「縁日」なのだろう。
お芝居は祭りとよく似ている。
ないからといって日々の生活に支障がでるわけではない。いや、むしろそれをやることによって支障がでることがある。安心より不安が、順風より逆風が、平坦よりは凹凸がはるかに多く、稽古ではうまくいくことよりうまくいかないことのほうが多い。それでもこうやって私たちが仕事おわりの安息の時間や家族との憩いのひと時を持ちよって芝居創りに没頭するのは、ひとえに「やらないほうが楽だけど、やらなきゃ得られぬもの」のためだ。日常では決して手に入れることのできなかった音や色や匂いや熱、そして人との縁。それらを感じるために私たちは演劇という祭りを創る。
このお芝居は、観たからといって、あるいは観なかったからといって、とりたてて皆様の日常に影響を及ぼすものではありません。
そんな何の役にも立たない非日常の時間を、わずかばかりでも楽しんでいただけましたならば、それにまさる幸いはありません。
本日は神話の縁にかこつけて、私たちが皆様の前で演ずる日、「演日」。
そして日常では出会うことのなかった皆様と新たな縁を結ぶ日、「縁日」。
ご来場まことにありがとうございました。
間もなくお祭りのはじまりです。
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当時は「この芝居をするのは最後」とおっしゃっていたんですね。
このころの亀尾さんに、現状を教えてあげたいです。
次回は奈良公演の様子と、当時のキャストスタッフしか知らなかった、ちょっとした裏話をお届けします。
私も資料を引っ張り出してきて、「こんなのあったっけ・・・?」と首をかしげることも。
お楽しみに!