山形市中野目で今月7日、下校中の男子児童=当時(9)=がトラックにはねられ死亡した。この事故を受け、以前から現場付近に横断歩道と信号機を設置するよう求めていた地元の住民は「なぜ設置できないのか」との声を強め、県警は「前向きに検討する」との方針を示した。県内では住民が横断歩道、信号機の設置を求めている場所が他にもあるが、優先度と予算の都合で、簡単には実現しないのが現状だ。
天童市と寒河江市をつなぐ主要地方道天童寒河江線で7日午後3時15分ごろ、男児が歩道から飛び出し、トラックにはねられた。男児が通っていた明治小の児童は通常、約500メートル手前のガード下を通って帰宅しているが、友人と一緒に帰るため、ガード下を通らないケースが少なくなかったという。「横断歩道があれば、児童は危ない所を渡らなくてもよかった」というのが住民の主張だ。
現場周辺は東西1.8キロにわたり横断歩道がなく、近くの住宅街は県道で南北に分断されている。県道の交通量は多く、道幅は片側3.25メートルと広い。車はスピードを出して走行するが、遠くの横断歩道を使わずに県道を渡る住民が多い。
住民が横断歩道と信号機設置を求めるようになったのは2001年ごろから。今年は横断歩道に絞り、事故現場から西に約100メートルの集会所付近に設置するよう要望していた。しかし、県警交通規制課は「道路構造上の問題がある。設置するとかえって事故を誘発しかねない」と強調する。
集会所付近は緩やかな連続カーブになっており、横断者からすると左右の安全確認が難しい。天童方面からだと下り坂で、運転手が横断歩道上の人に気付いても止まるのは難しく、冬季はスリップ事故を招く要因になる。小川広治山形署交通官は「設置するのなら、押しボタン式信号と横断歩道のセットでなければ危ない」と説明する。
信号に関しては、新設の道路、より危険性が高い地点への設置が優先されているという事情もある。交通規制課によると、県内14署が上申する信号機の設置要望は近年、年間40~60件程度。優先順位の高い場所を選び県公安委員会が決定する。ただ、事故件数が減っている現状、予算などの関係で、実現するのは多い年でも20カ所にとどまる。
事故を受けて開かれた22日の対策会議で、地元からは「また事故が起きてからでは遅い」「いつ信号機と横断歩道がつくのか」との声が噴出した。大坂政弘県警交通規制課長は「来年度中の設置に向け、前向きに検討したい」と応じたが、別の県警幹部は取材に対し「県内には、より危険度が高い場所が数多くある。全ての要望に応えるのは難しいのが現状だ」と内情を説明した。