もう5年以上前になりますが、

日本でも有数の大型書店のショッピングサイトをプロジェクトリーダーとして構築したことがあります。

名もないベンチャー企業に仕事を任せてくれた当時の情報システム部長さんの英断に感謝しながら、

ああでもない、こうでもないとサイトの機能について議論を重ねたことを今でも覚えています。

当時は既にamazon一強の時代で、どうやったらamazonと差別化できるかについて頭を悩ませたことを昨日のことのように思い出します。

そこで大きなテーマとなったのが「クリックアンドモルタル」という言葉でした。

ブリックアンドモルタル=実在する店舗とクリック=インターネットをかけて、

リアル店舗とネット店舗の相乗作用を狙うことを指す言葉です。

「クリックアンドモルタル」は今となってはあまり使われなくなりましたが、

インターネットショッピング黎明期から拡大期(ADSLの普及が始まった頃)までは、

よく使われていた言葉でした。

そこで議論の結果、

① フルFLASHで直感的に商品を閲覧できるようにする。

② 店舗の在庫(棚に陳列してある本まで含めて)をリアルタイムに購入できる

という2つの機能を目玉にショッピングサイトをオープンしました。

①は直感的に商品をクリックすることで、さも、本屋で本を取るかのように商品を選ぶことができることを目指し、

②は実際に本屋に行かなくても、全ての棚に並んでいる本までを選ぶことができる、

まさにリアルの店舗との相乗効果を狙うものでした。

結果としては、差別ポイントとして十分にユーザーに評価されることはなかったのでしょう。

大きな流れを作り出すことはできませんでした。

この時の議論は今も私の中で未解決のまま、大きなテーマとして残り続けています。

すなわち、

ネットショップでどこまで楽しく買い物できるか?というテーマです。

実は、私は今も昔もあらゆるショッピングサイトの機能に満足したことがありません。

その中で、最も不便を少なく、時に利便性をもって機能を提供してくれているサイトが、

amazonであるというのが現在の私の見解です。

確かに、ネットショップはいつでも商品を購入できますし、

検索に関してはリアルショップよりも便利であるため、

買い物の必要十分条件は満たしているとは思います。

ただ、それはあくまで目的がはっきりしているという点においてのみです。

結局、私がネットショップに求める一番の機能は、

漠然とした本を読みたいな、という時に本屋を見て回る時の感覚です。

購入までのプロセスの体験化とでもいうのでしょうか。

いわゆるユーザーエクスペリエンスを求めてやまないのです。

電子書籍出版社をやろうと決意してから、

出版する本を手に取る感覚まで含めて読者の方に楽しんでもらいたいという欲求が強くなります。

読書という行為をより広範に楽しんでもらうにはどうすればいいのか、

大きなテーマです。しかし、出版社こそが、向き合わなければならないテーマであるとも思います。
前にも触れましたが、私がこの世で一番好きな空間は本屋さんです。

棚の配列、平棚、POP、色々なものが好奇心を刺激してくれます。

世界を広げるために最も手軽で素晴らしい場所の一つであると確信しています。

自分の興味から離れた本にたまたま目が触れ、興味を持つなんてことは、

本屋でこその醍醐味ですし、

本を手に取り、背表紙を読み、何度も手に取っては置き、

また同じ棚に返ってきて、再び帯を読んで、迷う。

ほぼ毎日、こうした行為を繰り返す。

こういう経験が全て現在の私につながっていると感じています。

そして私の一番のストレス発散の方法は本屋で好きなだけ本を買うことです。

(なので、実は私はamazonよりも実際の書店での購入額の方が圧倒的に多いです)

というわけで、私にとって電子書籍化における最大の悩みどころは、本屋さんの存在です。

私もずっとインターネットショッピングのサイトの制作をし続けていましたので、

結局インターネットは検索には便利だが、

感覚に訴えることが非常に苦手だ、ということがわかっています。

それこそ実店舗では5感を駆使して買い物をするのですが、

インターネットではほぼ視覚のみなのですから当たり前と言えば当たり前です。

電子書籍もいいけど、やっぱりモノとしての紙の本も残って欲しいと思うのは、

「場」としての本屋さんが素晴らしい体験を提供してくれるからなのでしょう。

電子書籍の出版を手がけようと考えてから、

ほんと色々なことを考えます。

電子書籍の販売を本屋さんでできないか?

そういう本屋さんがあったら、楽しい「場」となりうるか?

本屋さんのポップをインターネット上で見れるようにならないか?

などなど。

そう言えば、電子書籍フリマって試みも行われたようですね。

電書部 さんの発想はとてもシンパシーを感じます。

こうした動きがたくさん起こって、電子書籍自体も盛り上がっていくと最高ですね。
最近、電子書籍は紙の書籍に比べて、価格が安い分儲からないんじゃないか??

という言葉をよく目にします。

1000円の本を500円に下げて販売した上で、

プラットフォーマー(apple、amazonなど)に30%~40%取られてしまう。

総じて粗利が下がってしまう、という仮説だと思います。

しかし、そうした意見は今までの出版のコストを全て内包した中で、

出されていることが見落とされがちです。

高い給料の社員が何百人もいる。

高い家賃を払わなければならない。

管理コストもかかってくる、などなど。

様々なコストが1冊の本の値段に薄められ乗っけられていく。

これは当たり前の話です。

事業には必ず売上原価と販売管理費がかかり、

そうしたコストを吸収するために売上を上げていかなければならないわけです。

つまり、大きな企業であればあるほど、

なるべく高い本を大量に売らなければならなくなえい、

損益分岐点のハードルが高くなるわけです。

そうした観点から冒頭の話に戻りますと、

「電子書籍は儲からない」

これは当然のこととなります。はい、電子書籍は儲かりません。

既存のコストオペーレーションでは。

そう、ローコストオペレーションさえ確立できればいいのです。

もっと言えば、作家さんが個人で電子書籍のダウンロード販売をするのが究極の形なわけで、

これが作家さんにとって一番「儲かる」のは間違いありません。

既に名前もあり、ある程度重版のかかっている作家さんは、

著作を電子書籍化して、自分のサイトからダウンロード販売をするようにするのが、

収益的には一番いいのではないでしょうか。(決済手数料とサーバー費用を考えても10%程度の経費でできます)

結局、同人誌でボロ儲けをしている方々は、個人販売モデルを実践してるからというのが大きいです。

実は、私の本職はWEB制作で、いわゆるショッピングサイトを作ったりしているわけですが、

このダウンロード販売の仕組みというのは比較的簡単です。

(そういえば、パブー というサイトがありますね)

なので、こうした仕組みを作家さんに提供することも可能ではあります。

が、そうした仕組みがあっても、最終的に収益を伸ばすには集客、プロモーションが必須です。

ここにこそ、新しい出版社の存在価値が出てくるのだと思います。

なぜなら、作家さんが自らSEOやリスティング広告やメルマガを打つべきではないからです。

そうした時間は作品を書く時間にあててほしいと思うわけです。

ちなみに、中にはプロモーションまでこなす化け物みたいな人は存在するわけで、

ホリエモンはまさに、その天才であります。

ホリエモンはある意味、電子書籍であるメルマガ配信で月額800円をコンスタントに稼ぐわけですから。

それも一人でやっているので、彼にとって電子書籍は「儲かる」事業でしょう。

最終的にはローコストオペレーションの確立が全て、となるというお話でした。